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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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関わる理由

 あれからホーリアの依頼を受けたライトたちは彼の研究所兼自宅を訪れていた。


 ビルツァとホーリアから歓迎の言葉を受けながら、彼らの家のそこそこ広めなリビングに通された。


 案内されたそこは、あまり使われていないらしく生活感があまりない。

 ただ、ポツンと長テーブルと椅子が四脚置いてあるだけの部屋だ。


 そこでライトたちは情報の共有を行っていた。


「––––と、これで私たちが持ってる情報は全てです」


 今までの情報をライトから聞き終えたホーリアは感心したように拍手した。


「これは驚きました。

 まさか、魔術が関わっていたとは……」


「予想程度はしていたのでは?」


「ええ、まぁ、考えてはいました。

 ただこれといった証拠がなかったのです。ですが––––」


 ホーリアそこで言葉を区切るとビルツァと顔を見合わせ頷く。


 そして、デフェットへと笑みを浮かべて少し声音を明るくさせた。


「マナリアであればマナが見えるため、その確信が得られた……

 これほどの情報はそうそう得られませんよ」


「ああ、マナ……

 魔術が関わっているというのならば自然と魔導師、魔術師に犯人が絞られる……」


「なら私たちの仕事はその魔導師、魔術師の調査ってことですか?」


 ライトの問いにホーリアは頷くとビルツァに目配せで何か指示を出す。

 彼は頷くとリビングから出て行った。


 戻ってきたビルツァが持っていたのは丸められた紙だった。

 それをテーブルに広げる。


「これって……」


南副都(サージ)の地図か?」


「ええ。今からこの地図に印を付けます。

 ひとまずは工房“だけ”でいいでしょう」


 言いながらホーリアはチョークのようなものを懐から取り出すと地図に印を付け始めた。


 その言い方に少し引っかかったライトは彼へと質問する。


「だけ、ということは他にも?」


「自宅と工房が一緒になってる場所は多いんですよ。

 ですが、別に取っている方もいますからね……それに––––」


 6つの印を付け終わったのかホーリアはチョークをしまうとその地図を改めて見直し、確認しながら続ける。


「––––今、印を付けたこれらは本人たちが公表している場所です。

 中には工房をいくつか持ち、それを公表しない者もいます」


 工房を作る際には必ず、その村なり都市なりの代表者の許可が必要となる。

 公表すれば監視の対象となり、定期的な工房の調査を受けることにもなる。


 もちろん自由と引き換えに魔導師にもきちんと利点がある。


 それは費用や材料、資料などの援助を受けられるようになるということだ。


 補助金が出されるのは相応のことがないと受けられない場合に限られるが、その魔術に関連性があると認められれば、研究に不可欠の材料や資料などの優遇が受けられる。


 それは決して小さくはないアドバンテージだ。


 しかし、そんな利点を捨ててまで申請せずに工房を作る者がいる。


「なぜ?」


「さぁ? 私にもそれは……。

 ですが、ロクでもない研究をしている。ということでしょう」


 印を確認を終えたホーリアは満足げに頷き、机に広げられた地図にある印を指差しながら言う。


「ひとまずは……ライト殿。

 奴隷とともにここと、ここと、ここの先に調査を始めて下さい。

 ビルツァは地図を2枚買ってきてください」


「わかりました。行こう。デフェ」


「では、私も」


 ライトは地図を持つとデフェット共に、ビルツァもホーリアの指示の通りに家の外に出て行動を始めた。


 残ったのはウィンリィとミード、ホーリアの三人。


「それでは、ビルツァが新しい地図を買ってくるまで我々はゆっくりしていましょうか」


「ああ、そうだな」


「……」


 ウィンリィは頷いたが、ミードは黙ったまま椅子に座り、出されていた紅茶の液面を見つめている。


 そんなミードを心配そうな目で見ていたウィンリィへとホーリアは小声で彼を見ながら声をかけた。


「あの……もしかして彼は」


「ええ、シリアルキラーに仲間を」


「そう、ですか……。

 もっと早く私が行動に移れていれば……!」


 ホーリアは目をキツくさせ拳を握り締めた。


 少し棘を感じるが、それは自分自身へと向けられた言葉だろうことは察することができる。


「失礼ですが、なぜあなたはそこまでシリアルキラーを?」


「お恥ずかしいことですが、最初はただの私念でした」


 最初は、なんとも思っていなかったわけではないが「ただ物騒だな」と思った程度だった。


 そのため、特に気にすることもなく研究に没頭していた。


 だが、問題はすぐに表面化した。


「ギルドに出した依頼が受けていただけなくなってきまして……」


「ん? どういうことですか?

 材料は副都に要請すれば貰えるのでは?」


 ホーリアが持つこの工房は当然ながら南副都に申請している。


 必要な素材が足りないのであれば副都に言えば貰えるため、ギルドに依頼する必要はないはずだ。


「いえ、支給にも上限がありまして……。

 しかも、一般にはあまり出回らないようなものは店でも買えませんので、ギルドに依頼を出すんですよ」


 しかし、シリアルキラーが現れてからはその依頼を受ける者たちはかなり減った。


 当然だろう。

 貴族たちが出す護衛の依頼の方が時間が短く、比較的危険も少なく、報酬も多い。


 それらとは真逆の内容が多い魔導師の依頼は受けてもらえなくなる。


 そうして魔術の研究が一向に進まなくなる事態へと陥った。


「まぁ、時々受けてくださる物好きがいまして、どうにかやりくりをしていました。

 ですが、思い通りに進められないことに……恥ずかしながら苛立ちまして」


「それからシリアルキラーを捕まえようと?」


「ええ、そうですよ。

 ね? あまり褒められた理由ではないでしょう?」


 恥ずかしそうにホーリアは微笑みを浮かべた。


「いえ、それでも解決に動いているのは褒められるべきだと思いますよ」


「ははっ、ありがとうございます。

 今はもっと誇れる理由もできましたし……みなさんには感謝しなければ」


「誇れる理由?」


「はい。

 我々……少なくとも私は魔導師は魔術の発展を目指し、研究し、それらを使い生活をより豊かにすることが仕事だと思っています」


 そんな想いを持つ彼からしてみれば魔術を使って人を殺す。

 しかも自衛のためではなく、自分のためだけに殺すなど到底許せるわけがない。


 それは彼の怒りが浮かんでいる声音と表情から容易に読み取れた。


(力も使い方……か)


 ホーリアの話を聞いているとふと考える。


 魔術はこの世界になくてはならないものだ。

 水も井戸からわざわざ汲んでくる必要はないし、夜から完全な闇は消えた。


 まだまだ別の使い方も発見され、研究され続けるだろう。


 しかし、それは悪用もされる。


 魔術は人間にできないことをできるようにしてしまう力でもある。

 それがあれば少なくともウィンリィ自身には考えつかないような殺し方もできてしまうだろう。


 人が魔術によって殺された。


 だが、だからといって魔術に依存した現状では魔術を規制するのは難しい。


 結局は人がその力をどう使うかを決めているのだ。


 であれば、ホーリアのように世界のために使う者もいれば、シリアルキラーのように自分のためだけに使う者もいるのは当然だろう。


「絶対に……俺が……」


 そんなことを考えていたため、ミードが呟いた言葉を彼女たちは聞いていなかった。

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