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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第四節 ディザスター討伐戦

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最後の戦い


 マルドワース・リヒターのマナを元にガラディーンを基礎としてエクスカリバー、アロンダイトを分解と再構成することにより創り出された剣、トリニティ・フォーズである。

 それの刃は黄金で鍔は三日月のような形、柄の末端にはひし形の意匠を持っていた。


『出来たわね。よくやったわ』


『ああ、しかも……ふふっ、なんだかこそばゆいな』


『それは……そうかも』


 トリニティはライトが創造したもの。

 つまり、この状況を切り開くに足ると確信させる形として彼はそれを創り出した。


 それに自分たちが作った剣の意匠、ガラディーンの黄金の刃、エクスカリバーの三日月のような鍔、アロンダイトの柄頭のひし形が残っているのに白銀と黒鉄はどこか嬉しさを感じた。


 2人にとっての希望がライトであるように、彼の希望もまた自分たであるのだと自覚することができたのだ。


 小さく笑う彼女たちを見たライトも小さく笑ったが、ふと疑問が浮かぶ。


「あれ!?」


 結果的に綺麗な二度見をしたライトは妖精のような2人をマジマジと見つめる。


 それに答えるようにジト目で見つめ返し、両腕で自分の体を抱きしめて言った。


『な、なによ。その目は……』


 その少女は腰ほどまであるだろう綺麗な長い銀髪を両サイドで束ねていた。

 美人というに相応しい顔立ちをしているが目が少々鋭く見えるため近寄り難い雰囲気を感じる。


『僕たちの姿、変かな?』


 自分の姿を確認するようにワンピースの裾を摘みながら見回すのは短めの黒髪を後ろ1つで少女。

 顔立ちとしては先ほどの少女と似通っているが目元に柔らかさが残っていた。


「え、えっと、白銀と黒鉄、だよな?」


 突然見えるようになった2人にライトは確認を取るように問いかけた。


『ええ、そうよ。私が白銀でーー』


『ーー僕が黒鉄だ』


 銀髪の少女が胸に手を当てて堂々と言い、黒髪の少女は小さく微笑んだ。


「まさか、姿が見えるようになるなんて思わなかった。2人ともそんな姿だったのか」


『ま、今私たちはあんたの体を器にしてるからね。そりゃ、あんたにも見えるわ』


『この姿は僕たちがついさっき適当に作ったものだよ。いいだろ?』


「……うん。まぁ、悪くない。

 あ、呼び方って変えた方がいいか?」


『いいわよ。変えなくて』


『ああ、君にとってはあっちの名前の方が馴染みがあるだろ?』


「助かる」


 ライトとしては白銀と黒鉄が見えるようになるという予想外のことが起きたが第1段階である剣の作成は無事に終えた。


(次は第2段階!)


 ライトが心の中で呟くと空からバサッと何が羽ばたく音が届いてきた。


「ライト!」


 ほぼ同時に聞き慣れた声で名前を呼ばれた。


 ライトはゆっくりと降下してきたワイバーンへと駆け寄ると迷うことなくそれに跳び乗り、そのワイバーンを駆っていたウィンリィの腰に左腕を回した。


 彼女はその感覚を受けるとワイバーンを羽ばたかせて分裂個体の群れの上の飛行を始めた。

 分裂個体は空を飛ぶワイバーンを捕らえるための術は持っていないため、頭上を過ぎるのを見つめるしかない。


「ははっ、いくらあいつら飛び道具がないとはいえ怖いな……」


「ありがとう。ウィン」


 作戦の第2段階はライトをディザスター本体まで連れて行くことだ。

 他にもマーリンたちの移動が裏であるがメインはそれだ。

 そして、それを行うのがウィンリィである。


「礼はいらないし言うにしても速い。お前には戻ってきてもらわなきゃならない。

 私はお前を死地に送るんじゃないからな」


「うん……」


「みんなお前が帰ってくることを望んでいる。

 お前がみんなに死んでほしくないって思うのと同じように……。

 今のところ数人怪我をしたぐらいで死んでるやつも死にそうなやつもいない」


「みんなが応えてくれてるなら、俺も応えないとな」


「そういうことだ」


 そんな会話をしているうちにもう本体が見えてきた。


 本体の周りには分裂個体はいない。

 すでに分裂個体のみで分裂をするようになったということなのかもしれないが、ライトにとっては周りを気にしなくていいため好都合だ。


『ライト、わかってるでしょうけどもう日暮れが近いわ』


『それに分裂個体のみで分裂できるようになったってことはここからまた数を一気に増やすかもしれない』


(わかってる。一気に勝負をーー)


