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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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最高の出会い

「はぁ……あんたらスゲェな。砂漠越えって」


 ライトたちの話を聞いたミードは目を見開き、驚いたように感想を口にした。


 そりゃそうだ。と三人は心の中で相槌を打つ。


 正直なところ、悪天候に合わなかったからできたようなものだ。

 次同じことをしろと言われてもできないだろう。もとよりするつもりもない。


 ライトは「ええ、まぁ」と苦笑いのような照れ笑いのような、曖昧な笑みを浮かべて一口ジュースを飲む。

 炭酸の刺激と独特の味を楽しむと口を開いた。


「ミードさんも三人で旅をしているんですね」


「ん?ああ、まぁな」


 ライトたちの旅の話を聞いている時にぽろっと聞いた事だったのだが、それにしては答え方の歯切れは少し悪い。


 疑問に思ったが、どうやらそれが表に出ていたらしく、ミードは頭を掻くと苦笑いを浮かべた。


「あー、実はな。ここであいつらとは分かれるんだよ」


「え?なんでですか?」


 まさか喧嘩でもして仲違いでもしたのだろうか?


 サーカスを見に行っているとミードは言ったが、もしかしたら何かしら事情があったのか。


 下手なことを聞いてしまったと罰が悪そうな顔をライトは浮かべたが、それを安心させるようにミードは首を横に振った。


「いいや。あいつら結婚するんだよ」


 その言葉にライトは瞬きを繰り返すしかなかった。それはウィンリィとデフェットもだ。


 耳に届いた言葉があまりにも予想から外れ、彼らはただ呆気にとられるしかなかった。


 そのことに彼は気が付かないのか話を続ける。


 彼が言うには三人は同じ村の出身らしい。


 幼馴染のような関係でずっと過ごしており、何をするにしてもミードともう一人の男性と女性、その三人で動いていた。


 旅を始めるきっかけはもう覚えていない。

 しかし、彼らのリーダーである女性が言い出したことはたしかだとミードは言う。


 旅を続ける中で二人は気がついた。


 村の中では自覚していなかった自分の中の感情。

 その女性に向けるものが親友に向けるものではなく、異性に、惚れたものに向けるものだということに。


 彼らはそれに蓋をした。

 互いに結論を出さずに秘めることにしたのだ。


 しかし、人の想いとはそう簡単に封じれるものではない。


 次第に募る想いは彼らを突き動かしていき、女性に自分たちの気持ちと想いを告白した。


 彼女はかなり驚いていた。


 彼らがそこそこ長い間過ごしてきたそんな中で一度も見たこともないほどに顔を赤くした。

 その想いを向けられる理由が本気でわからないのか「何故?」と聞いてきた。


「俺たちは揃って言ったよ。

 んなのわからない。とにかくお前が好きだってな」


 そして、女性がその言葉を受けて選んだのはミードではなくもう一人の男性だった。


 ミードは彼らへと祝福の言葉を向けた。


 当然、悔しくもあった。

 泣きたかった。

 彼らの笑顔を見て心が痛んだ。


 だが、それ以上に彼女と親友が共に笑いあえていることがとてつもなく嬉しかった。


「んで、しばらくここで過ごすうちに気に入ったらしくてな。ここに住むそうだ」


「……そう、なんですか」


 なんと言えばいいのかわからなくなったライトは視線をテーブルに落とす。


「でも、あんたは旅を続ける、のか?」


 ウィンリィの問いにミードは頷いた。


「まぁ、な。旅はなんだかんだで楽しいからなぁ……

 面白いものもあるし、出会いだってある。そう簡単にはやめられねぇよ」


 彼は言うと少し冷めたつまみを口に運ぶ。

 そんな風に旅の仲間と別れるということがあるのか。とライトはビールの液面を見つめた。


 自分たちはどうだろうか?


