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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第三節 マナリア

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マナリアの村へ(下)

 翌日の朝、日が昇り始めてすぐに彼らは西副都から出てデフェットが住んでいたというマナリアの村に向かっていた。


 先頭をデフェットが歩き、その左右の斜め後ろをライトとウィンリィがそれぞれ歩く。


「現代マナリアって人との混血もあったんだよな?」


 ライトの唐突な質問にデフェットは頷いた。


 しかし、だと言うのなら当然ながらある疑問が湧く。


「なら、なんでいがみ合ってるんだ?

 混血が生まれるってことはそれだけ距離も近くて身近な存在だったんだろ?」


「そりゃ最初は連携して魔王を倒そうとしてたからだよ」


 人とマナリアは最初は対等の関係だった。


 マナリアが敵の魔術を見破り、人がその穴を突いて戦う。


 魔術に関する知識もその時に人間にも伝えられ、人間たちの魔術もその時にかなり進歩したらしい。


「ああ、だが、だいたい50年ほど前に現代マナリアが人を殺したのだ」


「……え?」


 詳しい理由は不明だが、殺したことは間違いない。


 しかし、それが原因で人と現代マナリアの関係に亀裂が走り、さらに同じタイミングで魔王たちの侵攻もより強力なものとなった。


 結果的に人はマナリア、それに加えて人間との協力が難しいと思われる他の種族も加えて、関係をほとんど断ち切り、魔王との攻勢を続けるようになった。


「それって、マナリアが原因ってことか?」


「ああ、そうだ」


 ライトの問いにデフェットは苦虫を噛み潰したような表情で頷く。


 理由はどうであれ、人とマナリアの今の関係にまでになったのはマナリア側のせいであることに間違いはない。


 そんな過去が理由ならば、確かに人がマナリアを特に見下すようになるのは理解できる。


「……それでも、変わらんか?」


「ああ、変わらない。むしろより気になる。マナリアの考え方が」


 そのライトの変わらない意思を声から感じ、デフェットは諦めたように息を吐いた。

 やはりこの程度で彼の意志は変わらないらしい。


「そうか……」


 しばらく歩くと彼女たちの目の前に森が広がった。


 一応は土道がまっすぐに伸びている。

 整備されているのか、現在の場所から見る限りはそこまで鬱蒼としている森ではなさそうだ。


 その森にまっすぐに向かおうとするライトの腕をデフェットは掴んで止めた。


「待て、森の入り口には守人(もりと)がいる」


「守人?」


「そうだ。彼に許されなければそもそも森には入れない」


 ライトは少し黙り考え込むとデフェットに改めて聞く。


「話は通じる人?」


「通じは、すると思う。変わらず私が先頭で行く。

 何かあればすぐに逃げてくれ」


 そう言い先に進むデフェットの後ろをライトとウィンリィは付いて歩く。


 そのまま土道をまっすぐに歩き、森にあと数歩で入るところまで来た時だった。


 デフェットの足元に矢が突き刺さり、それに続くように声が森から響く。


「村を追われた奴が悠々と仲間連れとはな……」


 男性の声だ。

 少し低いがなんとなく声にハリを感じる。歳は20代後半辺りだろう。


 それがデフェットの言った守人らしく、その声に返事を返す。


「私は、私は村に入れてもらわなくても構わない。

 しかし、後ろの二人は入れて欲しい」


 守人は訝しむように視線をデフェットの後ろにいる2人に集中させる。


「……その2人、人間だな。目的はなんだ?」


 その質問にデフェットは答えなかった。

 正直に答えても受け入れられるわけがない。

 それゆえに、どう答えるべきか押し黙っていた。


 しかし、ライトそんな彼女を押しのけるような勢いでライトが声を上げる。


「マナリアの人たちと直接を話をしたい!

 あなたたちの考え方を少しでもいい。教えてくれ」


 守人はそのような答えが返ってくるとは思っていなかったのか、驚いた様子で小さく息を飲んだ。

 だが、すぐに視線を険しくさせ、語気を少し荒くして聞き返す。


「笑わせるな。素直に言ったらどうだ?

 貴様の住処をよこせと」


 トゲを感じるその物言いにライトは一瞬気圧されたが、すぐに一歩踏み出し言い放つ。


「こちらこそ笑わせるな!