 ライトが数回深呼吸し、いざ飛び込もうとしたところでウィンリィが声を上げた。


「待って!」


「……どうした?」


「私はまた、お前と旅をすることができるよな?」


「当たり前だろ。俺の近くにはウィンが必要なんだ。ウィンが嫌ならまた考えるけど?」


 少しからかうような言葉を受けたウィンリィはどこか満足気に目を閉じて頷いた。


「そうか……うん。なら、いい。

 戻れよ。ライト」


「ああ、ウィンたちも背中は任せるよ」


「おう」


 頷き合うとライトはワイバーンから飛び降り、ディザスター本体へと向かった。


 高さは約30メートル。

 時間にしてほんの数秒でライトは雪原に着地。

 身体強化はすでにかけられているため怪我どころか危な気もない。


 ライトはトリニティ・フォーズを中断に構えると10メートル先にいるディザスター本体を見据える。


 初めて見た印象は影であった。

 一応人の形は持っているが輪郭がどこかおぼろげで本当にそこに存在しているのか疑問に思ってしまう。


 しかし、よく見ればきちんと雪原の上に立ち、影ができているあたり本当に存在しているのだろう。


「……」


 それはただ無言でライトの敵意に答えるように何もない場所に手を伸ばした。

 するとその空間が歪み、本体と同じような影の剣を作り出し掴んだ。


 さらにそれの頭上には天使の輪が浮かぶ。


『戦闘態勢ってところかしらね』


『だろうね。ライト、作戦の最終段階だ。アレを倒す』


「ああ、行くぞ!」


 ライトは創り出した剣を握りしめると本体へと向かい、振り下ろした。

 対するそれは答えるように横へと振り、その一撃を受け止める。


◇◇◇


 マーリンは巨大なディザスターを消し飛ばしたライトを即座に狙ったところからディザスターはマナを求めていると予想していた。

 マルドワースを準備していたアヴァロンを狙って進行していたこともあったため、それは事実だろう。


 そして、今マナを溜め込んでいるのはライト。より正確には彼が持つ剣だ。


 作戦最終段階での他の者たちの仕事は分裂個体をライトへと近づかせないようにすること。


 その策の要が柱の残骸だ。


 あの柱は膨大なマナを扱っていたもの。

 粉々に崩れてはいるが魔力やマナを流せばギリギリ崩壊を免れた残材が呼応状態へと移るはずだ。


 もちろん光の壁を作る機能は失われているため、ただマナを発するだけだが、分裂個体の目くらましには十分だ。


「やれますか? マーリン」


 所々が崩れ始めたアヴァロンから離れながらレーアが問いかける。

 ウィスに背負われたマーリンは疲労を感じさせないほどに自信ありげに口を開いた。


「儂がやることは主らにマナを流す場所を示すことぐらいじゃ。

 見るだけじゃからの。それぐらいならまだできる」


「えっと〜、その場所ってそろそろかしら〜?」


「おお、そうじゃそうじゃ。もう少し右、そうそこじゃ」


 ウィスによって雪原に降ろされたマーリンはその場所へと走り寄り、杖を突き刺した。


「この杖に魔力を流すのじゃ。あとは勝手に道に沿ってマナが流れる」


 そう言われた2人は頷くとその杖に手を置き、深呼吸。

 体の中で作り出した魔力を杖へと流し始めた。


◇◇◇


 現れた変化を見たウィンリィは報告を上げる。


「分裂個体の進行方向が残骸に向かった!

 マーリンの見立て通りだ!」


『俺の方でも見えてる。

 何体かはライトの方に向かってるが、それは予定通り俺たちで対処する』


 グシオンから上がるブルートの報告を受けたバウラーは安心したように息を吐くと気を引き締めるように息を吸った。


「よし、状況はまだわからん。油断せず、奴らを狩り尽くせ!」


「「「おぉぉぉおお!!」」」


 最後の戦闘の最後の踏ん張りどころ。

 それが今だ。

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