 自分がウィンリィやデフェットに向けるこの感情は異性に向けているようなものでは無い。


 旅を共にする仲間に向ける信頼。

 自分よりも多くの経験を積んでいる者への尊敬の念だ。


 では、彼女たちは?

 二人は自分のことをどう思っているのだろうか。


 ライトは横目でウィンリィを見る。


「何回かそういうの聞いたことあるけど、本当にあるとはなぁ」


 何事もないかのようにミードと会話を続けている。

 今度はデフェットの方へと視線を動かした。


「……どうかしましたか?主人殿」


 その視線に気がついたデフェットが聞く。

 なんでもない、と答えて視線を元の液面へと移す。


 もし、自分がミードの立場ならばどうしただろうか。

 彼のように覚悟を決めて告白することができたのだろうか。


(……無理だ。そんなこと)


 出来ない。

 告白することなど。自分には出来ない。


 そして、彼のように何事もなかったかのように気丈に振る舞うことも、おそらくできない。


 ライトは視線を上げてミードの顔を見る。

 どうやらウィンリィとの話は落ち着いたらしく、つまみを頬張っていた。


 旅を続けていれば彼のように振る舞えるようになるのだろうか。

 自分というものをどこまでも保てるようになるのだろうか。


 幸せそうな笑みを浮かべる親友と愛する者を素直に祝福できるほどの人になることができるのだろうか。


 彼という人をもっと見たい。知りたい。


 そう思っていると無意識にその言葉が口からこぼれた。


「俺と一緒に、旅をしませんか?」


「「「え?」」」


 ミードはもちろん、その突然の申し出にウィンリィとデフェットは目を見開いていた。


 彼らのその反応を見てライトもあっと声を上げ、急いで言い繕う。


「い、いや!その……俺たちも特に目的なんてないですけど、旅をしてますし!

 ミードさんはまだ旅を続けるっていうから、よかったら一緒に……って」


 しかし、その言葉は尻すぼみしていく。


 口が滑ったとはまさにこのことだ。

 まだ会って一時間ほどの相手にそんなことを言われて承諾するわけがない。


 そう思っていた。


「本当に……いいのか?俺が、一緒で」


 恐る恐るといった様子でミードが聞き返す。


「え?あ、その……はい」


 ライトが頷きながら言うとミードは木のジョッキの半分ほど入っていたビールを一気に飲み干し、それをテーブルに叩きつけた。


 三人の視線を集める中、ミードは俯き息を吐くとバッ!と顔を上げて言った。


「これからよろしく!ライト!」


 その言葉ともに手が差し出された。


 ライトはその言葉の意味と差し出された手を交互に見る。

 そして、それらの意味を理解するとその手を握り返し笑顔で答えた。


「はい!よろしくお願いします!」


 ミードも笑みを浮かべて強くその手を握り返した。


「今日は俺のおごりだ!お前たちのチームの新人だしな!」


「え?でも……」


「良いんだって!払わせろ!

 たまたま見つけた奴らだったがこんな良い出会いだったとは思わなかった!

 絶望して塞ぎ込み続けなくてよかった。それがはっきりとわかったその礼だ」


「んじゃ色々頼むか、えーっと」


「おいおい。もう少し加減をしてくれよ。ウィンリィよ」


 笑い合う二人を見てライトも笑い、それらにつられるようにデフェットも笑みを浮かべた。


「ああ、それとな。ライト。もう少し肩の力抜け。俺とお前は仲間。これから旅をするんだぜ?

 その硬い言葉やめてくれ」


「え、えーっと、よろしく。ミード」


 「これで良いか?」と少し照れ笑いを浮かべながら首をかしげるライト。

 ミードはその頭を力強く撫でる。


「それで良し!」


 そして、ニカッと笑みを浮かべた。


 雑に撫でられた頭は少し痛かったし、息もアルコール臭い。

 しかし、不思議と嫌ではなかった。


 新たな旅の仲間が増えた。

 それがライトにはとてつもなく、嬉しかった。

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