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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第二節 集う者たち

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集結(上)


 空にはマーリンの居城であるアヴァロンへ向かい飛行する影が4つあった。


「ほ、本当に飛んでいる、のか?」


 驚きと恐怖を綯い交ぜにさせながらバウラーは自分を抱えているライトへと問いかけた。

 顔は平静をどうにか装えているが、声は微妙に震えている。


 そんなバウラーを安心させるようにライトは微笑んだ。


「はい。飛んでますよ。

 あ、大丈夫です。俺が手を離してもロープがあるので、少なくとも落下して死ぬなんてことはありませんよ」


「お、おう……な、ならいいんだが」


 しかし、安心しきれていないのかバウラーは恐る恐るで雪の積もった地面とライトの翼を見ている。

 そんな彼を安心させるようにバサッと翼を羽ばたかせた。


◇◇◇


 ライトとバウラーが合流したのは1時間ほど前のことだ。


「どうだ? 2人とも」


 自分の後ろに続いて飛ぶナナカとレーアの方へと頭を向けて言葉をかける。

 あまり余裕がなさそうな顔を浮かべるナナカとレーア。

 2人のうち、言葉を返せたのはレーアだった。


「これが大丈夫に見えるのなら、あなたの体に穴を増やします、よ……!」


「でも飛べてるじゃないか」


 飛べる者が他にもいた方がいいだろうということで飛び方を教えて今日で3日目。


 教えているせいでマナリアの村からアヴァロン到着まで3日ほどかかったが、かわりに今までなかった概念をナナカとレーアはある程度ものにしていた。


 そのことを褒めたのだが、レーアには伝わっておらず、返されたのは怒声だ。


「飛ばしてるんです!

 第1なぜ腰に翼なんですか。足とも手とも違う器官なんですよ? どちらかに寄せようとは思わなかったのですか?」


「うーん。腰なら四肢が自由だし、上半身も動かせるからっていう理由なんだけど」


 そもそも、手は物を掴むために空けておきたい。

 足の方は振り回して旋回や姿勢維持に使う関係でどちらかに寄せるのははなから頭になかった。


 腰になったのは最初こそは“できるかどうか”という疑問から背中に創ったが、後に飛竜騎士団との戦闘も考慮し始めた。


 結果として腰であれば上半身を捻っても影響は少ないだろう、という結論に至り腰に翼という今の形に落ち着いたのだ。


「戦闘のため、ですか……」


 視線と言外に「私には関係ない」と含ませるレーアへと彼女の少し先を行くナナカがふわふわと飛びながら言う。


「ほら自分が慣れてる、方が、人に教え、やすいから、ね?」


 いくつか共感できるところがあり、納得したレーアだったがジト目で彼女へと言葉を飛ばす。


「まずあなたは高度を一定に出来ないのですか?

