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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第三節 マナリア

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マナリアの村へ(上)

「はい。予定より少々数が多かったので……」


「おお、それはありがたい!

 ランドワーム17体の討伐。確認の報告をギルド側にしておくよ」


「はい。ありがとうございました」


 ウィンリィが依頼主へランドワームの死骸を見せて確認を終えると、ライトとデフェットの方に戻り話したことを伝える。


「予定より少し多く狩ったから追加で5,000G貰えるようになるらしいぞ」


「ふぅ、そうか」


 ランドワームへ怒りをぶつけ冷静に戻ったライトは息を吐いて答えた。

 隣でレイピアに付いたランドワームの血を拭い鞘に納めるデフェットに声をかける。


「デフェさんも、お疲れ様」


 デフェットはそれに返すことなくライトの顔をじっと見つめる。

 逡巡していた彼女は少し視線を外したが、すぐに戻し口を開いた。


「主人殿は何を気にしていたのだ?」


 核心をついたデフェットの質問にライトは目を見開いた。

 ウィンリィに視線を移すと彼女もまた同じことを視線で聞いている。


 2人にはライトがイライラしていたことなどお見通しのようだ。


 しかし、正直に話してどうにかなる話ではない。


 この妙な違和感と憤りは文字通り住んでいた、世界が違うから生まれたものだ。

 それを彼女たちに言ってもどうしようもない。


「そ、それは……」


 言葉を濁すライトにウィンリィは確信を持っているらしくしっかりとした口調で聞いた。


「奴隷について、だろ?」


 その質問にライトは図星を突かれ完全に固まるしかなかった。


 息を吐きウィンリィは頭を抱える。


「お前の優しさは本当にすごいって思うし良いことだっても思う。

 でも、その優しさはいずれ何かを殺すことになる」


 ウィンリィはゆっくりと村の方へ歩きながらライトに言った。


「そうなった時、後悔するのはお前だぞ」


 ライトはその背中をただ見送るしかなかった。


 何か反論する気になどなれない。

 そもそも反論することができない。全て彼女の言う通りだとライトは思ったからだ。


「……主人殿。私もウィンリィ殿と同じ意見だ。

 それに奴隷制度はこの国にとってはなくてはならないものだ。


 デフェットはライトから視線を外し先を歩くウィンリィの背中を見つめる。


「加えると、主人殿から“見える全てがこの世界や人の全てではない”ということは覚えておいた方が良い」


「ああ、そう、だな」


 ウィンリィとデフェットの言葉はライトの胸に深く突き刺さった。


 わかっていたことだが、改めて誰かに言われるとかなり心をえぐられる言葉だった。


◇◇◇


 村に到着し、ギルドに着く頃には2人ともいつもと同じような調子に戻っていた。

 ライトもあの話を蒸し返す気はない。


 だからライトもいつも通りの自分に戻ることにした。


 その日の夜。ベッドから天井を見上げていると頭に声が響いた。


『あんたは考え過ぎなのよ』


『そうそう。変に考えない方が楽だよ』


 知っているかのように言う白銀と黒鉄にライトは寝返りをうちながら答える。


(知ってるよ。ああ、よく知ってる……)


 むしろ知りすぎている。


 何も考えて来なかったからこそ、あの世界には何もないものだと思い込んでいた。


 悩めることも考えることも元の世界には大量にあったというのに何も見えないふりをしていた。

 誰かの言うことを聞いている方がずっと楽だったからだ。


(でも、それって、本当に生きてるのか?)


 ウィンリィは似たような質問に「迷いながらも進むことが人。悩みながら成長するものが人」だと言った。


 単純に変わった姿を持った2人の答えを聞いてみたかった。

 だからその質問をぶつけた。


『うーん。そうねぇ。

 こんな姿になってる私たちが何言っても説得力無いと思うけど?』


『そうだね……。

 自分の意志や想いがそこにあるのか。それは重要だと思うよ?』


(へぇ、その心は?)


『単純さ。

 自分の意志で生きていないのなら、それは死体とどこが違うのか。僕にはわからないよ』


『あ〜、確かに。

 自分で何も考えずに生きてるのって実際のところ死体と変わらないわね』


 2人が自分とほとんど同じ結論に辿りいたことに少し驚きを露わにした。


 おそらく、いや、確実に自分よりもはるかに年上であろう者たちと意見が合うなどそうそうないことだろう。


(……俺も同意見だよ)


『あら、奇遇ね』


『まぁ、そう考えると今の君はむしろ生きすぎているって感じかな』


 軽く笑い合った後に彼女たちはいつもの調子から少し優しい声音へと変えて言葉をかける。


『もう少し肩の力を抜いたら良いんじゃない?』


『そうだよ。君はまだ17だろ?