 あんたには俺がそんな奴に見えるのか!?」


「……」


 男性は答えずにライトを見つめる。


 ありふれた服装、武器自体も珍しいものではない。

 そして、それは隣の女性も同じ。


 盗賊のようにも見えない。


 しかし、かと言ってどこかの貴族の従者のようにも見えない。

 さらに目的の真意は測れないが、それでも何か企んでいるようにも見えない。


「……少し待て」


 その声がしてから守人から質問を受けることはなかった。


 そのまましばらく待っていると3人の前にフードを目部下に被り、顔を隠した男性が現れた。


「貴様らを案内する。付いてこい」


 その声は先ほどまで森の中から聞こえていた守人のものと同じだった。


 守人は冷たく言い放つと先をスタスタと歩き始めた。

 3人は意外な展開に少し呆気にとられたが、すぐにその男性の後を追い森の中に入る。


◇◇◇


 森は外から見た通りのイメージだった。


 適度に枝が切りそろえられ、陽の光が優しくその森と道を照らしていた。

 彼らが歩くたびに小動物が逃げ去る。


「貴様、目的は本当にアレだけか?」


 ライトに向けられた質問だ。

 唐突に飛んできた質問に数度瞬きを繰り返したが、すぐに答えた。


「えっと、はい」


「奴隷商人、の様にも見えんな」


 ポツリと呟き守人は横目で彼らを見る。


 特に目を引かれたのがライトの右手首にある奴隷の主人であることを示す魔術陣。

 それからちらりと視線を動かすとデフェットの右手首には奴隷を示す魔術陣がある。


 マナリアの一級奴隷をこんな少年が持っているなど何か裏があるとは予想できたが、守人から見てライトはただの旅人にしか見えない。


 それは隣のウィンリィも同じ。


 守人が注意深く彼らを観察している時だった。ライトが守人へと質問する。


「あの……自分で言うのもどうかと思いますけど、なんとも思わないんですか?」


 彼はライトとウィンリィの関係はともかくライトとデフェットの関係はしっかりと認識しているはずだ。


 それでも守人である彼は何も追求することなかった。


 それに疑問を思った結果の問いだ。


「……どうせそいつは村を追われた者だ。

 どこで死のうが奴隷になっていようが構わん」


「案外、冷たいんですね」


「そんなものだろう。私からしたら人間の方が冷たいく見える。

 同じ種族を奴隷と罵り、物のように使い捨てる」


 それはその通りだ。


 なんでも奴隷制度を作り最初に始めたのは人間たちらしい。

 たしかに守人からしてみれば、理由はどうであれあの制度を生み出した人間たちの方がよほど残酷に映るだろう。


「……そう、ですね」


 それがわかったから、ライトは静かにその意見に同意した。


 人は同族であれ蔑むことができる。

 争うことができる。


 そうでありながら、自分たちがどの種族よりも秀でていると疑うことはなく、自分が正義であることもまた疑うことはない。


 正義の味方が一番残酷な存在であるのも、疑わない者は知ることがないだろう。


◇◇◇


 それから話が広がることはなく、森の中に隠れるようにあるマナリアの村に着いた。


 周りには少し高い木の壁が並んでいる。

 今見える範囲からでは木の上に家が建ち、その場所が不自然に明るいことがわかる。


 そのまま歩き続けるとライトたちの前には村に入る門のようなところが現れ、そこには門番役と思われる二人のマナリアがいた。


 守人は軽く手を挙げて挨拶をするとその門番たちは一礼、そのあと門に軽く手を挙げる。


 しばらくすると門が勝手に開き始めた。

 彼はそれを気にすることもなく再び歩き始め、ライトたちも変わらずその後を着いて歩く。


 改めてマナリアの村を見回す。


 マナリアの村の家はほとんどが木造だった。

 地面に建ち並ぶ家々は屋根などが石屋根になっているものもあるが、木の上にある家々は全て木造、木の中に家を隠すように作られていた。


 家もそこそこ建ち並び、人が住む村とあまり大差はない。


 村全体をどこか不思議に光が包み込んでおり、森の中だというのに不自然に明るい。


「……なぁ、どこに行ってるんだ?」


 せわしなく視線を動かすライトを無視してウィンリィは守人に聞く。


「長のところだ」


 その答えにデフェットが驚きをあらわにしながら聞き返す。


「何!?それは、本当か?」


「ああ、本当だ。貴様もこの村に住んでいたのだからわかるだろう?」


 家が多少増えてはいるがデフェットは確かに覚えていた。

 このまま進めば少し立派な木造の平屋がある。そこにはこの村を収める長が住んでいる。


(……なるほど。直接見定めるということか)


 デフェットはウィンリィの隣に並び小声で言う。


「ウィン殿。もしもの時はね」


「わかってる。

 監視も付いてるみたいだしあんまりそういうことにはなってほしくないが、どうにかしてみせるよ」


「……話が早くて助かる。もしもの時は私を囮に」


 デフェットは一瞬の躊躇いもなくそう言い。

 ウィンリィはそれに僅かに眉をひそめる。


「ま、ライトが許さないとは思うがわかった」


 いきなり長のところに行くなどデフェットは予想もしていなかった。

 せいぜいどこかの部屋で適当にあしらわれて終わるだろうと思っていた。


(それだけ彼が気に入られたと言うことか……)


 しかし、それだけではないかもしれない。


 相手が何を考えているかわからないのならば最低限の備えはしておくべきだ。


(なんであろうと、主人殿は必ず守りきる)


 それは奴隷としてではなく、彼女の本心から来ている想いだった。

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