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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第三章 第一節 落日の時

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202/282

東副都、到着

 ポーラと再会し、東副都に向かい始めてから1週間。

 ここまでは予定よりも少し速いぐらいだ。

 ライトたちだけならばそれで丁度良いのだが、今は旅に慣れていないポーラがいる。


 彼女にとっては半日近く歩き続けるというのは辛いものがあるはずだ。


「ポーラ様、辛くないですか?」


「大丈夫ですわ」


 しかし、ライトの問いかけにポーラは笑顔で答えた。

 声や顔には生気があるあたり、彼女の言葉に嘘はないのだろう。


 だが、少し無理をし始めているようにもライトには見えた。

 そろそろどこかでしっかりとした休みを入れたいところだ。


 そう思ったところで先頭を歩いていたミーツェが左方向を指差した。


「ライト様、村が見えました。一度あの場所で物資を補給しましょう」


「えっ?」


 反射的にライトは声を上げた。

 ライトたちの旅は基本的に周りにいる動物を狩るなり、自生している植物を食べることが多い。

 保存食はあくまでもその補助のためのものだ。


 戦闘もしてないため武器を研ぐことや、矢を創る必要がないため補給する必要はない。


 そのため、物資にはまだまだ余裕がある。


(あっ、そうか)


「そうだな。ポーラ様、あの村で1日休みます。

 到着まで少し遅れますが、すみません」


「い、いえいえ。構いませんよ!

