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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第三章 第一節 落日の時

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お転婆王女

 自分の状況をライトから聞かされたポーラは困ったように眉を八の字にして戸惑い気味に確認するように呟く。


「誘拐、ですか……」


 彼女の反応はそれだけだった。

 焦る様子もなければ特別混乱しているようにも見えない。

 この状況に慣れているわけでもないはずなのにその反応だ。


 拍子抜けした様子でライトは反射的に聞き返す。


「あの、それだけ、ですか?」


「それだけ、とは?」


「いえ、その、俺たちが間に合ったからなんともなかったですけど、命の危機に晒されたんですよ?」


「それはそうですが……今はライト様たちがおりますし。

 また助けられて、守られるというのは少々思うところはありますけど、不安はありませんわ」


 信頼を寄せられるのは悪い気はしない。少なくともライトはそれに応えたいと思った。

 そのため、彼はゼナイドをイメージして片膝をつき、こうべを垂れながら言う。


「わかりました。では、この不肖ライト、持てる全力でポーラ様をお守りいたしましょう」


「はい、お願いいたしますわ。ライト様」


 慣れない所作だったが、ポーラは満足したようで心底からの笑みを浮かべた。


 話が落ち着いたのを感じたデフェットは咳払いを1つして話を切り出す。


「さて……では、話が落ち着いたところでだ」


「はい。これからどうするか、ですね」


「まぁ、そう深く考えることはないだろ。

 こいつ(盗賊)と馬をギルドに持っていく」


 ポーラはともかく盗賊は早々にギルドに差し出したいし、馬も維持を考えると手元に残すのは難しい。

 ウィンリィの言う通り、どちらも早々に手放すべきだ。


「だな。じゃ、誰が連れて行くかだけど……これは俺ーー」


 ライトが手を挙げようとしたがそれをウィンリィが掴んで止めた。

 わけがわからずきょとんとする彼にため息混じりに彼女は言葉を続ける。


「いや、お前さっき守るって言ったばかりだろ。

 絶対に残ってろ」


「私も同意見だ。連れて行くのは私とウィン殿で十分だろう」


「は、はい……」


 ウィンリィとデフェットの剣幕に押されたライトはコクコクと頷いた。


 いつものその様子を見たミーツェはどこか「仕方ない」と言わんばかりに首を横に振ると確認を始める。


「では、ウィンリィ様、デフェットは盗賊と馬の移送を。

 ライト様はこの小屋で待機、ポーラ様の護衛。私は周辺を少し探索します」


「わかった。んじゃ、早速行こうか。ほら、行くぞ」


 ウィンリィに促されるままに盗賊は立ち上がり、彼女に続いて小屋から出た。

 デフェットも同じく外に出ようとしたがその背中をふと思い出したミーツェが呼び止める。


「あ、待ってください。

 ポーラ様用に動きやすい服を3着ほど買ってきてください。

 流石にあのフリルは動く分には邪魔になりますから」


「買うのは構わんが、ポーラ様はそれで……?」


 デフェットには貴族は権威を誇示するものだというイメージがあった。

 権威を示すためには相応の格好をするもので、庶民が着るような服は着たがらないと思っていたのだ。


 そんな先入観から来た懸念だったがポーラは悩むことなく口を開く。


「はい。構いませんわ。

 そもそも私は皆様に守られる身、皆様の指示に従いますわ。

 それに、正直この格好は快適とは言えませんからね」


 ポーラはそういうと着ているドレスを見て苦笑いを浮かべた。


「と、言うことです」


「……わかった」


 答えたデフェットは次にポーラの方へと視線を向けて付け加えるように言う。


「ですが、センスにはあまり期待しないでください」


 そう言い残し、彼女はウィンリィに続くように小屋を出た。


 その少し雑に去った背中へと手を振り、見送ったポーラは悲しげな顔を一瞬浮かべたが、すぐに元の調子に戻した。


「では、ライト様……と、そちらのお方は?」


「失礼いたしました。

 私はライト様の元で従者をしております。キャッネ族、ミーツェと申します」


 言いながら頭を下げた。

 その迷いのない綺麗な所作を見たポーラはどこか嬉しそうに目を輝かせる。


「まぁ、ふふっ、ライト様もいろいろな経験をなされたようで。

 その辺りもお話が聞けると嬉しいですわね」


「ええ、もちろん構いませんよ」


「私もお付き合いしますが、それはウィン様が帰ってきてからでも遅くはないかと」


「ああ、そうでした!

