表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/282

捕縛作戦

「さて、始めましょうか」


 ホーリアのその言葉にライトたちは頷く。


 翌日の昼、彼らはアヴィケーの工房前に来ていた。

 目的はもちろんアヴィケーの捕縛。


 騎士団にも応援を頼んでおり、避難誘導を秘密裏に行なっている。

 近くの建物、少なくとも一、二軒隣の建物にいる者たちが避難を終えてから突入開始となる手はずだ。


「ライトさん。彼のことを、よろしくお願いします。

 数発殴るのは構いませんが、どうか命だけは……」


 そう言い頭を下げるホーリアに頷くことで答える。

 ちょうどそのタイミングで騎士が駆け寄って来た。


「避難完了しました」


「ありがとうございます。では、作戦開始」


 その言葉を合図にライト、ウィンリィ、デフェットが立ち上がる。

 ライトのその手には要求された素材が入っている袋があった。


 作戦としてはこうだ。


 まず、ライトたちが要求通りの品々を持っていく。

 当然アヴィケーたちは彼らを招き入れるだろう。


 次に、侵入した彼らが内部の状況を把握、安全を確保でき次第、合図を出す。


 最後に、その合図に従い騎士団が侵入し、アヴィケーとその助手二名を捕縛する。


 合図をアヴィケーの結界内で魔術を出す都合、どうしても彼らにはバレてしまうため、合図から先は時間が命だ。


 ライトは生唾を飲み込み、アヴィケーの工房の扉にあるベルを鳴らす。

 少しの間を置き声が聞こえてきた。


「どなたですか?」


「ライトです。依頼された品々を持ってきました」


 そう言うと扉が開かれた。


 中に招き入れたのは助手の一人だ。

 うろ覚えだが、三日前にアヴィケーと初めて会った時にその隣にいたような気がする。


「客間に案内します。どうぞ」


「ありがとう」


 ライトはデフェットにマントと素材が入った袋を渡し、中に入る。

 その後にウィンリィ、デフェットの順に続いた。


◇◇◇


 通されたのは三日前にも通された客間だった。


 そこに案内されて数分待っていると、アヴィケーとティーセットをトレイに乗せた助手が入ってきた。


 助手が紅茶を淹れている中でアヴィケーは切り出す。


「それで、用意できたのか?」


「はい。デフェット」


 呼ばれてデフェットはライトのマントを小脇に挟むと袋をライトに差し出す。

 小さく礼を言いながらそれを受け取り、アヴィケーに差し出した。


 それを受け取った彼は袋を開けて中の素材、生物の外骨格を眺める。


「ふむ……たしかに、質はいいな」


 それを机に置くと袋の奥へと手を突っ込み、別の外骨格を取り出し眺める。


 満足したのかそれをまた机の上に置き、また別の物を取り出した。


 その一連の作業を五回ほど繰り返し、助手へと言葉をかける。


「これを地下へ。それと、金を持ってきてくれ」


「はい」


 その助手は一礼、そしてその部屋から出た。


 ホーリアから聞くところによれば、助手たちはゴーレムを動かせない。

 魔術はそこそこ使えるらしいが、アヴィケーが捕らえられれば、使用をためらうだろう。


 アヴィケーも今は目の前で紅茶を飲んでいる。

 警戒はしているようだが、隙は多い。


(動き出すなら……今)


 そう思い、合図となるフロースフレイムを出そうとしたところで、アヴィケーが唐突に質問を投げかけてきた。


「君たちは誰に頼まれてこんなことをしている?」


「どういう意味でしょうか?」


 突然のことに少し驚いたが、不審がられないようにすぐさま言葉を返したライトへとアヴィケーは続ける。


「こんなことを誰にも頼まれずに行うとは考えにくい……誰の頼みだ?」


 意図がはっきりとしないその問いにライトは訝しむ。


 一瞬、包囲されていることに気がついたかと思ったが、それにしては悠長に構え過ぎている。

 しかし、何かを怪しんでいるのはたしかだ。


「……ある魔導師の方です」


「ある魔導師……か」


 アヴィケーは紅茶を一口飲むとそれを受け皿に置くとライトを射抜くように鋭い視線を向ける。


「その魔導師を当ててみせよう」


「な、何……を」


「ホーリア、だろう?」


 その名がアヴィケーの口から出て三人は驚愕の表情を浮かべてしまった。


 頭によぎるのは作戦がすでに彼にバレてしまっていること、そして、彼の取る行動。


 それぞれが武器を構えようとしたが彼から出た言葉は少し意外なもので、同時に首をかしげるものだった。


「君たちは彼に利用されている」


 その言葉にライトは少し臨戦態勢を解いた。


 だが、ウィンリィとデフェットは行動に出したりしないだけで、いつでも切りかかれるように重心を少し変えている。


「君たちがなぜ私に接触してきたのか、その意味ははっきりとわからない。

 しかし––––」


 アヴィケーはそこで言葉を切ると立ち上がり、ライトを見下ろした。


 魔導師、研修者であるにもかかわらずその目つきは鋭く、威圧されるに充分のものであった。


 たしかにライトが言葉を出せないのはそれもあるが、もう一つ理由があった。


(ちょっと待て……。

 なんで、わからないんだ。彼は、ゴーレムを1体失っているんだぞ)


