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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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ゴーレム群(下)

 客間の隣の部屋は資料室だったらしく、本棚と本がかなりの数並べられていた。


 綺麗に並べられたであろうそれらは無残にも崩され、ただの瓦礫へと変わり果てている。


 そんな場所へとウィンリィとゴーレムの戦場は変わっていた。


 ゴーレムの一撃がウィンリィへと迫る。

 それを半身で回避しながら剣を右手から左手に持ち替えながら振り上げた。


 硬い岩にぶつかるような音が辺りに響き、そのゴーレムの表面が僅かに削れる。

 それと同時に、外装に弾かれたウィンリィは重心が後ろに大きく乗ったのを利用し、軽く跳んで後退。


 そうしながら剣を右手に持ち直すと再び接近。

 ゴーレムはそれに対し、腕を振り下ろすことで対抗する。


 振り下ろされた剣をスレスレのところで回避。

 背中に鋭い刃物が通り過ぎるが、ウィンリィは気にすることなく後ろに回り込み、剣を突き出した。


 だが、僅かにその場所がえぐれただけでやはり大きなダメージは与えられていない。


 ゴーレムは上半身のみを一回転させて正面にウィンリィを捉えた。

 振るわれたのは剣でなく左腕だが、魔術で作られた岩の塊だ。

 その腕の一撃でも余裕で人を殺せるだろう。


 それを前転するように前へと跳び込むことで回避、受け身を取りながら立ち上がり剣を即座に構えた。


 立ち上がった瞬間、後ろに誰かの背中が付けられる感触。

 それを感じるとほぼ同時に言葉が向けられた。


「調子はどうだ? ウィン殿」


「硬すぎてちょっと切るのに飽き始めた。

 あと刃が欠けてきた」


「なるほど。では、そろそろ決めるべきか」


「ああ、そうだな。

 それと、やっぱり魔術なしで倒すの無理っぽいからトドメを任せたいんだがな」


「了解した」


 ウィンリィとデフェットは言葉を交わすとそれぞれの標的へと走り出した。


 デフェットの体はクラフェットⅡで強化済み。

 その強化された体、脚力を持って急接近。


 ゴーレムはハエでも払うかのように剣を振るがデフェットはそれを跳んでかわした。

 彼女が着地したのはそれの真後ろだ。


 着地した彼女が振り返った先にあったゴーレムの背には大きく窪んだ場所がある。

 そこは今までの戦闘でデフェットがずっと攻撃していた場所だ。


 身体強化をしていても一撃で、確実に沈めるには足りない。

 しかし、少しずつ崩し、抉っていけば確実に潰せる一撃を入れることができる。


 それは正確な一撃を常に放ち続けられるデフェットだからこそのできる剣技だ。


「これで、終わりだ!」


 その声とともに鋭く突き放たれたレイピア。


 それは薄くなったゴーレムの背中を貫き、その切っ先がゴーレムの胸から出てきた。


 その貫いたそれを横へと蹴り飛ばすとすぐに長槍、ゲイボルグの構えを取る。


「其は、冥界に咲く薔薇(トゲ)なり」


 その言葉、詠唱の始まりとともに辺りのマナが急激にデフェットの元へと集まっていく。


「其は、冥界の(バラ)なり」


 集まったマナは次第に長槍の形を作っていく。


 そんな中でもウィンリィとゴーレムの攻防は続く。


 彼女は魔術を使っていないと言うのにゴーレムに対して全く怖じける様子もなく、いつも通りの動きで向かってくる攻撃に対応している。


「其は、万物を穿ち、その命を狩る荊棘(ハナ)である」


 最後の詠唱を唱え終えると黒い薔薇の花びらが辺りに舞った。

 デフェットの手には長槍がしっかりと握られている。


「ゲイ・ボルグ!」


 狙いはゴーレム、そのコアのみ。


 ゲイ・ボルグを下から突き上げるようにしながら手を離した。

 明らかにそこまでの勢いはないはずの長槍は真っ直ぐにゴーレムへと向かい飛ぶ。


 それとほぼ同時にウィンリィがゴーレムの一撃を弾き、体を大きく反らせていた。

 その反動で彼女の剣が床に落ち、無防備になるウィンリィ。


 しかし、投げられたゲイ・ボルグはウィンリィの顔の横を不自然な軌道で通り過ぎ、ゴーレムの胸部に突き刺さった。


 当然、その場所はコアのある場所。


 そこを貫かれたゴーレムはゆっくりと後ろへと倒れ始めた。


 そのタイミングで突然、大きな揺れが工房に広がる。

 彼女たちは知る由もないがそれはライトがバンカー・バスターで床に穴を開けた時の衝撃により起こったもの。


 上から土が落ち、ウィンリィとデフェットはしゃがみ、揺れに耐える。


 そこまでは良かった。


 問題は完全に力を失っていたゴーレムだ。


 まだマナが全身に残っているためか形を崩すことなく、ゆっくりとウィンリィの方へと倒れるようとしていた。


 もう回避は間に合わない。

 防御もこの体勢では不可能に違い。


 自分の死が一瞬、頭によぎったが突如として横から強い衝撃。


 それが来る前に「すまない」という声が聞こえたような気がしたが、蹴飛ばされた衝撃ではっきりと聞き取れなかった。


 ウィンリィはその衝撃に身をまかせる他なく、壁に叩きつけられる。


「いっつうう!」


 痛みに悶えている中、ゴーレムの崩れる音と自分の方へと駆け寄る音が耳に届いた。


「だ、大丈夫か?」


 どうやら蹴り飛ばしたのはデフェットらしい。


 咄嗟のことで力加減をうまく調整できずにこのようなことになったようだ。

 そのためか、どこか申し訳なさそうな顔でウィンリィを見つめている。


「な、なんとか……な。死ぬよりはマシだ。

 ありがとう」


「よ、良かった……。

 ウィン殿に何かあれば主人殿が悲しむ」


「そう、だな……」


 ウィンリィは壁に手をつきながらゆっくりと立ち上がった。


 自分でもかなり強く叩きつけられたと思ったが腕や足の骨は無事らしく普通に動かせる。


 歩けもするが少し休まなければ戦闘は難しいだろう。


「騎士たちには悪いけど、少し休もう」


「ああ、そうだな。

 彼も騎士たちに渡しておく必要もある」


 デフェットは言いながら自分が気絶させたアヴィケーの助手を肩に担いだ。


(悪い。ライト、あとは頼む)


 ウィンリィは少しの間だけ目を閉じてそう祈るとデフェット共に工房から離脱した。

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