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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第二節 集う者たち

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集結(下)


 彼へと協力を申し出たのはライトたちの方だ。


 飛竜騎士団の力を侮っているわけではないが、下手をすれば聖歌騎士団と打ち合うだけになる可能性が高い。

 ただでさえない戦力を王都の方も問題がある中でそのような使い方をするのに不安があったのだ。


 そのため、ブルートには聖歌騎士団にせめて手を出さないようにしてもらうために向かってもらった。


 上手く転べば協力してもらえるかもしれない。

 そんな期待がなかったといえば嘘になる。


 しかし、いざ自分たちを捕らえ、デフェットを従える者を見て平静のままでいろというのは少々酷なことだろう。


 特にライトは彼から手酷い仕打ちを受けた現実がある。

 現にほんの一瞬だったがミュースへと向けられた目には殺意が込められていた。


 対するミュースの方はそれを甘んじて受けるかのように無言のまま、円卓を囲う彼らを見ている。

 まるで「私をそこに加えるか?」と問いかけているようだ。


 真剣なものから険悪なものへと変わりかけていた空気を吹き飛ばしたのはマーリンの咳払いとそれに続く言葉だ。


「お主らの間に因縁があるのは承知しておるが今は後にせい。良いな?」


 最後の念押しはライトへ向けて放たれた言葉であるのは視線でわかった。

 彼は言葉や反応を返すことはなかったが、マーリンはそれを肯定と受け取り、ブルートとミュース、デフェットへと椅子に座るように示す。


 3人は会釈をするとその椅子に座った。

 彼らのうちすぐに小さく息を吐いて口を開いたのはブルートだ。


「と、まぁ見ての通り聖歌騎士団は今回の件に協力してくれることになった」


「信頼して背中を任せろとは言いません。

 ですが、この力で成せることがあるのならば行使する覚悟がある、ということだけはわかっていただければ」


「……うむ。儂としては戦力はあれば良い。しかもこれで王へと会いに行けるだろうしの」


「それに関連して1ついいか?」


 小さく手を挙げて挟んだのはバウラーだ。

 彼はマーリンが頷き、他の者たちも口を挟まないのを見てミーツェへと視線を向ける。


「ポーラ第三王女が幽閉されている場所が掴めました」


「「「ッ!?」」」


 真っ先に目を見開いたのはライトたちだ。

 しかし、すぐに胸を撫で下ろすように柔らかい表情を各々に浮かべる。


 表立った噂を聞かないため何かあったのではと心配していた。

 そんなライトたちからしてみれば幽閉という不穏な単語があっても生きていることがわかれば小さな安心を得られたのだ。


 ナナカとレーアも似たような表情を浮かべていたが、意外だったのはブルートとミュースもそうであったということだろう。


「ポーラ様の場所が……」


「噂は事実であった、ということですか」


「噂?」


 マーリンの疑問に2人は頷いた。


 彼ら騎士の中ではポーラは幽閉されているという噂が流れていた。


 もちろん表立っては体調不良ということが説明されていたし、大半の騎士はそれを信じていた。

 それはブルートとミュースもそうであり、流れていた噂を「不敬な」と苦い表情で聞き流していた。


「場所はたしかに伏せられていましたが、ポーラ様の療養のためならば、と」


「ああ、見舞いなんかは逆にポーラ様の負担になるだろうってことでしてなかったしな。王の方からもそう言われたし」


「ふむ。騎士団、それも聖王騎士の中でも秘匿されていたあたり、やはり幽閉という言い方で間違いないようですね」


「ところで、その場所は?」


「西副都ウイストの城です」


 ライトの問いにミーツェは端的に答えた。

 その答えを受けた彼はポツリと呟く。


「北副都の王は西副都は他の副都が協力する姿勢を表せば協力するだろうって話してたけど。

 他の副都からの要請でどうにか解放できないかな?」


「無理でしょう」


 他の者が考え、答えを出す間もなくミュースが断言した。

 全員の視線を受けながらミュースは続けて説明を始める。


「ポーラ様の件はディザスターとの件に関与していません。

 あの方はただ捕らえられているのです」


「いや、そういうわけでもない」


「どういうことですか。ミリアス卿」


「……彼女は王への説得のための切り札となる。王族を説得するには王族が必要だ」


 後ろから打たれないようにするには王の説得は必要。

 そして、そのためには王族であるポーラの力も必要なのだ。

 純粋な力ではなく、その権威と言葉の力が。


「加えるなら他の貴族たちへの影響力も絶大だものね〜。

 行動の仕方はいるいないでかなり変わると思うわ〜」


 2人の言葉を受けてミュースはライトへと改めて視線を向けて問いかける。


「あなたも彼女たちと同じ考えですか?」


「……少し違う。力を借りたいとはたしかに思っているけど、それが理由じゃない」


「では、冤罪の証明?」


「それは全然違う」


「では、なぜ時間をかけてまで助けようとするのですか?」


「ポーラ様は俺を助けてくれた人だ。言葉をかけて、答えをくれた人だ。

 そんな人が望まない生き方を強いられようとしているのなら、彼女がそれに納得していないのなら俺は助ける」


 まっすぐな言葉と目をミュースへと向けていたライトはふっと表情を緩めて続ける。


「俺がしたいからそうする。

 誰かを助ける理由なんてそれで十分だって思わないか?」


 その言葉を受けたミュースは驚いたように数度瞬きをすると彼らにわからないほどの小さな笑みを浮かべた。

 そして、呆れたような息をこぼしながら言葉を吐く。


「わかりました。

 協力するといった証明をそこでできるかもしれませんしね」


 マーリンはライトとミュースの顔を見比べると話を切り替える。


「では、ポーラとやらの救出は後々に考えるとして。

 ライト、アロンダイトは見つかったのであろう?」


「ああ。ほら、これだ」


 答えながら彼はマントからマナリアの村で見つけたアロンダイトを取り出し、マーリンへと差し出した。


 それを受け取り、まじまじと見始めた彼女へとナナカは問いかける。


「ど、どう? 隠され方的にそれだと思うんだけど」


「隠され方とな?」


「うん。なんかエクスカリバーを鍵みたいに使ったんだよ」


 興味深げに「ほう」とこぼしたがその顔には確信のようなものは見えない。

 何か引っかかる事でもあるようだったがマーリンはその剣を置くと円卓を囲んでいる者たちを見回しながら問いかける。


「では、今ある情報は以上だな?」


 彼らはそれぞれで目を見合わせたり辺りを伺って首を縦に振った。


「ならば一時解散としようかの。ここに初めて来た者たちは案内を受けるが良い。

 ライト、これは少し預かるぞ」


「ああ、わかった」


 二つ返事で了承したライトへとマーリンは続けて口を開きかけたが、すぐに止めてダイニングから出た。


 閉まる扉を見届けたゼナイドはこの集いを締めくくる様に言う。


「各々に休息を取ろう。どう動くにせよ今は体を休める時だ」


 その言葉にも反対を示す者はいなかった。

 いくら時間がなかろうと今は一区切りがついたタイミング。次にいつ取れるかもわからない休息を取るには絶好の機会だと理解しているからだ。


(そう、彼と話す機会も)


 ライトはミュースを見つめ、彼もまたそれに視線を返していた。

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