 まずは周辺の確認でしたね」


 ライトとミーツェが肯定するため頷くと、ポーラは表情をより一層輝かせながら宣言した。


「では、行動開始、ですわね!」


◇◇◇


 それから数時間後、少し陽が傾きかけた頃。


「ーーなんでそうなってんだよ」


「「え?」」


 ギルドへと盗賊を移送し、馬を売ったウィンリィたちが小屋に戻ってきて最初に見た光景。

 それはライトが木材で椅子を作っているところだった。


 作ることに疑問はあまりない。

 椅子があと3脚足りないのはウィンリィとデフェットも知っている。


 問題はそれになぜかポーラも加わっていることだった。

 公女にやらせることではないのは明らかなのだが、ライトどころか公女本人でさえも反射的に出されたウィンリィの言葉にキョトンとしている。


「なぜ、ポーラ様も椅子の組み立てをしてるんだ?」


「本人がやりたいって言ったから」


「私がやりたいと言いましたから」


 2人の答えはほぼ同時だった。

 質問したデフェットと隣で聞いていたウィンリィは揃って頭を抱えた息を吐く。


 これ以上の追及は長くなると察してか、デフェットは意識を切り替えるように咳払いをしてポーラに言う。


「着替えを買ってきましたので着替えてください。

 今着てる服はこの袋に」


「はい。わかりました!

 では、着替えて参りますね」


「私もお手伝いいたします」


「まぁ、ありがとうございます!」


 2人が小屋に入るのを見てウィンリィは改めてライトに問いかける。


「もう1回聞くぞ。なんであんなことになったんだ?

 椅子なんてお前がチャチャッと創ってしまえばいいだろ」


「まぁ、それはそうなんだけど、なんか空気がこそばゆくって……。

 んで、小屋の隅に木材が積まれてたからさ。

 椅子ぐらいなら作れそうって言ったら興味持ったみたいで」


 その言葉を聞いてウィンリィは確信した。


 ライトとポーラは似た性格をしている。

 それはハルーフと話していた時も感じたが、ポーラの方はよりアグレッシブだ。

 すぐに行動に移せるのはさすがは貴族、王族と言えばいいのだろうか。


「これだから同じタイプが揃うと……」


 やれやれと言わんばかりに肩をすくめ、首を横に振るウィンリィ。

 しかし、あることに気が付き問いかける。


「そういや、ミーツェはどうした?

 こんなこと真っ先に止めそうなのに」


「止めたよ? 怪我をすると責任が取れないって。

 でも、ポーラ様が『つまり、怪我をしなければよろしいのですね』って言ってさ。

 刃物を触らないって条件を取り付けて押し切ったんだよ」


「……なるほど。ポーラ様の行動力はお前以上だな」


「ああ、正直俺も驚いたよ。

 よし、完成」


 ライトは額に浮かぶ汗を拭うと立ち上がり、椅子を玄関扉の横に置いて続ける。


「変わらないものを見続けたりするのって退屈だからなぁ。

 たぶんその反動じゃないか。あの行動力は」


「知ってる風だな。なんか聞いたのか?」


「いや、何も。俺がそうだったってだけだよ」


「退屈、ねぇ。

 退屈になる程度で命の心配をしなくていいなら断然そっちがいいと思うんだけどな」


「残念ながら退屈な時はそれがわからないんだよ」


「そういうもんか?」


「そういうもんだよ」


 ウィンリィが「ふーん」と相槌を打ったところで上から1頭のイノシシの死体を抱えたミーツェが降りてきた。


 彼女はウィンリィを見て「ああ」と口を開く。


「やはりウィンリィ様でしたか。おかえりなさいませ」


「ああ、ただいま。それは夕飯用か?」


「はい。ちょうど1頭いましたので探索ついでに狩ってきました。

 ポーラ様とデフェットは中ですか?」


「うん。今着替え中。周りはどうだった?」


「さして大きな林でもなく、なにか特異的な生物がいる痕跡も見つけられませんでした。

 すでに盗賊がいたせいか、他に人がいそうな形跡もありません。比較的に安全な場所でしょう」


「わかった。ありがとう」


 ライトからの礼を受け取ったミーツェは軽く頭を下げた。

 そして再び顔を上げて口を開く。


「では、今のうちに私はこれを捌いてきます。

 ウィンリィ様、お疲れでしょうが手をお借りしてもよろしいでしょうか?」


「おう、任せとけ」


 そうしてミーツェはウィンリィを引き連れ、小屋の裏へと向かった。


 2人を見送ったライトも料理の準備をするために動き出した。

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