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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第二章 第三節 フラーバへの道

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不穏の発見

 ゴブリンとの戦闘を終えたライトたちは廃坑内の調査を再開していた。

 あれからゴブリンが出るかもと思い警戒しているが、今の所そんな様子はない。


 ウィンリィから怒りの鉄拳を頭に受けたライトはその部分をさすりながら疑問を口にする。


「なんだったんだろうな。あのゴブリン」


「そうだなぁ……」


 それを受けたウィンリィは頭の中の記憶や印象を整理するように呟く。


 そこには先ほどまでの危険な真似をしたライトへの怒りはないように見えない。

 かわりにその問題は終わった、と表すかのようにいつもの様子で彼女は続けた。


「明らかに普通のゴブリンじゃなかったな。

 武器に振るわれるんじゃなくて、きちんと扱ってた。知能もあるように見えたし。

 もしかして、魔王が手を加えた新種、とか?」


「姿形は同じでしたよ?

 死体も調べましたがこれといった際は見つけられませんでしたが……?」


「そもそもこんなところにまで魔王の手が入っているのは考えにくい。

 新種にしてもここで見つかるのはおかしい」


 デフェットの言う通りここは北東とはいえ北の最前線からかなり離れた場所。

 もし前線が破られたのならばそういう噂の1つも聞かないというのはおかしな話だ。


 そして、ミーツェが言った通りゴブリンとの特別な違い。例えば、臓器があったりツノがあったり、筋肉が付いていたりなどの違いはなかった。


 そうなれば自ずと答えは絞られる。


「突然変異か……誰かが手を加えたか」


 考え込むために軽くうつむいていたライトへと一斉に視線が集まる。

 それを感じた彼は顔を上げて3人へと続けた。


「突然変異ならまだいい。どうしようもないからな。

 でも、誰かが手を加えているなら、その誰かを止めなきゃならない」


「誰かって……そもそもそんな事、できるのか?」


「不可能じゃないだろ。魔王が作ったんだろ?

 ならそれを改造することもできる……ん?」


 ウィンリィの質問に答えたところでライトの思考に何かが引っかかった。

 具体的にはわからない。だが、直感が「待て」と言っている。


 それを察したのかミーツェが首を傾げながらライトへ声をかける。


「どうかなされましたか?」


「えっ、あ、いやなんでもない」


 ひとまずこの違和感は心に留めておくとして今は目の前のことだ。

 ライトはそう心の中で呟き、提案する。


「とにかく裏に何かいるなら取り押さえるのが今後のためだろ」


「ふむ。私は主人殿に同意するが、それもこれもここを調べ終えてからだな」


「ああ、面倒ごとにならないのを祈ろう」


 ウィンリィはそう呟いたが、得てしてそういう時は面倒ごとが起こるのが常である。


◇◇◇


 そのことを表すかのように、あれからさらに探索すること30分。


 他のゴブリンと遭遇することはなかったが、代わりに地面にチョークのようなもので描かれた魔術陣を彼らは見つけていた。


 半径5メートルの大きな円の内側にこれでもかと描かれたルーン(古代マナリア語)や複雑な模様。

 雰囲気から止まっていることはわかるが、普通の魔術ではないことはそれに疎いライトやウィンリィでもわかった。


「魔術陣、だよな?」


 だから、訝しみながらライトはデフェットへと質問していた。


 彼女はコクリと頷いたが、考え込んでいるのかすぐに言葉は帰ってこなかった。

 5分ほどして結論を出せたのか、デフェットは口を開く。


「これは転移の魔術陣だ。間違いない」


 それを聞きすぐに反応したのはライトだ。


「まさか!? またナナカみたいに!」


「いや、それは考えにくいだろ」


 即座に否定したウィンリィは地面に描かれた魔術陣の縁を軽く撫でながら呟くように続ける。


「よくわからないけど、ナナカみたいな世界を超えるような魔術陣ってそんなバンバン作れると思うか?」


「そうですね。ミリアス様たちの言葉からの推測ですが、元々のものよりもさらにコストがかかるようですし」


「ああ、転移陣は術者を最低でも20人集め、1人2人出すのが限界だ」


 それがこの世界に転移魔術がありながらも活用されていない理由だ。


 転移陣は陣を描くことが難しく、ようやく描けたとしても起動に膨大な魔力を必要とするため、大量の術者を必要とする。

 そこまでして呼び出せるのは1人2人が限界。


 コストに見合わないため、活用されることがなく、研究費や素材もバカにならないため、ほとんど研究もできずにいるというのが転移魔術の実態だ。


「話を戻そう。ゴブリンはこの転移魔術でここに来た可能性が高い」


「なるほど、あの2体のゴブリンは陣防衛用のやつってことか」


 腑に落ちたようにウィンリィは呟いたが、すぐにその事実に気がつき、ハッとしたような表情を浮かべた。


「ん? ちょっと待て……それって、魔王の配下が入ってきてるってことか?」


「もしくはセントリア王国に魔王の息のかかった者がいる可能性もありますね」


 つまりはそういうことだ。

 しかも転移は数名でできる規模ではないことや準備のことを考えると、それらの数も決して少なくはないことが予想できる。


「これ、かなりまずくないか?」


 ウィンリィの言う通り、まずい。


 状況的にそう言うしかない。

 かと言って下手にここのことを他人に漏らせばそのままその人を巻き込むことになる。


 加えてゴブリンを倒したことで遠からず、ここにライトたちかどうかは分からなくとも、誰かがきたことは敵にバレるだろう。


(そうか……もしかして西のゴブリンたちもこれで転移してきたのか?)


 ということは魔王の配下はすでにセントリアナ王国全域にいるという可能性まで出てくる。


 しかし、あの時はこのようなものを見つけた記憶はない。

 もしかすると詳しく探せば見つけられたかもしれないが、あの時はそんな余裕はなかった。


 可能なら今すぐに戻り、確認したいところだが、目の前のこれを放置するわけにもいかない。


 これがあの惨状を生むきっかけとなるのならなおさらだ。


 ならば、とライトは提案を投げかける。


「……とりあえずこれは壊しとくか?」


「その方がいいだろう。念のためな」


 デフェットの同意の言葉。

 彼らに残す理由はないため、それに反対する者はいなかった。


「よし、グランド・アーム!」


 ライトの詠唱に反応し、地面が隆起し、土の柱が伸びたかと思うとそれは巨人の手を作り出す。

 土塊から作り出された手は地面を熊手のようにガリガリと削り始めた。


「しばらくしたら勝手に崩れるから俺たちは今のうちに離れよう」


「ああ。だが、村人への説明はどうする?」


「ゴブリンの死体を持っていき、それがいたことを説明しましょう。

 実物を見せれば村の者たちも安心するはずです」


「ミーツェの案以外にあるか?」


 ライトのそれは言外に「転移陣のことを話すか?」という意味が含まれた最終確認である。


 当然、巻き込むようなことに頷くウィンリィとデフェットではなく、彼の提案に首を横に振ることで答えた。


 そうして彼らの行動は、転移陣のことに関しては内密に、ゴブリンたちの死体を見せてそれが住み着いていたことを村人に説明するということで決まった。


 追加で頼んだ荷馬車がいつ出るかは分からないが、この村を早く出ることもその時に決まる。


 行動が決まったのならばあとは動くだけ。


 2体のゴブリンの死体をデフェットが雑に拾い上げると彼らはその廃坑を出て、村へと向かった。

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