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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第二節 集う者たち

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手がかりを求めて

 ライトたちはトラストの案内でマナリアの村へと向かい森の中を歩いていた。

 その間にライトの大まかな状況、ナナカたちについて、現在の目的などを話した。


 それらを聞き終えたトラストはどこか安心したように息をつき、言う。


「いや、良かった。信じてはいたが、少々不安だったからな」


「その、村の方では何か?」


 周りからしてみればあの村に住むマナリアたちもライトと関わりがある。

 彼らもまた何かあらぬ誹りを受けていたのではないかとライトは心配していた。


 しかし、トラストは安心させるように笑顔を浮かべ、首を横に振る。


「その辺りは問題はなかったよ。

 強いて言えば商人を説得しようとしていたマナリアたちを抑えるのにケニッヒが苦労していたぐらいだ」


 トラストのそれが移ってしまったライトも笑みを浮かべた。


「その様子だとケニッヒさんもお元気そうで」


「ああ、皆、3年前からあまり変わらんよ」


 そこからまた会話を始めたライトとトラスト。

 彼らに続くナナカとレーアは混ざることが出来ず楽しそうに話す2人を見るしかなかった。


 しかし、ナナカは楽しそうにしながらレーアへと声をかける。


「……なんか、楽しそうだね」


「まぁ、ライトにとっては彼も3年ぶりでしょうし」


「うん、そうだね。嬉しいなぁ」


「はぁ、あれだけで喜ぶのですか? あなたは」


 呆れたように言ったレーアにナナカはニコニコとしたまま声を弾ませながら答えた。


「そりゃそうだよ。好きな人が悲しんでる顔より笑ってる顔の方が嬉しくない?」


「……それは、そうですね」


 小さく笑ったレーアにナナカはニヤリとした笑みを浮かべたが、彼女にそれを見せれば問い詰められるだろうことは容易に想像できるため、それは一瞬だけだった。


 ただこれだけは言っておかなければならないだろう、とナナカは口を開く。


「光ちゃんは渡さないからね」


「ッ!?」


 レーアが声を上げて反論しようとしたところで少し先を歩いていたライトが彼女たちへと声をかける。


「村が見えたぞ〜」


「あ、うん! わかったー!」


「ま、待ってください! 私の話も聞い、ああもう! ライト、あなたのせいです!」


「はぁ!? なんでぇ!?」


 レーアの照れ隠しのために向けられた怒りだったが、ライトにはその経緯など分からず声を上げた。

 さらに続けて走り寄り、杖で軽く彼の脇腹を突き始めた。


 そんな彼らを見てトラストは楽しそうに声を上げて笑った。


「あっはっはっ!

