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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第三節 マナリア

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新たな仲間

「「「…………」」」


 昼の三時過ぎ。

 そろそろ小腹が空いてくる時間帯、ある宿屋の二人部屋は異様な空気に包まれていた。


 ベッドに座るのは三人。


 一人はライト、その隣には彼の奴隷となった女性。

 そして、二人の目の前のベッドに座るのはウィンリィだ。


 ちなみに奴隷になった女性は緑を基調としたシンプルな服装へと変えている。


「んで、なんでこうなった?」


 ウィンリィは再び、ライトに説明を求める。


 笑顔の、しかし、明らかに心中穏やかではないとわかる目を見て恐怖に言葉を詰まらせながら再び説明する。


「だ、だから……コロサウスの前を歩いてたらそこの支配人?みたいな人に捕まって。

 そしたら話がどんどん進んで、この人と戦うことになって」


 そこまでは理解できているのかうんうんと頷きながらウィンリィは話を聞いている。


 変わらずライトは少し言葉を詰まらせながら続けた。


「そして、戦って勝ったらなんか奴隷として持って行けって賞金と一緒に……」


 言いながら視線を下に移す。

 その先には賞金が入った小袋が床にポツンと置かれていた。


「渡された……と」


「そうですはい」


 はたから見れば無駄遣いがバレた夫とそれを咎める妻の図にしか見えない。


 完全に収縮しきっているライトにウィンリィは呆れるように息を吐く。


「理解はできなかったが、まぁなんとなくはわかった」


 その言葉にライトはホッと胸をなでおろした。


 そんな彼から視線を移しウィンリィは品定めをするように足から頭まで奴隷を見る。


 少し黄緑がかったブロンドの長髪、美しく整った顔、そして適度に強調されている胸と尻、しかししっかりと引き締まっている腹と四肢。


 見た目は完璧だ。完璧ではある、が。


 ウィンリィはその部分を見つめその奴隷に問う。


「あんた、人間じゃないな?」


 その言葉に奴隷の女性はバツが悪そうにウィンリィから顔をそらした。


 ウィンリィが見ていたのはその美しい髪と先の方が鋭くなった耳だ。


 その耳と独特な髪の色は現代マナリアの特徴だ。


 その髪は大気中のマナに適応しやすいようにするために少し独特な黄緑がかったブロンド色。

 耳はエルフとの血が混ざり合っているために控えめではあるがたしかに尖っている。


 ウィンリィのような反応はこの時代では珍しくはない。


 魔王たちが一挙として襲ってきたせいで人たちは連携するようになった。

 しかし、それは言い換えれば人だけの国を作るようになったということだ。


 他種族よりも同族の方がずっと信頼がしやすかったのだ。

 それは生物の本能によるものなのかもしれない。


 そうなっていた結果どうなったか。


 昔よりさらに同種族で固まりあい、連携し合い、より強力な国を作るようになった。


 そして、その時に優位に立った種族は人間だ。


 平凡でこれと言った特異性を持たない。

 しかし、それ故に数が増えやすく、その数と戦術により多種族を圧倒した。


 そうして領地を増やし、人を増やし、さらに別の場所を蹂躙していった。


 そんなことが長年続いているせいで特に人は他種族を嫌うと言うよりも、下に見ている節がある。


 いくつかの種族に対しては人類は「同じ(魔王)と戦う者」として見てはいるが、マナリアはその種族に含まれていない。


(これじゃ、誰か悪者かわからないな)


 ライトは読んだ歴史書の感想を思い浮かべるとウィンリィを止める。


「落ち着いてくれ。ウィン!この人は!」


 しかし、ウィンリィはライトの制止を無視、ベッドから立ち上がりマナリアの女性の前に立つと、軽く手を挙げた。


「ッ!?」


 ライトはウィンリィがマナリアの女性を引っぱたこうとしていると“思い込み”立ち上がり、マナリアの女性は歯を噛み締め衝撃と痛みに備えた。


 しかし、ウィンリィの取った行動は二人が思っていたものとは全く違った。


「私はウィンリィだ。これから、よろしく」


 ウィンリィは軽く挙げた手をスッとマナリアの女性の前に差し出すと微笑みながらそう言った。


 呆気にとられていたのはライトとマナリアの女性。

 どちらも目をパチクリとさせながらウィンリィの顔と差し出されている手を交互に見ていた。


 そんな二人を安心させるようにいつも通りの声音で続ける。


「ま、確かにあんたは人間じゃない。

 でも、ライトの奴隷ってことは一緒に旅をするんだろ?」


「そりゃ、そうだけど……」


「なら、問題ない。私としてはマナリアが仲間になって困ることはないからな。

 ま、食費が増えることは少々キツイが、この賞金があるからしばらくは余裕だろう」


 ライトからしてみれば意外と言うしかなかった。

 そういう見方が出来る者がいるとは思わなかった。


(いや、そうじゃないな)


 自分はこの世界の人間をどこか侮っていた。

 それを自覚し、ライトは人知れずため息をつく。


「……はい。よろしくお願いします」


 マナリアの女性はそう答えウィンリィの手を握った。


 その二人の仲を見てライトは安心したように息を吐きベッドに腰を下ろす。


(よかった……ウィンが認めてくれたならあとは気にすることは––––)