 そう、そのはずだ。


 ゴーレムは扱うのは少し難しくとも作り出すのは比較的容易だ。


 しかし、失ったことはどこかのタイミングでわかるはず。

 少なくとも一日あれば気がつく方が自然だろう。


 だから、騎士団に応援を頼み、こうしてすぐに捕縛作戦を行なっているのだ。


 だというのに、アヴィケーの言動、物言い、仕草や態度はその事に気が付いたという感じがしない。


 もし言うとすればそれは––––


「私の邪魔をすると言うのであれば、私は君たちを殺す」


 ––––邪魔者を払い除けるという感じだった。


「ッ!? フロースフレイム!」


 明確な殺気が向けられ、反射的にフロースフレイムを発動、元々の作戦通り高く上げた。


 それは工房の屋根を通り抜け、空へと高く上がり外で待機していた騎士たちに突入の合図を伝える。


 ちょうどそのタイミングでおそらく金が入っているのであろう小袋を持ってきた助手が入ってきた。


「お金を持ってきまし––––」


「デフェ!!」


「ああ!」


 ライトの声にデフェットはすぐに抱えていたマントを捨て、クラフェットⅡを唱えた。


 強化された脚力を持ってしてその助手に接近。

 驚きの声を上げさせることもなく、その腹にレイピアの柄を叩き込んで意識を刈り取った。


 それを見ていたせいでライトはわずかにアヴィケーから視線を外してしまう。


「ライト!!」


 その事をウィンリィに名前を呼ばれる事で気が付いたが、もうすでに手遅れだった。


「すまないが、強行策で行かせてもらう」


 パチンッ、指が鳴らされる。


 すると、客間の床が盛り上がり、真ん中に置かれていたテーブルを破壊しながらゴーレムが現れた。


 一昨日とほぼ同じ形状のゴーレムは右腕と一体化している剣を高く掲げた。


 ライトはすぐさまソファから立ち上がり、後ろに跳ぶ。

 瞬間、そのソファが真っ二つに切り裂かれ、崩れた。


 それと入れ替わるようにウィンリィはアヴィケーへと跳び、鞘に納めたままで剣を振り下ろした。

 だが、その一撃は新たに現れたゴーレムにより防がれてしまう。


「もう一体!?」


「なら!」


 強襲に失敗したウィンリィの代わりに助手を気絶させたデフェットが向かおうとしたが、彼女の前にまた別のゴーレムが現れ、道を塞いだ。


 三人にゴーレムをぶつける事に成功したアヴィケーはそのまま部屋の外へと出て逃走を始める。


 ライトはそれを追おうとするが、目前にはゴーレムがいた。

 これを倒さなければ先へと進むことはできない。


「インフェルノ・ガントレット! リアクティブアーマー!」


 早口で言い切ると右の拳をゴーレムに叩きつける。


 それが当たった場所が爆発。爆風と衝撃によりゴーレムを吹き飛ばした。


 それは客間の壁、さらに工房の壁を破壊しながら外へと出される。


 その先には工房の周りに展開していた騎士たちがいたらしく、驚愕の声が聞こえた。


 彼らにゴーレムの相手を任せる事に少し心苦しく思ったが、今優先すべきはアヴィケーの方。


「すいません! そいつお願いします!

 ウィン、デフェも残りゴーレム頼む!」


「ああ!」


「了解した!」


 ウィンリィ、デフェットの答えを全て聞く前にライトはアヴィケーの後を追い、部屋の外に飛び出していた。


「さて……任されたな」


「ああ、そうだな……」


 彼女たちの目の前にはゴーレムが一体ずつ立っている。


 それぞれ構えを取りながらも言葉を交わす。


「一人一体だ」


「私は大丈夫だが、ウィン殿は……」


 ゴーレムは魔術によって作られ、魔術によって動く物だ。


 そのため、当然ながら生物的な肉体的限界はない。

 構造的な限界、というものはあるだろうが、それでも生物よりは何もかも上だ。


 魔術によって身体強化しているデフェットならばそれに追いつけるが、ウィンリィはそれを使えない。


 普通に考えればあまり勝算があるとは思えないために出た言葉。

 だが、彼女はどこか自信ありげな表情で返した。


「なーに、心配するな。弱点はわかってるんだ。やりようはある」


 そして、まるでデフェットの心配をそのまま返すように言葉を続ける。


「そっちこそ、油断するなよ?」


 それに呆気を取られていたデフェットだが、思い出したようにふっと笑みを浮かべた。


「では、背中を任せたい」


「わかった。

 んじゃ、こっちも背中任せる」


 ウィンリィとデフェットはそれぞれ背中を合わせ、眼前のゴーレムを見据えた。

 自分の後ろにいる敵は気にしなくてもいい。


 なにせ、心強い仲間が、友人が、そこにいるのだから。


「「いくぞ!!」」


 二人は地面を蹴り、ゴーレムへと走る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