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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第四節 ディザスター討伐戦

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再会する者たち


 ライトの姿はアヴァロンの一室、マーリンの工房にあった。

 もちろんそこにはアヴァロンとその工房の主たるマーリンもいる。


 ちなみに他の者たちはそれぞれ貸し与えられている部屋や風呂などで体の疲れを癒しているだろう。


「帰ってくるなり工房を貸せと言われた時は首を傾げたが、なるほどの。声が聞こえん、と……」


 ライトからの説明を受けると顎をさすったマーリンは説明した彼を横目に捉えて言葉をかけた。


「しかし、その顔は解決策があるようじゃが」


「うん。念のためだよ。

 マーリンなら何かあっても対応できるだろ?」


「まぁ、そうかもしれんが。実は儂と同じ古代マナリアの白銀と黒鉄とやらを諌めるため、とは言うまいな?」


 マーリンの確認と問い詰めるような言葉を受けたライトはなにも言わずに視線を逸らした。


 図星であることをその態度から汲み取った彼女は溜息と共に頭を抱えながら言う。


「儂も3本の剣を作った者たちは気になっておるからの話が聞けるのならば良い」


「なら、始めるぞ」


 頷いたマーリンを見てライトは白銀と黒鉄を鞘から抜き取る。

 異常なほどの白と黒の剣をそれぞれ見つめると彼は目を閉じ、口を開いた。


「我が身は太陽の現し身」


 それはガラディーンを器とする2人の力を引き出すための言葉。


「その()は炎を纏い、光を纏う」


 ふと脳裏に始めてこの詠唱を唱えたときのことが浮かぶ。

 あの時は今よりも切羽詰まった状況だった。

 今もそうだが、より直接的に命の危機にあった。


「その炎はあらゆる邪悪を焼き尽くし」


 それをきっかけに彼女たちとはよく話すようになった。

 頭の中にあるのは声だけで姿は見たことはない。あるのかすらもわからない。

 しかし、そのせいか言葉は嫌にまっすぐで嘘偽りなく自分を伝えようとしているように感じられ、厳しくはあれど信頼するには十分過ぎた。


「その光はあらゆるものを照らす」


(頼む。2人とも、もう一度俺にその声を聞かせてくれ)


 ライトは閉じていた目を見開き、その名を呼んだ。


「ガラディーン」


 瞬間、工房が強い光に包まれる。

 熱を感じる風が吹き荒れ、雑然としていた部屋のものを吹き飛ばす。


 マーリンは風に飛ばされないように軽く腰を落としながら目を細め、腕で覆う。

 光が落ち着いてきたのを感じ取りゆっくりと目を見開き、風と光を引き起こした中心地を見た。


「それが、ガラディーンか」


 ライトの手にあるのは黄金の剣。

 3年ぶりにそれを手にした彼は首肯しようとしたが、突如として声が頭に響く。


『おっっそぉぉぉおおおいッ!』


 その声の主は白銀だ。

 昔と何1つとして変わらない声と物言い。


『あんたどんだけ待たせるの!

 どれだけ時間が経ってると思ってるの!?

 わかってる!? 私たちその間ずっとーー』


 どうにか言葉を挟もうとするが、白銀の勢いはそれを許さない。

 ライトがそれにどうするべきかと考え始めた頃にそれを止めたのはもう1人の古代マナリアである黒鉄だ。


『まぁ、落ち着きなよ。白銀』


『で、でも! 黒鉄だって……』


『ああ、そうだね。心配していた。すごくね。

 だからといってずっと責め立てたところで意味はないだろう?』


 黒鉄の言葉で白銀はどこか悔しそうにぐっと言葉を飲む。

 ようやく静かになり黒鉄は小さく息をこぼし、ライトへと言葉を向けた。


『色々と聞きたいことは山になってる。

 その右腕と右目、この場所、そして、君の隣にいるその古代マナリアについても』


 まずはどれから説明を始めるべきかとライトが唸っているとマーリンが首を傾げて声をかける。


「どうかしたか? 主よ」


 彼女からしてみればライトはガラディーンを握りしめたまま無言の状態だ。

 不審に思ったとして不思議ではない。


「あ、えっと白銀と黒鉄に今までのことを説明しようと思って」


「なるほど……ふむ。儂からも話をしたいのじゃがどうにかならんか?」


『ライト。君の手を取るように伝えてくれ。そうすればパスは繋がる。話ならできるようになるよ』


 黒鉄の言葉をマーリンへと伝えながらライトは手を差し出した。

 彼女は少し興味深そうに「ほぅ?」とこぼすとその手を取る。

 瞬間、マーリンの頭に声が響いた。


『始めまして。僕は黒鉄だ。どれだけの時間かはわからないが、彼の世話をしてくれて感謝する』


『……私は白銀よ。私の方からも礼を言うわ』


 その2つの声を受けてマーリンは目を見開く。

 しかし、それは頭に声が響いた感覚が珍しいからではない。

 その声に聞き覚えがあったからだ。


「いや、待て。その声、もしや……ヴァシュとシュネーか?」


 ヴァシュとシュネー。

 その2つの名前に聞き覚えはない。


『あら、懐かしい名前ね』


『ああ、そうだね。本当に懐かしい』


 だが、彼女たちの反応からその名前が持つ意味を理解できた。


 シュネーは白銀のヴァシュは黒鉄の本当の名前、おそらく剣を器とする前の肉体を持っていた頃の名前なのだろう。


『その名前を知っているのは相当に限られる。

 でも、私たちはあなたの姿に身に覚えがまるでない』


『君の名前を聞いてもいいかい?』


「アンブロス、だ。今はマーリンと名乗ってるが」


『そう、あの近所のちっちゃな子どもが』


 白銀の懐かしむような言葉に黒鉄も同じように小さく笑ったが、すぐにその事がなかったかのように声を響かせる。


『昔話は後、説明をもらえるかい?

 アンブロス……いや、マーリン』


「ああ、無論じゃ。少し長くなるから茶を……いや、今の2人は肉体がないのか。

 声だけというのは少々寂しいの」


 悲しげな笑みを浮かべるマーリンへと2人は楽しそうに言った。


『あら? 案外悪くないわよ』


『そう、この体も慣れれば便利なものだ。

 まぁ、茶は飲めばいい。僕たちに遠慮は必要ないよ』


「……わかった。では、移動しようかの。

 ライトも良いな? 


「あ、ああ、わかった」


 工房の扉を開いたマーリンに続いてライトもそこから出た。


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