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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第四章 第一節 抗う者たち

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約束


 ライトはそれから白銀の右腕である【ヌァザの腕】と作られたマナリアの目である【ラマナの瞳】について説明をしていたが、ナナカにとって重要だったのはマーリンという存在についてだ。


「マーリンさんって……」


 小さく「もしかしてかわいい人なのかも」と続けようとしたところでナナカは口を塞ぐ。

 なんとなくこれを言えば負けを認めることになってしまうような気がしたからだ。


 少し妬いてしまうところがあるがマーリンがいなければライトはまた捕まっていたか、死んでいたかのどちらかであるのはたしか。


(会った時はお礼言わないと……でもーー)


 ナナカは膝を抱えて固いベッドに倒れこんで自問する。

 なぜこうもライトと同じ時を過ごせないのだろうか、と。


 彼は旅をしているのだから同じ場所、同じ時を過ごせないのは当然と言えば当然。

 だが、それにしてはいつも隔たりがあるような気がしていた。


 そしてその間、彼の側にいるのは自分ではなく他の誰かだ。

 それも男性ではなく、女性というのもナナカの内に妙な焦りを覚えさせる。


「ん? どうした」


 しかし、意中の相手は心の内の焦りなど全く悟っておらず、いつもの調子で声をかけてきた。


 変わらない彼に安心はすれど心配もする。身勝手だとわかっているがほんの少しこのモヤモヤをぶつけたくなった。


「ねぇ、光ちゃん。

 光ちゃんはさ。好きな人って、いるの?」


「はぇ?」


 全く予想していなかった方向性の質問にライトは素っ頓狂な声を漏らした。


 同時にナナカは気恥ずかしさとこの質問のせいで自分の想いに気が付かれるのではという不安から隠れるようにさらに丸まる。


 丸まりながらもちらりとライトの様子をうかがったその時、ちょうど彼と目が合った。


 少し気まずい空気が流れたが、それを自虐的な笑みで吹き飛ばしたライトはポツリと言葉を漏らす。


「わからない……。

 またウィンたちと旅をしたいって思っているけど、それが恋愛感情なのかは俺はわからない」


「そう、なんだ」


「ああ。でも、どうして急に?」


「ううん。なんとなくだよ。

 光ちゃんがこの3年誰か好きな人ができたならその人に光ちゃんの昔のこと話さなきゃいけないじゃない?」


「や、やめろよ。そんな小っ恥ずかしいこと……」


 顔を少し赤くして頭を抱えたライトに対してナナカはいたずらが成功し、スッキリした気持ちで彼へと笑いかける。


 そして、立ち上がって扉の方へと向かいながら言う。


「ありがとう。マーリンさんのこと教えてくれて」


「別にいいさ。それに俺の方こそありがとうだよ。

 こんなことに巻き込んで」


 その言葉で妙案が浮かんだナナカは特別深く考えることもなくそれを口にした。


「……あー、ならさ。この戦いが終わったら私も光ちゃんの旅について行っていいかな?

