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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第三節 手を伸ばす者たち

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もう一度掴んだもの


 ポーラがアルルハイドからの言葉を伝えた瞬間、騎士たちに動揺が走った。


 当然だ。彼らはライトを魔王、ウィンリィたちをその配下と思っている。


 しかし、彼女曰く、王はそんな彼らの行動を邪魔するなと言い、加えてこれからエクステッドの保管庫に向かうとあれば気が気でなくなるのは仕方のないことだ。


 警戒と驚愕、動揺に不審。

 それらを含んだ視線を受けながら5分ほど歩いてたどり着いたのはセントリア城の中央西側、少し離れた半地下となっている部屋。


 その扉の前に立つ護衛であろう騎士2人へとポーラは伝える。


「お父様から許可は得ています」


「……本当でしょうか」


「私を疑うのならば今から聞きに行っても構いません」


 視線をそらすことなく毅然と告げるポーラ。

 問いかけた騎士はその後ろにいるライトたちからさらに後方にいる騎士たちへと視線を向ける。


 彼らはゆっくりと1回だけ頷いた。

 それを見てから少しの間をおいて騎士は言う。


「わかりました。ですが、何かあればポーラ様といえど」


「ええ、無論。むしろその答えを出せる貴方を私は誇り、讃えましょう」


 笑顔で出されたポーラの言葉に深く礼をした騎士は懐から鍵を取り出すともう1人へと目配せした。

 それを受けた騎士も鍵を取り出す。


 2人は鍵穴に鍵を刺すとほぼ同時に回すとこれも同時にドアノブを掴み、扉を開いた。


「皆様、行きましょう」


 ポーラの声に従い彼らはゆっくりとその中へと足を踏み入れた。


◇◇◇


 小さな階段を降りた先はルーンが刻まれた石の光によって外とあまり変わらない光がある。

 窓らしい窓はないが明かりで困ることはないだろう。


「……なるほど、これはさすがと言う他ないな」


 ポツリとデフェットがこぼした。

 広い部屋の壁だけではなく、中央付近にも2列の棚が並んでおり、それが50メートル先まである。

 保管庫らしく一応は整理されているようだが、その数は膨大だ。


 たまたま目に付いた1つの棚を見上げながらナナカはゼナイドへと問いかける。


「ゼナイドさん。ここに来たことある?」


「いや、私はないな。ウィスやレーアならあるいは……」


「来たことがなくとも不思議ではありませんわ。

 立ち入る時には王族も共に入る必要がありますし、それにここが開かれる時の理由の9割は新たに保管する時、と言うほどですから」


 使われることがなかったというのはセントリアがそれほど平和だったということの証明だろう。


 これほどの数があればディザスターとも戦えそうだと一瞬思ったが、その考えは過ちだろう。

 対応できるのであればマーリンが手をこまねく理由がない。


「ワイハント商会もこれぐらい持ってたりするのか?」


「そうですね……私も全て把握しているわけではありませんが、ここの4割ほどでしょうか。

 とてもではないですが国には負けますよ」


 ウィンリィの質問にミーツェは肩をすくめた。


「さて、では探すぞ。ライト、探すのはフード付きのマントでいいんだな?」


「ああ、そうだ」


「マント……衣類でしたらたしかこちらです」


 案内されたところの棚にはたしかに衣類が丁寧に畳まれて並んでいるが、やはりその数が異様に多い。


「よし、このまま驚いてるだけじゃ終わらない。早く探し出そう」


 ここまでこれたらあとは探し出すだけだ。

 彼らはポーラに示されたその場所を探し始めた。


◇◇◇


 それぞれに分かれて探し始めたが、ポーラはどこか心ここに在らずという様子であった。

 そして、聖王騎士であったゼナイドがそんな彼女を放っておけるわけもなく声をかけた。


「いかがなされましたか?」


「ゼナイド……」


「いくら明かりがあるとはいえ、その調子だと怪我をします」


 言いながら自然に隣に並んだゼナイドは棚にある物たちを見回しながら小声で続ける。


「騎士の地位を失った私でよければですが、お話をお聞かせ願えませんでしょうか」


 ポーラはその言葉に乗ることにしたようで心の中にあったつっかえていることを口にした。


「民を犠牲にしたくない。苦悶よりも笑顔であってほしい、と。

 お父様は……ライト様もまたこの国の民であると認めているのです」


 アルルハイドはライトへと「なぜ苦しむ」と問いかけた。

 あの言葉は一重に民が苦しむ様を見たくないという彼の気持ちが溢れたものだろう。


 例え、一度自分の都合で殺そうとした者であろうともライトの素性を知らないアルルハイドにとって彼はこの国の民の1人でしかない。

 彼にとっては導くべき存在なのだ。


「でも、私はライト様に戦ってほしいと思ったのです。

 ライト様ならば勝てるから、と」


 しかし、ポーラは彼が戦うことを望んだ。

 大切な存在で、守りたいと思った存在である彼が戦ってほしいと思った。


「あの場で言ったようにそれは彼が、彼自身が選んだことです。

 ポーラ様が気に病むことではございません」


「……大切な存在を死地へと向かわせることが、良いと思うのですか?

 同じ思いであるはずのお父様が、なぜライト様たちの行動を認めたのか。私には分からないのです」


 殺してでも止めようとした行動を今になって認めた理由。

 アルルハイドが戦うことを諦めた理由を知ったからこそわからなくなったのだ。


「なにか、彼の中に見つけたのでしょう。

 正直に言うと私にもよくわかりませんが、ポーラ様もそうでしょう?」


「そ、れは……どうでしょうか」


「ポーラ様はライトになぜ戦って欲しいと思ったのですか?

 死んで欲しいとは少しも考えたことはないのでしょう?」


「もちろんです。そんなこと決して私はーー」


「であればそれで良いと思います。

 ポーラ様は彼を信頼し、生きることを願っている。彼もまたただ死ぬことを望んではいない。

 心苦しいでしょうが信頼し、帰りを待つ。それが今の彼には力となる。そして、アルルハイド王もそれを選んだ。

 まぁ、これは私の憶測でしかありませんが」


 最後の言葉は自信がないのか苦笑いを浮かべながら発せられていた。


 それを聞いてふとポーラの中にあった記憶が蘇る。


『ポーラ様は戻ってきたものに労いの言葉を与えて、その肩を叩くだけで良いのです。

 それだけで救われる者がいます』


 続けて彼は言った。


『少なくとも俺はあなたの言葉で救われました』


『あなたは言葉しかないと言いますけど、その言葉で救われた者があるんです。

 それを誇ってください。胸を張ってください』


 今なら言える。

 なぜこの大事な記憶を引っ掛けなかったのだろう。

 なぜまた同じことで自分を苦しめていたのだろう。


 だが、思い出してしまえば、掴んでしまえば後は握りしめるだけで良い。


「そう、かもしれませんね」


 一瞬で吹っ切れたような顔をしたポーラを見てゼナイドは小さく安堵の表情を浮かべた。


 それとほぼ同時にライトが声を上げた。


「あったああぁぁぁあああっ!!!」


 それと続くようにウィンリィやデフェットの声も聞こえる。


「見つかったようですね」


「ええ、私たちも行きましょう」


 ポーラとゼナイドは頷きあってライトの声がした方向へと向かった。

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