 ない。と思おうとしたところで、あることに気がつきマナリアの女性に聞いた。


「えっと、そういえば名前は?」


「名前、ですか?」


「うん。名前。奴隷!って呼ぶわけにもいかないだろ?」


 さも当然のように言うライトへとマナリアの女性とウィンリィは怪訝な目を向けた。


 そんな二人に疑問符を浮かべるライトへとウィンリィが質問する。


「お前、まさか奴隷増やすのか?」


「え?そんなわけないだろ?っていうかなんだよ急に……」


「主人殿。それならば尚更私に名前は不必要です。

 わざわざ個別の名称を付ける理由がありません」


 そこまで言われてようやく気がついた。


 奴隷とは全てを買われた者を指す。

 その全ての中には体や意思、そして当然ながら名前も含まれている。


 基本的にこの世界でもそれは同じだ。


 名前など複数の奴隷を持つ裕福な家、貴族たちや商人などが付ける。

 それも基本的にはその家に来た番号がそのまま付けられることが多い。


 奴隷を一“体”しか持っていないのに名前を付ける者などまずいない。


 二人はおかしくはない。

 この世界の常識の中で話し、見てもいるということ。

 むしろこの世界で浮いているのはライトの方だ。


 当然だ。

 奴隷などライトは見たことがない。見たのは今日が初めてなのだ。

 普通の人、として扱ってしまうのは至極当然と言えるだろう。


「俺が名前で呼びたいから、じゃダメか?」


 だから、これは元の世界の常識、ではなくライトの個人的な理由だ。


 ここでもし彼女を奴隷と呼ぶようになれば、元の世界での感覚が完全に消えてしまうような気がした。


 その方がこの世界に馴染むためには良い。


 しかし、旅をするのはこの世界に馴染むためではない。

 自分が見る世界を広げるためだ。


 そのために最低限失いたくない自分がそこにはある。


 人を、共に旅をする者を奴隷と蔑むような呼び方はしたくなかった。


『……あんた。やっぱり変わってるわね』


『だね。奴隷なら奴隷として扱った方が彼女も変な気を使うことはないと思うよ?』


 白銀と黒鉄の言葉が胸に刺さる。


 確かに彼女からしてみれば奴隷らしい扱いを受けている方が変に勘ぐる必要がないため楽だろう。

 たとえ偽善と思われてもライトは彼女を奴隷として見たくはなかった。


 躊躇う女性に「ならば」とライトは口を開く。


「なら、これは主人の命令だ。

 奴隷になる前の名前を含めて軽い自己紹介をしてくれ」


 その言葉は予想外だったのか女性は目を見開き、どこか安心したように息を吐くと胸に軽く手を添えて言う。


「名前は、デフェット。性別は女性。年は十八。

 出身はここから東に少し行った森林の中にある村です。

 マナリアなのでマナは見えます。しかし––––」


 何か言いにくいことでもあるのか、スラスラと続けていた自己紹介を続けていたが、急に詰まらせた。

 少しの間を置き、意を決したように彼女は続ける。


「––––魔術はあまり使えません」


「え!?」


 それに声をあげたのライトだ。


 デフェットの言葉は彼からしてみれば謙遜か何かとしか思えない。


 ゲイ・ボルグは確かに魔術だった。

 身体強化も並大抵の精度ではなかった。


 まだ素人の目線だが、どちらも下手な魔術師が使うものよりも強い、とライトは感じた。


 彼のその疑問に答えるように苦笑いを浮かべる。


「あれは、私が使えない魔術を、それでも諦めきれずに使い続けた結果生まれたものです。

 それ以外は本当にダメです」


「へぇ、珍しいな……」


 マナリアの特徴として外見以外にもマナの流れが見える。

 そのため、魔術師よりも魔術を教える者、魔導師向きの種族だ。


 しかし、マナが見えると言うだけであり、エルフのように魔術が使いやすいと言うわけではない。


 現代マナリアは古代マナリアと比べれば多種族間で子孫を残しているため、そのような突然変異が起きたのだろう。とライトは結論付けた。


 デフェットは「これでいいですか?」と視線を送る。


「あ、うん。ありがとう。デフェット……さん」


「お気軽に、デフェとお呼びください」


 ライトはそれに頷き、沸いた疑問をデフェットにぶつけた。


「あ、デフェ……さんのその話し方って自分の話し方?

 それとも奴隷だからって畏まってるの?」


「……えっと、それは、どういう意味でしょう?」


「だって、ほら。デフェさんってコロサウスのときそんな話し方じゃなかったような気がしてたから。

 もしそうじゃないなら無理に合わせなくてもいいよ。なんか、こそばゆい」


 敬語を向けられる経験がほとんどないライトは頬を掻きながら、どこか恥ずかしそうに提案した。


「それも命令、ですか?」


 その言葉にやはり心が少し痛む。

 だが、ライトはそれでもそれに頷いた。


「わかり……わかった。

 これからはこのような感じで話させてもらう。これで良いか?主人殿」


「う〜ん。その主人殿ってのもやめてほしいけど……」


「申し訳ないがこれだけは譲りたくはない。

 私は名前で呼ばれる許可を貰え、このような話し方も許可して貰えたが、そこだけは決して譲れん。私は奴隷だ」


 デフェットの決意は固い。


 ここで命令、と言えば確かに早いがこれ以上は彼女との関係に亀裂を生むことになるだろう。


(なら、このまま我慢するか……話し方の妙な違和感は無くなったわけだし)


 ライトは新たに加わった仲間にうんうんと満足気に頷く。


 マナの流れが見えるマナリア。


 その彼女能力の頼もしさはその時が来れば必ずわかるだろう。

 さらに彼女にはほぼ唯一無二の魔術もあり、剣術も心得ている。


 かなり心強い仲間であることに間違いはない。


 そんな中、ウィンリィが何かに気づいたのか「あっ」と声を漏らした。


「ベッド、どうする?」


「「あっ……」」


 早速仲間が増えたことによる問題に彼らは直面した。

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