表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第三章 第一節 落日の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/282

王都セントリア

 王都セントリア。

 セントリア王国の首都であり、王であるアルルハイド・フォン・セントリアナと貴族、騎士たちやその従者を中心に発展した都である。


 雰囲気としては住宅街は西副都、商業地区は東副都、城や聖王騎士団の施設はライトたちが訪れたことのない北副都にそれぞれ似ている。


「いちいち建物がでかいな」


 王都に入ったウィンリィが馬車の小窓から顔を出してそう呟いた。

 その隣にいたデフェットは同じ小窓の向こうへ視線を投げながら呟く。


「ああ、なんというか、少々息苦しさを覚えるな」


 そう、雰囲気こそ副都と似ているのだが、建物がいちいちでかい。

 3階建てが当たり前で4階、5階の建物が所狭しと並んでおり、圧迫感を覚える。


 ライトとしてもこの世界での高い建物といえば城だったため、一般住宅がここまで大きく立ち並んでいる様は少し異様に見えた。


「まぁ、首都だからな。

 限られた土地や維持のことを考えると機能が集中しどうしても人口密度は高くなる。

 なぁに、そのうち慣れるさ」


 ゼナイドの言葉に「そういうもんかね」とウィンリィは返し、椅子に座り直した。


 今ライトたちは馬車に乗り、セントリア城へと向かっている最中だ。


 東副都から王都まで馬車を使って約1週間。

 もう数台ある馬車の1つにはポーラも乗っており、ミーツェはそれに乗っているためここにはいない。


 ウィンリィ、デフェットと同じように小窓から外の景色を見ていたライトが口を開く。


「にしても、本当に良かったですよ。ここまで何事もなく辿り着けて」


「当然だ。各副都から王都までは聖王騎士団の管轄だ。

 問題などあるわけがない。あったとしても即座に対応される」


(でも、そのせいでーー)


「……そのせいで他の村は切り捨てられてるっと」


「ッ!? ウィン!」


「お前だって思っただろ。思わないわけがない」


 そう言われたライトはバツが悪そうに視線を下へ向けた。


 ウィンリィの言ったことをたしかにライトは思った。

 もっとその戦力が外へと向いていれば守れた命があったはずだ、と。


 そんな2人を見たゼナイドは小さく息を吐き、一度目を閉じてから口を開く。

 出た言葉は否定や憤りではなく、肯定だった。


「ああ、そうだ。

 貴様たちもよくやってる命の選択だ。

 全てを守ることはできない。ゆえに、選ぶ」


 王都から離れた他の村は悪く言えばある程度の換えがきく村だ。

 副都や名前がある村、街と比べれば守る価値は少ない。


「指導者が消えれば残された組織に残される道は内部分裂するか、外部に蹂躙されるかのどちらかだ。

 そして、この国の主導者は王、その王がいるのがここだ」


 騎士団のやっていることはライトたちと同じだ。


 守りたいと願ったもの、守らなければならないものを守るために、捨てられるものを捨てる。

 無理だと諦める。


 その規模が1人2人ではなく、何百何千と増えた。

 違いはそれだけだ。


「切り捨てたものばかり見るのはやめろ。ただし、忘れるな。

 今あるものを腕に抱えこめ。背中には失った存在を背負い続けろ。

 奪われたくない、失いたくないと思うのならなおさらな」


 ゼナイドはそう言い締めくくり、目を閉じた。


 そう、結局のところはそうするしかない。

 失った物があるのと同時に失わなかった物もあるのだ。


(わかってはいる……わかっては……)