 はい、補給も重要なことですから」


 ポーラが頷いたのを見てライトはミーツェに駆け寄り、小声で言う。


「ありがとう。助かったよ」


「いえ、私たちも慣れないことをしているのです。

 休みは取りすぎるぐらいが丁度良いですからね」


「そうだな」


 ライトたちはそれから東副都への道から少し外れ村へと立ち入った。


◇◇◇


 たどり着いたのは東村第18。

 特別な特産品などはなく、よくある農村だ。


 もちろんギルドや雑貨店などはあるがまっすぐに向かったのは宿屋だ。

 受付でポーラに気が付かれるとも思ったが、意外とすんなり部屋を取ることができた。


 取れたのは6人部屋の大部屋。

 余ったベッドにそこにそれぞれ武器を置いたところでようやく息をついたライトが言う。


「意外とバレないものなんだなぁ」


 王族であるポーラがいることがバレれてしまえば混乱するのは避けられない。

 かといってこっそりと部屋に入れているところや入れたところを見られるのも別に面倒ごとを生んでしまう。


 そこで彼らが考えたのが何も隠さず、堂々と入る、ということ。

 それは功を制し、宿屋の者にポーラ本人であることを悟られず部屋を取ることができた。


「そうですね。少し拍子抜けしましたが、なんだか少し楽しかったですわ」


 念のためでまとめていた髪を解いたポーラはベッドに腰を下ろしながら微笑んだ。


「なんだか騙しているような気がして少々心苦しいところもありますけど」


 困り気味に眉を寄せたポーラは今度はウィンリィたちに問いかける。


「皆様はこれからお買い物に行かれるのですよね?」


「ん? ああ、そうだな。

 あ、ポーラ様はここにいてくださいよ?」


「わかっておりますわ。皆様、いってらっしゃいませ」


 その言葉を受けたウィンリィはミーツェ、デフェットを連れて部屋から出た。


 彼女たちの姿が見えなくなったところでポーラは深く息を吐く。


「疲れましたか?」


「ふふっ、はい……」


 申し訳なさそうにポーラは言った。

 おそらく彼女はこの村に立ち寄った本当の理由を察している。


「仕方ないですよ。私も旅を始めてすぐの頃はかなり辛かったですからね」


「まぁ。ふふっ、ライト様もそのような頃があったのですね」


 ポーラはそういうと一瞬、どこか遠くを見つめた。

 かと思えば羨望の眼差しで彼へと問いかける。


「楽しい、ですか?」


「辛いことはありますけど……はい」


「それは……とても良いことですね」


 そう言った彼女の顔は変わらず笑顔のままだったが、声音はどこか儚げなものだった。


◇◇◇


 村に泊まってから1週間が経った。


「あれが東副都です!」


 東副都トイストは交易都市として発展した副都だ。

 ガーンズリンドも港があるため似たところがあるが、違いは王都に近いということだ。


 商人たちが作り上げ、勝手に発展していったのがガーンズリンド。

 貴族たちが海外の貴族たちと顔を合わせるために作り上げられたのがトイスト。


 2つの都市の違いはその程度、というのがポーラの言葉だった。


 そのまま歩き続け、街に入る門の近くまで来たところで女性の騎士が駆け寄ってきた。

 念のためライトがポーラは自分の背に隠したところでその騎士が問いかける。


「ライト様ですね?」


 彼女の顔に見覚えはない。

 だが、そう聞いてくる辺りおそらくゼナイドの関係者だろう。


 そう思ったライトが頷くとホッと胸を撫で下ろしながら言葉を続ける。


「よかった。なかなか見えないので少し心配しておりました」


「それは、すみませんでした」


「いえ、ではゼナイド様のところへご案内します。

 ライト様、ウィンリィ様……おや? たしか旅は4人でしているということでしたが、そちらの方は?」


 ライトが本当のことを言おうかどうしようかと迷っていたところでポーラは彼の背後からスッと現れ、その顔を騎士に見せた。


「なっ!? いや、まさか!!」


「はい。私はポーラ・フォン・セントリアナ。

 訳あってライト様たちの護衛を受けておりました」


 あまりのことに騎士は固まっていたが、すぐに我を取り戻した。

 即座に片膝をつき、言う。


「も、申し訳ありません。ポーラ様!

 まさか御身がこの場所に居られるとはおもわずーー」


「構いませんわ。

 案内をお願いできますか?」


「は、はい! こ、こちらへ」


 立ち上がった騎士は言葉と行動を固くさせながら東副都の門番の騎士に一言二言告げると再び案内を始めた。


◇◇◇


 街の姿としては西副都と大きな差はない。

 強いて言うならば建物1つ1つが大きいということだろう。


 本来ならば宿を探すことなのだが、今回は違う。

 騎士について行き、辿り着いたのは東副都の王が住む城だった。


 大きな玄関扉を入った先の大広間にいたのは執事と3人のメイド。

 ライトたちの姿が見えるのと同時に頭下げた。


 そして再び顔を上げたところで言葉を失った。


「ポ、ポーラ様!?」


「な、なぜこの場所に!?」


 それぞれが驚愕の表情と言葉を浮かべた。

 その混乱から真っ先に立ち直ったのは執事の男性だった。

 未だ立ち尽くすメイドたちへと強い語調で指示を伝える。


「コンラッド様にすぐに報告を! ゼナイド様にもだ!

 メイドたちへもすぐに声をかけろ。部屋を1つ大至急整えろ。料理人たちにもだ!」


「「「はい!」」」


 その言葉ですぐにメイドたちは慌ただしく走り出した。


 それを見送った執事は仰々しいお辞儀をして続ける。


「お見苦しいところをお見せしてしまい。謝罪いたします」


「いえ、突然訪れた私に責があります。

 そう頭を下げないでください」


「は、はい……」


 おずおずと顔を上げた彼を見て満足気に頷いたポーラは笑みを浮かべた。


「では、私たちの案内を頼めますか?」


「も、もちろんでございます。どうぞこちらへ」


 ポーラが城に入って1分も経たずに慌ただしくなった状況を見たライトたちは改めてポーラが王族であるのを認識したのだった。


◇◇◇


 ゼナイドは少し豪奢な椅子に座り、柱時計を見つめていた。

 ライトたちならばもうとっくに着いていてもおかしくはないはずなのに彼らが姿を見せる気配がない。


 門には騎士を1人待たせているし、門番の騎士たちにもライトたちの特徴は伝えている。

 見落とすのも考えにくい。


 となれば何かあったと見るのが当然だろう。


(彼らの実力を考えれば問題はない。そう思いたいところだが……)


 ここは念のためこちらからも誰か向かわせた方がいいのか、と考え始めた時だった。


 扉がノックもなしに開け放たれた。

 驚いたゼナイドは目を見開き、そこを見る。


 礼儀知らずの者は彼女が門に待機させていた騎士だ。

 今は肩で息を繰り返している。


 そこからただ事ではないことが起きた、と察したゼナイドはその不躾な姿に何も言わず、代わりに質問の言葉を投げた。


「どうした」


「はぁ……はぁ、っ報告! ライト様たちが到着なされました!!」


 なんだ、そのことか。

 そう思ったゼナイドだが、同時に何か嫌な予感がした。


 どっと浮かんだ冷や汗、それを拭うことも忘れ、ゼナイドは言葉を待つ。


「ポーラ様も一緒です!」


 それを聞いたゼナイドは聞き返すこともなく、部屋を飛び出した。


 この城は広い。当然ながら応接室も複数ある。

 だが、この国の第三公女である彼女を待たせるならば1番上のランクの部屋しかない。


 その確信を胸にゼナイドは真っ直ぐにその部屋へと向かった。

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