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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第二節 小休止

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小さな家族

 結論から言うと三人の予想は当たっていた。

 外れていて欲しいと心底思ったが的中していた。


 彼女たちが来た時点ですでに人だかりができ、それを掻き分け中心へと進む。


 そこには予想していた者が予想していた通りの戦闘を繰り広げていた。


 ライトの剣が振るわれる。


 だが、それに対する騎士は金属同士が擦れ合うような音を伴いながら小手で受け止め、ショルダータックル。


 それをできるだけ衝撃を和らげるように後ろに下がりながらライトは受け止める。


 吹き飛ばされそうなところを剣を地面に突き刺すことで無理やり止め、再び走り寄り距離を詰めて剣を振り下ろす。


 今度は騎士もそれに剣で答えた。

 剣同士が激しくぶつかり合う音を響かせると、互いに距離を取るように後ろに大きく下がる。


 このような攻防はかれこれ三十分ほど続いていた。


 ライトは肩で息を繰り返し汗を服の肩あたりで拭う。


(こいつ……盗賊のくせに強い)


 滑りそうになる剣をしっかりと握りなおし、中断に構えた。


 創造で形を維持できるのは後五分が限界だろう。

 それまでに決着をつけなければやられる。


 魔術を使えばこの状況の打開も不可能ではない。

 だが、ここまで人が集まってきた中で今の自分が魔術を使えば、下手をすれば被害が出てしまう。


 そのため、とにかく攻撃をいなし、反撃の瞬間を待つしかない。


 そして、肩で息を繰り返すのはライトに対する騎士もまた同じ。


(この少年。この村を支配しただけはあるな)


 客観的に見れば男性の方が押しているように見えるだろう。


 しかし、その実は決定打に大きく欠けていた。


 確かに攻めることはできている。


 だが、それ以上は強く前に出られない。うまい具合に出鼻を挫かれてしまっている。


 互いに大きく攻めきれぬまま、剣をぶつけようとした瞬間。


「あなた!」


「ライト!」


 その二つの声が分け入ってきた。


「「え?」」


 二人はゆっくりと声が聞こえた方向を見る。


 そこには見慣れた人物がいた。

 それも、腕を組み、修羅のような形相を浮かべながら。


 二人はひっと息を呑みながら互いに己の獲物を地面に落とした。


◇◇◇


 そんな騒ぎから約三十分後。


 アリシス宅で一人の男性と少年が土下座をしていた。頭を床につけた綺麗な土下座である。


 それをしている少年、ライトはふと「この世界にも土下座の文化はあるのか」と思っていたりしていたが、それは現実逃避故に出たものだろう。


 ちなみに隣の男性は騎士甲冑を脱ぎ、ラフな格好となっている。


「んで、あんなことになったんだ?」


「なぜ、あんなことになったのですか?」


 ウィンリィとアリシスはいつの間にそれほどまで仲を深めたのか互いに良いコンビネーションで聞いた。


 完全に勝ち目がなくなっている男二人はどちらから言い出そうか迷っているとウィンリィが足で床を叩く。


 その一つの動作でライトに「先に説明しろ」という事ことははっきりと伝わった。


「えっ、えっと……一人で留守番するのも暇だし、動き足りなくて……

 それなら掃除をしていようかな、と思いまして。

 そうしてたら、掃除してたら突然ドアが開けられて、強盗かなって」


「そして……ああなったと?」


 コクリと恐る恐るライトは首肯を返す。


「普通は騎士甲冑着ている時点で気づくだろ……」


「それも奪った物だって思って……」


 苦笑いを浮かべたライトをウィンリィから強烈な眼光が向けられ、彼は息を飲んだ。


「それで……あなたは?」


 アリシスはウィンリィのように怒りの形相を浮かべているわけではない。いつものような笑顔だ。


 鋭くその視線だけで「人一人殺せるのでは?」と思えるほど鋭くなってはいるが。


「い、いや、だな。

 お前が倒れたって手紙を見たから早馬を使って大急ぎで来たんだが……

 そしたら家に見知らぬ少年が居て、てっきり家を奪っていたと……」


「それで……ああなったと」


 コクリと恐る恐る男性は首肯を返す。


「「はぁ……」」


 女性二人のため息が重なる。


 そして、視線を合わせると再び深いため息。


「ライト––––」


「あなた––––」


 そして、何か残念なものでも見るような目で2人を見下ろす。


「バカか?」


「バカですか?」


 またまたその二つの声が重なった。


 そこには怒りよりも呆れの方をよく感じるのは気のせいではないだろう。


「「言い返す言葉もございません」」


 男性二人の言葉もまた重なる。


 それから約二時間。

 彼女たちの不満を聞く羽目になったのだが、彼らはその時思った「こいつは同志だ。同類だ……」と。


◇◇◇


 彼女たちの不満を聞き終え、男性二人はようやく席につく事を許された。


 どこか気恥ずかしい空気を男性は咳払いで変える。


「私は西方騎士団、第二騎士隊所属のデヴィスだ。すまない。私の早とちりで切り掛かってしまって」


 デヴィスは深く頭を下げ、詫びと感謝を表す。


「あ、こちらこそ。すみません。俺はライト」


「私はウィンリィです。

 こちらもアリシスさんにはかなり世話になっていますし、お互い様、ということでここは」


 ウィンリィの提案にデヴィスはもちろんだと頷く。


「それと、軽く状況説明を貰いたいのだが……」


 その言葉を受けライトとウィンリィ、アリシス、アリスの四人は今に至るまでの経緯を説明した。


「なるほど……。

 理解した。そういうことならゆっくりしていくといい。

 とは言え、近くの村が妙に落ち着きがないと思ったらそういうことか」


「そういうこと、とは?」


 デヴィスは言うべきか逡巡したがそれを口にした。


「ライト君。君の悪い噂はすでに副都の手前まで聞こえているよ。

 オーガを殺し、そこにいた女性たちを横取りした、という噂がね」


 それを聞きライトとウィンリィは驚きで目を見開き、アリシスはやはり、と言いたげな苦い表情を浮かべている。


 確かにそのことはライトも予想していた。


 しかし、まさかそこまで酷くなっていたとは予想外だった。


「この調子だともうすでに副都には話が出回っていることだろうさ」


 それが本当なら西側のどの村に行っても彼らは宿に泊めてもらえず、仕事もまともに受けることができないだろう。


 彼らは当然ながら裕福ではない。

 寧ろ、旅をしている分一般家庭よりも金はない。


「これ、かなり……」


「ああ、マズイ状況だな……」


「お兄ちゃんもお姉ちゃんもそんなこと絶対にしないのに……」


 アリスの二人を信頼する言葉にライトは心に走る痛みを堪え、礼を言いながら頭を撫でる。


 確かに、噂は行き過ぎているがアリスがいるためか話を濁してる風を感じる。

 噂自体はもっと酷いものが流れているのだろうということは容易に想像できた。


 それに女性たちの命を奪ったのは間違いなく自分自身だ。

 そこは間違いない。


 そう思うとアリスのただ真っ直ぐに信じているその目が途轍もなく、途方もなく怖く感じる。


「私には君たちに借りがある。もうしばらくここにいるといい」


 静かに頷く二人だがその表情は暗い。


 いくらわかっていたとはいえ、それを実際に聞くと予想以上にショッキングだった。


「なぁに、副都やその周辺は噂話が多い。一週間もすれば忘れ去られるさ」


 二人を安心させるようにデヴィスは言った。

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