 ライトは視線を小窓の向こうへと移した。

 建物沿いにはどこかへ向かう住人たちがいる。

 女性や子どもが目立つがそれは昼間という時間帯のせいだろう。


 彼らが聖王騎士団が守ったもの。

 城壁の向こうから副都をさらに超えた場所が切り捨てる場所。


 組織であってもそれを構成するのは人だ。生ある者たちだ。

 守れるものと守れないものがある。


 ライトはその揺るがない事実を改めて認識しながら流れる景色を眺め続けた。


◇◇◇


 彼がついた王城、そこには1人の少女がいた。

 その少女は到着した馬車からその少年が降りるのを見ると駆け寄り、声をかける。


「久しぶり、光ちゃん!」


「ナナカ! 久しぶりだな。

 あんまり変わってないようで安心したよ」


 ナナカはその言葉で一瞬表情に影が落ちた。

 そのことをライトが聞こうとした時、ゼナイドが彼女に駆け寄り言葉をかける。


「ナナカ。2人は来たか?」


「うん大丈夫。レーアちゃんもウィスさんも昨日来たよ」


「わかった。では、私は別件も合わせてそっちの方に行く」


「うん。光ちゃんたちのことは任せて」


 ゼナイドは「頼む」と言い、早足でポーラのところへと向かうと、言葉を一言二言かわした。

 そして、近くの騎士を引き連れるとライトたちを追い越し、城へと入った。


 横を通り抜ける際、ポーラはライトへと可愛らしく小さく手を振った。

 ライトもそれに答えるように手を振り返す。


 そんな2人を見ていたナナカはライトへと問いかけた。


「ねぇ、あの女の子どこかの貴族の子?」


「一応この国の第三王女」


「へぇ……ん? えっ!? 王女ってお姫様!?」


「そうだ」


「な、なんでそんな人と光ちゃんが一緒にいたの!?」


「あー、まぁ、その辺は移動しながらでも話すよ」


「う、うん。えっと……じゃ、ミリネさんお願いします」


 彼女の声で現れたメイドが丁寧なお辞儀をして口を開いた。


「私は皆様のお世話係の代表、ミリネと申します。

 何かあれば私や部下のメイドにお申し付けを」


 それぞれから返された返事を聞いたミリネは扉の方を手で示した。


「では、城のご案内を行いますので皆様は私に付いてきてください」


◇◇◇


 さすがは王の居城といったところか、天井は3メートル近くあり、シャンデリアがぶら下がっており、下は綺麗な赤絨毯。


 しかもそのどれもに掃除が行き届いているようで汚れもない。

 東副都の城も相当に驚いていたが、ここはそれ以上だ。


「なんつーか。まさに城だな」


 天井を見上げたり、下を見たりと御上りさんのように視線を動かすライトへとナナカは苦笑いを浮かべながら答える。


「だよねぇ。私もまだなんか慣れないもん」


「ナナカはここに来てどれぐらいなんだ?」


「今日で3日目だよ。前は西副都の方にいたんだ。

 あっちの方が私は好きかなぁ……」


 反射的に出た感想。

 それを聞いたウィンリィがナナカの腕を肘で数回突き、とある方向を指差した。


「あっ」


 そこにいるのはミリネだ。

 一応その顔に怒りの色は見えないが、ナナカは慌てた様子で頭を下げ、言葉を続ける。


「ご、ごめんなさい! あの、そういう意味じゃなくてえーっと!」


「ふふっ、いえ。怒っているわけではありませんよ。

 私もこの王城は広いと感じておりますので」


「これほどの規模だと清掃も大変そうですね」


 ミーツェも一応はメイドだ。

 どことなく同族の意識というものが湧いているのだろう。

 その言葉には心底心配するような雰囲気が感じられた。


 ミリネはそれに少し控えめに頷きながら答える。


「ええ、1日がかりですね。っと、到着しました」


 ミリネが立ち止まった先には左に3つ、右に4つの扉が並んでいた。


「ライト様たちは左手側のお部屋です」


「右側は私たちが使わせてもらってるんだよ」


「はい。いつでもお話が出来るようにとゼナイド様から要望がありましたので」


「ありがとうございます」


「いえ、では室内をご案内していきますね」


 部屋内は東副都の城とさして変わらない。

 内装の雰囲気が若干質素になった程度だが、ライトたちにとってはこれぐらいがちょうどいい。

 やはりまだ広いがこの辺りはそういう作り、ということで納得しておくことにした。


 1つだけベッドが2つあったがその部屋はミーツェとデフェット用の部屋だろう。


「では、準備ができましたらお声掛けいたしますのでそれまでごゆっくりお寛ぎください。

 また、なにかございましたら部屋にあるベルを使ってお呼び頂ければすぐに参りますのでお気軽にどうぞ」


 各部屋の案内を終えたミリネはライトたちにそう言い、丁寧にお辞儀をして彼らの前から去った。


 その後ろ姿が見えなくなったところでウィンリィは大きく背伸びをした。


「あー、やっと落ち着けるな」


 それに続くようにデフェットは肩の力を抜くように小さく息を吐くと肩を回しながら言う。


「そうだな。少し休もう。馬車とはいえ少々疲れる」


 それに「同感」っと答えながらドアノブに手をかけたライトが何か思い出したような声を漏らし、ナナカの方へと視線を向けた。


「そう言えば準備ってなんかやってくれるのか? 決起会的な」


「えっ? もしかして、みんな聞いてない……?」


 恐る恐るで出された質問にライトたちはそれぞれ顔を見合わせる。


 ゼナイドからはそれらしいことはなにも聞いていない。

 一緒の馬車に乗っていたライトが知らなければミーツェもまた知る由もなく、全員が首を横に振った。


 それを見たナナカは頭を抱えながらポツリと言う。


「王様と謁見するんだって」


「「「……は?」」」


 そんな驚きの声ではなく疑問の声が彼らの口々から上がり、辺りに静寂が訪れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