 もしかしたら回ってる内に元の世界に変える方法も見つかるかもしれないし」


 果たしてライトのいない世界に戻るかどうか怪しいところではあるが、悟られないためにはそう言い繕うしかない。


 想いを伝える勇気が出ない自分への落胆、ライトを欺いている罪悪感の中でナナカは答えを待つ。


 そんな中で返ってきた答えは彼女にとっては「やはり」と言うものだった。


「ああ、もちろん。一緒にいろんなとこ行こうぜ」


「……っ、うん! 約束だよ。光ちゃん!」


 2人は暗い現在の先にあるであろう明るい未来に心を躍らせ、笑みを浮かべた。


 その未来の景色を見るにはこの戦いをなんとしても生きて終わらせる。


 互いに心の中で改めて言い聞かせ、その夜は別れた。


◇◇◇


 翌日、ドワーフの村の外に出た彼らは木々の影で円になっていた。


「ゼナイドさん、本当に大丈夫?」


「私をそう見くびるな。と言いたいどころだが、説得力がないな」


 ライトの質問にそう肩をすくめながら答えたゼナイドだったが、ふっと笑みをこぼして言葉を続ける。


「しかし問題はない。2人の処置と貴様がここまで案内してくれたおかげでな。

 不安なら軽く打ち合うか?」


 余裕綽々といった様子で投げかけられた誘い。

 いつもの物言いと本気が3割ほど混ざっている雰囲気を受けたライトは笑いながら首を横に振った。


「いえ、遠慮しときますよ。これから行動開始ですし」


「賢明な判断だ」


 軽くそんな会話を交わしたゼナイドは咳払いを1つし、ナナカたちの顔を順に見回してから口を開く。


「では、現状の確認を改めて行うぞ」


 最終目的はディザスターの討伐。

 方法はマーリンが考案している策があり、それによって行う。


 ライトたちがすることはそれに必要な物、協力を得ることだ。


 必要な物はマーリン曰く古代マナリアが作り出した最高峰の剣であり、それ故におとぎ話にも使われたエクスカリバー、ガラディーン、アロンダイトの3本。


 エクスカリバーはナナカが所持したまま、ガラディーンは王都セントリアと所在はわかっているがアロンダイトだけは不明だ。


 そこでレーアが確認するようにライトへと視線と言葉を向ける。


「アロンダイトの所在。察しがついているというのは本当なんですね?」


「ああ、彼らに色々なところをあたってもらったけど情報がなかった。

 市場に出回ってない。出回った記録もないとなればあとあり得るのはマナリアの村ぐらいだ」


「古代マナリアたちが持ち出して、そのままってことね〜?

 でも、マナリアの村って入れるのかしら〜?」


「普通は無理でしょうけど、俺にはこれがありますから」


 ライトがウィスに答えながら出したのは左腕。より正確にはその手首についているネスクの牙を使ったアクセサリーだ。


「これをもらったマナリアの村へ行って話をします。

 そこから他のマナリアたちへの協力を求めてもらえるように掛け合ってもらうつもりです」


 知らなければ何の変哲もなく、何にもならないアクセサリーにしか見えないが、これはマナリアの村長に認められた証だ。


 知っていれば間違いなく奪われていたであろうこれが手元に残っているあたり、ネスクの牙の価値を少なくとも王都の騎士や貴族たちは知らなかった。


 これは幸運だった、とライトは思いながらゼナイドへと視線を返す。


「うむ。ではアロンダイトの件はライトに任せる。

 次は協力者……いや、組織と言ったほうがいいか。についてだが」


 協力者というのはライトがずっと“彼”と言っている存在であり、ゼナイドが3年前に紹介した人物。組織は彼を代表とした小規模の組織のことだ。


 その人物の名前はバウラー。

 オーガ群討伐戦時に初めてライトに出会い、戦う理由を問いかけたハルバードを振るう男性である。


 彼は現在、北西の村に拠点を置いており、ライトはそこへ向かう途中でゼナイドたちを助けた。


「彼のところへは、私が行こう。

 私のことも直接話さねばならぬしな」


 ライトには一瞬その言葉を躊躇ったように見えたが途中で詰まることがなかったため、気のせいということで片付けた。


「なら、私はそっちについて行こうかしら〜」


「では、私はライトの方へ行きましょう。

 マナリアの村というのも少し気になりますし……」


「えっと、それなら、私も光ちゃんの方に」


 ゼナイドは自然に別れたグループに特別意見は内容で何も言わず、頷いた。


「では、マナリアの村へはライト、ナナカ、レーア。

 バウラーの所へは私、ウィスが向かおう」


 それぞれの目的の確認とメンバー分けは終わった。

 では、その行動を始める前にやることを片付ける。


「飛竜騎士団、まずはあれを抑えるぞ」


 どう転んでも彼らとの接触は避けられない。ならば早急に片付ける。


 それぞれが頷く中でライトは少し目を閉じて1回だけ深呼吸。大きく息を吸ったところで目を見開いた。


「ああ!」


 それは他の誰よりも想いの籠った強い返事だった。

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