 賑やかでいいじゃないか!」


「に、賑やかって。あ、ちょっ、それくすぐったいから……!」


 森にはトラストの笑い声とライトがレーアを止める声少し長閑な声が響いていた。


◇◇◇


 落ち着いたレーアを連れてまっすぐ向かったのは村長であるケニッヒの家。

 通されたのはライトが3年前に訪れた時と同じ応接室だった。


 トラストが呼びに行き、そこで待つこと数分。

 彼はケニッヒと共にその部屋に入ってきた。


 ライトたちは立ち上がろうとしたがケニッヒはライトを見つけるとすぐさま近寄り、その目を見つめる。


「あ、あの……?」


 戸惑うライトだったがケニッヒはそれで何か確信を得られたのか少し離れ、その頭をポンポンと軽く叩いた。


「よかった。色々と変わったこともあったようだが、君は君なようだ。

 守人から聞いてはいたが、やはり最後は実際の姿を見なければならんからな」


「いえ、当然ですよ。

 お変わりないようで、ケニッヒさんも」


 ライトのにこやかで意識された柔らかい声音を受けたケニッヒはライトの右腕と右目の眼帯を見て少し表情に影を落としながら言った。


「まぁ、な……。君はかなり変わったな」


「えっと、その辺りも話します。

 彼女たちのことも話したいですし」


「ああ、では茶を用意しよう。

 君たちもよく来てくれた。彼の仲間である君たちを我々は歓迎するよ」


 ケニッヒはそう言い、2人を安心させるように微笑んだ。


◇◇◇


 紅茶と茶菓子が運ばれてライトたちはケニッヒに移動中に守人に話したことと同じ内容の話をした。


「ディザスターの件。我々も君に協力しよう」


 話を聞き終えたケニッヒはライトたちへとそう言った。

 ホッと胸を撫で下ろした彼らを見てどこか嬉しそうに口角を緩めたケニッヒだったがすぐに顎鬚をさすりながら呟くように言う。


「詳しい話はまた次として、アロンダイト……か」


「ご存知ですか?」


「ああ、名前は聞いたことはある。おとぎ話ではない方のものも……」


 しかし、そこから先の言葉をケニッヒは詰まらせた。

 そんな彼へとレーアは確認の言葉をかける。


「だが、隠されているとして場所はわからない、ですね?」


 それに頷いたケニッヒは改めて彼らへと口を開く。


「すまん。ライト、私はこの件についてあまり力になれそうにはない。

 精々が他の村の協力を求める程度だが、全ての村へ話を広げるにはかなり時間がかかる」


「いえ、それだけでもとてもありがたいです」


「とはいえ1年弱という時間で話を広げるにはセントリア王国は広すぎるな……」


 ポツリと呟かれた守人の言葉に全員が一斉に頭を抱えた。


 マナリアの村の正確な数は不明、もちろん場所も全て把握しているわけではない。

 他の村が知らない村を知っている可能性もあるが、それでも全て把握するのは不可能に近い。


 いくらライトのスカイ・ウィングがあろうとも全ての村を巡る時間はないのは明らかだ。


「うーん。飛竜騎士団の人たちの力を借りる、のは無理だよね?」


「です。

 私たちはありませんが、マナリアを敵視している者もいます」


「うむ。マナリアの中にも当然おるだろう。

 ここはまだライトのこともあって心象は良いが、他はわからん。

 無用な争いを生みかねない種を広めるわけにもいかんだろう」


 情報を広めるのも、しらみ潰しで調べることもできないということならば次は調べる場所を狭める方法だ。


 そこに行き着いたライトはふと思い出し、ケニッヒに問いかける。


「そういえば、おとぎ話ではないアロンダイトの話を知っているという話でしたが?」


「うん?

 ああ、それぞれの剣の力だよ」


「剣の力?」


 反射的に聞き返したナナカにケニッヒは頷いた。


 曰く、エクスカリバーは月の光を束ね土を司る。

 曰く、ガラディーンは太陽の光を束ね火を司る。

 曰く、アロンダイトは星々の光を束ね水を司る。


 ケニッヒが話したそれらはマナリアの一部に知られている話だ。

 おとぎ話にもある月、太陽、星というワードがあるあたりおそらくこれらがおとぎ話の源流だろう。


 それらを聞いたライトは唸りながら呟く。


「水を司る……。ならもしかして水辺かな?」


「いや、水の力があるとはいえそこにあるとは限らんだろう」


 トラストの冷静なツッコミにライトは素直に頷いた。

 自分でもその答えはあまりにも安直すぎる物だと思っていたからだ。


「なら、素直に物を隠せるような場所とかですかね?」


「う〜ん。物を隠せる場所。洞窟かな?」


「ええ。ナナカの予想が一番近いと思います。

 もし、家宝か何かなら話が広まっていておかしくはありませんから、人目につかないところなのは確定でしょう」


「では、近くに洞窟がある村、か……。

 わかった。いくらかありそうな場所には覚えがある。すぐにまとめる」


 そう言い立ち上がろうとしたケニッヒ。

 それに言葉を向けようとしたライトを守人が「待った」と声を上げて止める。


「洞窟、というほどではないが、洞穴ならこの村にもあるぞ」


「君が言うのはあの穴蔵か?

 しかし、あそこは何もないはず」


「ええ、もちろん私もそうは思います。

 けど、それは我々の中にこびりついた感想だ。

 なにせ詳しく調べたことはないのだからな」


「我々が見落とし、そのままにしていた何かがあるかも知れん、ということか」


 頷いた守人を見てケニッヒは少しうつむき思案、そして顔を上げてライトたちへと言う。


「では、守人よ。彼らをあの洞穴へ案内し、ともに調査を。

 私はその間に村の書き出しをしよう。それと、他の者たちへと伝えねばな」


「ああ、わかった。

 ライト、ナナカ、レーア。そう遠くはないが急ぐぞ」


 トラストに言われた3人はそれぞれ返事をするとケニッヒへ礼を言ってその部屋を出た。


 ライトたちを見送った彼もまた村のピックアップと他のマナリアへの伝達を行うために行動を始めた。


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