 目の前でふわふわされると少々目障りです」


「うっ! でも、速度は、私の方が、出ててる、から!」


 胸を張った瞬間、一気に高度を上げて飛んだナナカを2人は見上げた。


 少ししてナナカの姿が大きく見えてくることからすぐに降りてきていることがわかったが、勢いが早すぎる。


「ナナカ! ブレーキ、ブレーキ!!」


「うわぁぁあああ!!」


 もはや落ちる勢いで向かってきたナナカをライトは受け止めた。

 腰の翼を大きく広げて勢いを押し殺したところでライトは息を吐いた。


「大丈夫か?」


「う、うん。ごめん……ありがとう」


 突然ライトの顔が間近に現れたナナカは恥ずかしさに顔を背け、地面へと視線を向ける。

 そこでふと気がついた。


「ねぇ、光ちゃん。レーアちゃんも、あれ見て!」


 彼女が指で示した先には3人の人とキャッネ族特有の猫の耳を生やす1人がいた。

 全員が空を飛ぶライトたちを仰ぎ見ている。


 まだ距離があるため顔ははっきりと見えないが、それでもライトの胸には期待感が募っていた。


「あれって、まさか……」


「うん! 絶対そうだよ!」


「レーアさん、一度降りよう。できる?」


「と、当然です」


 ライトの言葉に少し余裕がなさそうにしながらもゆっくりと下降を始めた。

 彼もナナカを抱えたまま降下、地面に降り立つ。


 すぐさまナナカがライトから離れ、入れ替わるようにキャッネ族の女性が走り寄り、深々と頭を下げた。


「お久しぶりでございます。ライト様」


「……ッ、うん。ミーツェも元気そうでよかった」


 降りている最中に見てはいたがそう言葉をかけられてようやくライトは安心したように笑みを浮かべた。


 しかし、それに対してミーツェの表情は暗い。


「申し訳ありません。ライト様をお守り出来ず、さらに接触も今まで怠り」


「いいんだ。ミーツェのおかげで今こうして俺たちは集まることができたし、動くことができてるんだ」


 ライトはミーツェに歩み寄ると彼女の少し震える手を握りしめた。

 その手の温もりを感じると彼はいつも見せていた笑顔と同じものを浮かべて言う。


「でも、本当に良かった。ミーツェ、君が生きてて」


「ライト様……。

 私はまだあなた様に仕えても、共にいてよいのでしょうか?」


「むしろこっちからお願いしたいよ。頼めるか?」


「ええ、もちろんでございます。ライト様」


 2人の再開した様子を見ていたナナカはポツリと呟く。


「よかった……」


「ええ、そうですね」


 和やかな雰囲気でレーアは短く返した。

 そんな彼女たちへとゼナイドが声をかける。


「2人とも、少しいいか?」


 呼ばれた2人が向いた先にいたのはやはりゼナイド。

 しかし、その後ろには1人の見知らぬ男性がいた。


「彼が、ライトに協力していたバウラーだ」


 ゼナイドに紹介を受けたバウラーはむず痒さを吹き飛ばすように咳払いをして口を開いた。


「紹介されたバウラーだ。よろしく。

 えーっと、君がナナカで、隣がレーアでいいんだな?」


「は、はい! よろしくお願いします」


「協力に感謝を」


 ナナカとレーアがそう返し、続くようにゼナイドが問いかける。


「とりあえず、詳しい話はアヴァロンに向かいながらでもしようと思っていたが、1ついいか?」


「飛んでいたこと、ですね?」


 レーアの確認の言葉にゼナイドは頷いた。

 そんなへとバウラーは驚いたように少し目を見開いた。


「ゼナイド。お前も知らなかったのか」


「当然だ。知っていればもっと別のやりようもあった」


 答えて再び2人へと視線で問いかける。

 質問を向けられたナナカとレーアは顔を見合わせた。


「えーっと、光ちゃんが創った魔術だよ」


「私たちはそれを付与してもらっていたに過ぎません」


「はぁ、なるほど」


 頭を掻いたゼナイドは息を吐くと改めてその場にいる3人へと言う。


「ひとまずわかった。後の話は移動しながら聞ーー」


「それなら飛んで行きましょうか〜」


 ゼナイドの提案の言葉を塞いだのはにこやかな表情のウィスだった。


◇◇◇


 そして、時間は今へと戻る。

 ライトは目線と言葉を真後ろを飛ぶレーアへと向ける。


 飛んでいるレーアはかなり必至に見えるが、その腕の中にいるウィスは空の風景を物珍しそうに見ていた。


「あら〜? あら〜!」


「あ、あなたはいつから『あら〜』しか言えなくなったのですか?」


「だって、他になんて言えばいいのかなんてわからないじゃな〜い?

 今も少し怖いけど〜、レーアちゃんだから安心だしね〜」


「むっ、そ、そうですか」


 まっすぐで素直に褒めるウィスに少し照れたのか顔を赤くさせた。


「あ、ちょっと落ちてきてるわよ〜」


「なっ!? ちょ、ちょっと待ってください」


 どうにか高度を取り直したレーアからナナカの方へと向けた。


「な、ナナカ……も、もう少し安定して飛べんのか!?」


「う、うーん。これでもかなり頑張ってるんだけど……」


「し、しかし、うぉ!?」


 ナナカはゼナイドを抱えて緊張感がより強く現れているのか1人で飛ぶよりも安定しているが、それでも軽く上下している。


 ゼナイドはそんな飛び方に不安を抱いているようだが、あの程度ならばいきなり落ちるようなことはないだろう。


(あとはーー)


 ライトが新たに向けた視線と言葉の先にはスカイ・ウィングを受け取り、彼と同じように空を飛べるようになったミーツェがいる。


「ミーツェ! 飛べてるか?」


「は、はい! 腰に翼があるのは妙な感覚ですが、どうにか」


 そう答える彼女の顔は平静を装っているが、声は少し不安げに見えるが飛び方としては問題ない。


 最初はライトがバウラーと共に抱えて飛ぶ予定だったが『従者である私がライト様に任せきりになるわけには参りません』と一蹴された。


 そのため、ナナカやレーア同様にスカイ・ウィングを付与した。


 しかし、身体能力の差があるせいだろう。

 先に練習していたナナカたちよりもいち早くミーツェは飛び方のコツを掴んでいた。

 現に彼女たちよりも上手く飛んでいるようにライトには見える。


 ミーツェの様子に頷いたライトは続くナナカたちを導くようにアヴァロンへと向かい、飛行を続けた。


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