南副都サージ
太陽が真上に登る頃にはライトたちは砂丘の上にたどり着いていた。
砂が口に入りジャリジャリするがそれに構わず、眼前にそれを見つけたライトは表情を明るくさせる。
「あ、あれが!」
「ああ、南副都サージだ」
彼らの視線の先には大きな街があった。
東副都のように周りを外壁で覆っており、その中には建物がひしめき合っている。
その街中を真っ二つに分断するように大河が流れ、近くには小さいが畑のようなものが見える。
さらに最東端には城のような少し大きな建物が見えた。
「や、やっと……ベットで寝れるぅ〜」
ライトは安心し腰が抜けてしまったのか、砂の上に座り込んだ。
「もう……もう歩きで砂漠越えなんかしない……誓う」
「ああ、私もこりごりだ」
「同じく、もうしたくはないな」
デフェット、ウィンリィは砂漠越えをすることになってしまったその原因へと視線を向ける。
その言葉と視線に妙な棘を感じたがそれは気のせいではないだろう。
「本当に、ごめんなさい……」
「「わかればいい」」
◇◇◇
南副都サージは観光地として有名である。
昼間は暑く、夜が寒いのには変わらないが建物がある分ずっとマシだ。
また、東南に位置する大山から大河が流れ混んでいるため、水に困るということもない。
建物はそのほとんどが土や粘土で作られ、魔術による空調設備も充実しており、中は意外と過ごしやすい。
観光地として有名、と言ったがそれは娯楽施設の豊富なという意味だ。
西副都のようなコロサウスがあるのはもちろん。カジノやサーカスのような劇団などもあるため、貴族や商人が多く訪れる。
唯一の欠点として昼間暑いということがあるが、夜になれば丁度良い気候となるため「夜の都」と言われている。
「つまり、昼間はあまり外に出ないほうがいい、と?」
「う〜ん。どうだろ。
ここに来る人たちは大概昼夜逆転するし、買い物をするだけならむしろ昼間のほうがいいかも……」
「遊ぶのは夜、買い物は昼ってことか?」
「まぁ、そんな感じかな」
南副都サージに入った三人はライト、ウィンリィが並び、その後ろにデフェットの順で歩いていた。
デフェットは周りの視線があるため、奴隷らしく二人の会話に入らず静かに歩いていた。
しかし、何かが気になるのか視線だけを周りに巡らせている。
「とりあえず、買い物してから宿探すか?」
「……いや、先に宿に行ってゆっくり寝たい」
「同感。飯は宿屋でなんか頼むか……」
二人は砂漠越えの疲れを顔だけでなく、体全身の雰囲気からも放ち、力なくそう言葉をかわす。
デフェットも何も言わないが相当に疲れているはずだ。
三人はすぐに宿屋が立ち並ぶ箇所へと「あと少し」と自分を奮い立たせながら向かった。
◇◇◇
「「「あぁ〜」」」
ライトたちは案内された宿屋の部屋に入ると同時、剣を雑に床に放り捨てるように投げ置いた。
そして、そのままベッドへとそれぞれ飛び込む。
彼らが泊まる宿はそこそこの広さ、そこそこの料理、そこそこの値段。というなんとも表現し辛い宿だった。
明らかに貴族向けではない冒険者向けの宿屋を探した結果ここにたどり着いたのだが、そこまでの道のりが険しいものだった。
彼らが一直線に向かった宿町だが、そこは貴族や騎士御用達、つまりは高級店しかなかった。
金があるとはいえ、宿屋でなどでそこまで多く使いたくはない。
そのため、冒険者たちが泊まるような宿を聞いた。
そこで告げられた宿屋主人の言葉は彼らにとっては死刑宣告に等しいものだった。
「ああ、それなら真反対ですよ」
「「「???」」」
それを聞いて三人はほぼ同時に表情が完全に消え失せたまさに“無”表情で首を傾げた。
脳がそれを理解することを拒んでいた。
足が「もう限界だ」と震え、訴えている。
そして、口からは何か出てはいけない、形容し難い何かが、同じく形容し難い声とともに出ていた。
主人は何かを続けて言っていたみたいだが、彼ら三人はもはやそんな有様だったため、完全に右から左へと流れ去っていた。
それに驚いた主人が水を一杯と軽食の果物を渡してくれたおかげでどうにか意識を現実に戻せた。
もううんざりですぐにでもベッドに飛び込みたいが、ここでそうするわけにはいかない。
結局彼らは「また歩くのか」と息を吐き、渋々真反対に進み、この宿屋を見つけて飛び込んだ。
受付でベーコンのようなものを挟んだパンを食べ、僅かばかりでも腹を満たしたせいかすでに彼らには眠気が訪れている。
ゆっくりと堕ちゆく意識の中、ライトは再び心の中で呟く。
(もう、こんなことしない……)
『『自業自得』』
白銀と黒鉄の冷たく、少し前に聞いたものと全く言葉を受けた。
ライトは少し涙をこぼしながら「ごもっとも」と答えて眠りについた。
◇◇◇
ライト、ウィンリィが眠りについたのか規則的で穏やかな息の音がデフェットの耳に届いてきた。
それらがかなり強く彼女の眠気を誘うが、どうにか意識と体に鞭を打ち、ベッドから起き上がり窓から外を見る。
「……妙だ」
ウィンリィは確かに昼間は人が少ないとは言っていた。
しかし、これはあまりにも少なすぎる。
サージは貴族たちがいる西区、今自分たちがいる東区に大きく別れる。
夜が本番と言われるような街であるから、彼らも眠っているののか? そう思ったが何か違う。
時々見える街を歩く人は何かを恐れているかのように早歩きだ。
ここにきたのは当然ながら初めてのこと。
それ故にこれが少ない、ということなのだろうか?
これがこの街の昼間の姿なのだろうか?
いや、それは違う。と第六感が告げている。
具体的にこうだと説明ができないが、違うとだけはなんとなくの直感で断言できた。
その理由は街を歩いていた時に感じた感覚から来ているのだが––––
「これ、は……」
なんとかその感覚を言葉にしようとするが、疲れ切った体が脳に眠れと告げていた。
脳もそれに合わせて眠れと体へ信号を送っている。
(……今は、私も、眠ろう)
デフェットもベッドに飛び込み、欠伸を一つこぼすとゆっくりとまぶたを閉じた。




