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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第二節 小休止

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小さな出会い


 ギルドに到着した2人は依頼掲示板の前にいた。

 ウィンリィはそこに張り出された一枚を指差す。


「う〜ん。これなんてどうだ?」


「えーっと。近くに度々現れる害獣退治か……これってここから少し先の林の?」


「たぶんな。規模もそんなに大きくないし。

 たまには獣とも戦った方がいいだろ?」


「……まぁ、そうだな。報酬もそこそこだし。

 じゃ、これにするか」


「おっし、じゃちょっと行ってくるわ」


 ウィンリィはそう言い受付に向かった。


 ライトはその姿を少し離れたところから見ていたのだが、そんな時にマントをちょんちょんと引っ張られた。

 後ろを振り向くとそこには九歳ぐらいの物静かそうな少女がいた。


 服装はこの辺で普及しているシンプルなワンピース。髪は茶髪で肩あたりで綺麗に切りそろえられている。

 顔も物静かそうではあるが目元は柔らかい。


 可愛らしい顔立ちだが今はそれを暗くさせていた。


「……えっと、どうかしたか?」


 少女はライトを見上げ何かを言おうと口を数度開くが言いにくそうに俯いた。


 ライトは安心させるように膝に手をついてしゃがみ、その少女に視線を合わせながら優しく問いかける。


「話してみてくれないか?きちんと聞くから」


 少女はコクンと小さく頷き言葉を紡ぐ。


「ねぇ、お兄ちゃん達はあの林に行くの?」


「ああ、聞いていたのか。そうだよ。それがどうかした?」


 ライトはできるだけ優しい口調で少女の問いに答えた。

 そんなライトの対応に安心したのか少女は続ける。


「お母さんが風邪で、ずっと寝込んでて。それで薬草がいるの」


「それはあの林に?」


「うん。でもここに依頼するには、お金がなくて……それで、それでね」


 涙目で続きを言おうとする少女をライトは頭に軽く手を乗せ、撫でることで制する。


「わかった。その薬草を取ってくればいいんだな?」


 その言葉で少女は声を押さえポロポロと涙を流し泣き始めてしまった。


「えっ!?ちょっ、待て、俺何か––––」


 ライトが焦っている中、後ろから非難の視線を感じ後ろを振り向くと。


「うわぁ、女の子泣かせてる。お前、そんな奴だったんだな」


 どこか残念な人を見るような悲しそうな目でライトを見ているウィンリィがいた。


「ち、違う。こ、これには事情がだな」


 その騒ぎによりギルドにいた他の者からの視線も“さらに”殺気を含むような鋭いものとなる。


「と、とにかく、ここを出るぞ。依頼とってきたんだろ?」


 ウィンリィもこの場にはあまりいたくないのは同じようで二人は少女を引き連れギルドを出た。


◇◇◇


「えっと、それでなんだが、その子は誰だ?」


「だから、この子は……って俺も名前知らない」


 二人は視線を少女に向ける。

 言外に名前を聞かれた少女はワンピースをキュッと握りしめながらおずおずと名を告げた。


「アリス、です」


 少女、アリスに答えるように二人が軽い自己紹介を終えるとライトはウィンリィにここまでの事情を話す。


「えっとな。アリスちゃんの母親がずっと寝込んでいて、あの林にあるらしい薬草が必要なんだそうだ」


「んで、金がないからついでだし取ってきてくれ、か?」


 ライトは肯定するように首を縦に振る。

 話の内容と事情は理解できたはずだが、ウィンリィはしばらく考え込むように唸った。


「別にいいだろ?

 確かに報酬はないけど、どうせついでだしさ……」


 彼女が悩むのはわかる。

 報酬もないのにやる、と言うのは得などないのはわかりきっている。


 しかし、それでもライトは何とか彼女を説得しようと声をかける。


 アリスはライトのマントを指先で摘みながら、訴えるような視線を涙目でウィンリィに向けていた。


「……いや、やるつもりではあるよ?

 嫌だって言ってもお前はやりそうだし」


 その言葉を聞きライトはホッと一息つき、胸をなでおろす。

 そして、湧いた疑問を口にした。


「じゃあ、悩むことなんてないじゃないか」


 ウィンリィは厳しい顔をしながら小声で自分が危惧していることを言う。


「そうなんだが。両親がどう思うだろうと考えてな」


「あっ!あぁ〜」


 ようやく察しがつき頭を抱える。


「確かに、そうだな……」


「だろ?」


 気が付いている二人はため息をつくがアリスは意味がわからず、彼らの顔を交互に見ていた。


 ライトの評判はあの噂の影響でかなり悪い。

 普通に歩いているだけで睨まれることなど数えるのが面倒になる程だ。


 ギルドに入っても殺気が多分に含まれた視線を送られるだけ。

 剣の柄を握り、何かあればすぐに斬りかかれるように構える者までもいる。


 そして、それは先ほどのギルドでも変わりはなかった。


 ライトが入ってくるなり、一瞬で場の空気が張り詰められたものに変わった。


 そんな者が自分の子どもと関わりを持っていると分かれば親は決していい顔はしない。


 たとえ病気で伏せていようとも。

 いや、自分がまともに動けない状況ならばなおさらその感情は強いだろう。


「えっと、お父さんは?」


「お父さん、副都に仕事に行ってる。

 帰ってくること、ほとんどない」


 この世界でも出稼ぎ、と言うのはさして珍しい事ではない。

 男は副都か王都に行き仕事をする。残された者は内職、と言うのがベターだ。


「出稼ぎか……手紙は?」


「一週間前に出したけど……返事、まだ」


「副都なら返事が返ってくるのは早くてもあと二週間近く後だな」


 ライトは覚悟を決めるように息を吐き、ウィンリィを強く見つめる。


「ウィン、アリスの母親に会いに行こう」


「はぁ!!?おま、それ分かってんのか?」


「わかってるさ。

 でも、さすがにこの子の親に秘密にするわけにはいかないだろ?症状もわからないし」


 ウィンリィは呆れたようにため息をつく。


「そうだな……わかった。アリスちゃん。お家まで連れて行ってくれるかな?」


 アリスは嬉しそうに一度頷くとライトの手を握り、急かす様に引っ張る。


「こっち!付いて来て!」


 二人はその変わり様に少し押されながらも彼女の後を追って走り出した。

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