 たしかに人生は短いが、悩み混むにはあまりにも若過ぎる。悪くはないんだけどね』


 後は一人で考えろ、とでも言うかのように2人はそんな言葉を残してふっと気配を消した。


「ほんと、大変だな……生きるって」


 おそらくその彼の言葉を聞いたものは目を剥いたことだろう。


 彼の言葉、そこに含まれていた言霊と呼ばれるそれは明らかに17やそこらで出せるものではなかった。


 しかし、残念なことに彼が比較対象にできる存在はあまりにも彼より経験を積みすぎた者たちだけだ。


 元の世界の自分とは大きく成長している。

 だが、彼が見ている場所はあまりにも遠く険しいもの。

 ゆえに、自身が立っている場所を自覚することはない。


 ライトはゆっくりと息を吐きながら目を閉じる。

 明日もおそらく依頼を何かすることだろう。ならば早々に寝て英気を養うべきだ。


◇◇◇


「そう言えばさ」


「ん? どうかしたか? 主人殿」


 今、ライトたちは近くの畑の手伝いとして雑草を抜いていた。

 報酬としては1万Gと少々物足りないが、代わりに昼食が賄いとして出される。


 別の村で同じような依頼をした時に作った魔術【オブジェクトセット】により、その物質(オブジェクト)が完全に固定されるため、根っこまで綺麗に抜ける。


 あくまでも物同士の結合を強くしているだけなのである程度の柔軟性もある。


 引っこ抜いた雑草の根にくっ付いていた土を落としながら、返事を返したデフェットに向けてライトは雑草を抜きながら言葉を続けた。


「いや、デフェさんの村ってこの辺なんでしょ?

 そこってどんな場所なのかなってふと思って」


「……あまり面白いものはないぞ?

 適当な家が並んでいるだけだ。少し見た目が違うと言うだけで生活自体は人とそう変わらない」


「へー。そんなもんなのか、っと。この草の根っこ長いな……」


 呟きながら別の雑草へと手をかけるライトにデフェットは質問を返す。


「急にどうしたのだ?主人殿」


「個人的に他種族の生活空間ってのが気になっただけだよっと!」


 ライトはなかなか抜けない雑草を両手で掴むと一気に引っ張りあげた。

 それは土を根っこにくっつけながら地中から離れ、地上へと上がった。


「……行ってみるか。マナリアの村」


「「……はぁ!?」」


 近くにいたデフェットはもちろんのことながら少し距離を置いて会話を聞いていたウィンリィも声をあげ立ち上がった。


 どちらも「冗談だろ?」とライトに顔で聞いている。


「……本当って言ったら、どうする?」


 ライトはそんな2人を見ながらニヤリと笑みを浮かべた。


◇◇◇


 休憩として昼食を食べた後、草取りと依頼主の確認も終えた彼らは、ギルドでの依頼確認と報酬の受け取り宿の一室に戻っていた。


「––––んで、西副都(ここ)からデフェさんがいた村まではどのくらいの場所にあるんだ?」


 主人であるライトに聞かれれば嫌でも素直に答えるしかなく、若干躊躇いながらも答え始める。


「……ここから東、より正確に言うなら東北東の森だ。大体300人ほどのマナリアがいる」


「って、ちょっと待て本当に行く気か? マナリアの村に」


 驚きながら聞くウィンリィにライトは当然と頷いた。


「お、お前! 人間とマナリアの関係知ってて言ってるのか!?」


「まぁ、門前払いをされたら確かにそれまでだ。

 でも、行って見なきゃ何もわからない」


 ライトの言葉にも確かに頷ける部分もある。

 だが、ウィンリィの疑念はそこだけではない。


 本人の意思は関係なくとも他種族である人間がマナリアを奴隷として扱っているのだ。

 主人が同じマナリアの血を引いていれば心配をする必要はないだろうが、ライトは人だ。


 それについてデフェットの同族である彼らがなんとも思わないだろうか。


「……本当に行くのか?」


「ああ、是非とも会ってみたい。マナリアという種族に」


 ライトの目には強い意志がある。

 こうなっては彼は頑として意見を曲げないだろう。


「……わかった。でも、私が危険と判断したらすぐに帰るぞ」


「それで良い」


「あ、主人殿。な、なぜ急に?」


 ライトは少し考え込むように顔を伏せたがすぐにあげて臆面なく言い切った。


「マナリアたちと話をしたいからだ。

 今の人とマナリアの関係について。他の意見が聞きたい」


 そんな答えにデフェットは呆気にとられ「へ?」と変な声を漏らした。


「あぁ、まぁ、こんなやつだ。いずれ慣れるから気にするな」


 そんなデフェットの肩をウィンリィは優しく叩いた。


(マナリアたちは人とは違う世界が見えているはず。

 そんな種族たちなら種族間の関係について何か別の見方をしてるかもしれない)


 もちろんそれを聞くという理由もある。


 そして、もう1つ。

 デフェットがもしマナリアの村に残りたいと思っているのならばそこに残しても良いライトは思っていた。


 それらの答えを得るため、彼らは足をマナリアの村へと向けた。

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