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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第二章 第三節 フラーバへの道

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新たな目的地

 食後に頼んだコーヒーに息を吹きかけ、冷ましていたナナカがふと思い出したように「あっ」と声を漏らした。


「ん? どうかしましたか?」


「いや、すご〜く今さらなことなんだけど、魔術師と魔導師の違いってなに?」


「……え?」


「あっ、それ俺もきになる。普通にみんな言ってたけど何が違うんだ?」


 驚くというよりも常識を疑っているような顔で2人の顔を数度見たレーアは自分を落ち着かせるように咳払いをした。


「そういえば、2人は別の世界から来たのでしたね。忘れていました」


 しかし、と区切りキッと問いただすような鋭い視線をナナカへと向ける。


「そっちの人はともかく……ナナカ、貴方には教えましたよ」


「えっ? あ、あー、そうだっけ? あはは」


 頭を掻き、はぐらかすような苦笑いを浮かべながら記憶を探るがそんな説明は出てこない。

 なんとなく「そんなことで」と思ったような気がする程度だ。


 一方で「そっちの人」と軽く片付けられたライトはしょんぼりした表情と雰囲気でコーヒーに口をつけている。


 それぞれの反応に呆れたようなため息をレーアは吐いた。


「魔術師と魔導師の違いは行っていることで分けられます。

 ただ魔術を使うだけならば魔術師、それを教え導く者になれば魔導師、といった感じですね」


 それを聞いてあることが頭に浮かんだライトは小さく手を挙げた。

 視線で「なにか?」とレーアに聞かれてから彼は浮かんだ疑問を口にする。


「違いってそれだけなのか? なんかこう、資格とかは?」


「魔導師を名乗るだけならば、必要ありません。研究ともなれば必要にはなりますけど」


 研究は設備を揃えるのにも素材を集めるのにも膨大な資金や土地、人手が必要となる。

 そのため、王国や貴族たちからの支援を受けて行うのが基本。


 それらの支援を受けるための“信用”が魔導師の資格ということだ。


「ちなみに魔“導”師の資格になるのは他の人に研究の内容、魔術の説明をするからですね。

 2つを比べてどちらかが偉いとかそういった意味ではなく、言葉の意味に合わせて作ったのです」


「「へー」」


「本当に聞いてましたか?」


「「聞いてた聞いてた」」


 疑いの目と言葉を向けられた2人は同時に答え、カップを傾けた。

 レーアは「どうだか」と呟くと目を閉じ、デザートで頼んでいたケーキを口に運んだ。


 空になったカップの底をライトは見つめていた。


(魔導師、か……)


 頭に浮かんでいるのは南副都サージで出会ったホーリアだ。


 魔導師と聞いて真っ先に思い浮かんだ人物が彼だった。


 どこまでも純粋に「世界を救いたい」と願い、行動し、狂ってしまった男。


 生物の思考を統一すれば世界が平和なると信じ、その目的のために魔術でシリアルキラーという白い怪物を作った人物。


 あまり思い出したくない光景が浮かび、表情を曇らせたライトへとナナカが顔を覗き込みながら問いかける。


「どうしたの? 光ちゃん」


「あ、いや、なんでもない」


 少し不安げな彼女を安心させるためにも、ライトは笑顔でレーアへと言葉を向けた。


「話しをしてくれてありがとう、レーアさん」


「いえ、ナナカのついでですので礼は不要ですよ」


 いつもの調子できっぱりと言い切ったレーアはケーキの最後の一口を食べ、コーヒーを飲み干す。


 そして、ハンカチで口元を丁寧に拭いている時に何か思い出したのか「あっ」と小さく息を漏らした。


「魔術についてもっと知りたいのならいい場所がありますよ」


 ライトとナナカは顔を見合わせたかと思うとすぐにレーアへ戻し、同時に首を傾げながら聞き返す。


「「いい場所?」」


 2人の疑問に答えるため、レーアはその場所の名前を口にした。


◇◇◇


魔術都(まじゅつと)ーー」


「ーーフラーバ?」


 その場所の名前に聞き覚えがなかったウィンリィとデフェットは疑問符を頭に浮かべ聞き返していた。


 夕食を食べながら今日あったことを話していたライトは一度うなずき続けた。


「そう。レーアさんとウィスさんは何度か行ったことがあるらしいんだけど……2人は知らない?」


「んー、私は魔術使えないからなぁ」


「私は村と西副都ぐらいしか知らん。外に出たのは主人殿の奴隷になってからだ。

 すまない、力になれず」


「いや、謝ることじゃないよ。ミーツェはなにか知ってる?」


 ライトから話を振られたミーツェは口元を拭いてから少し申し訳なさそうに答える。


「申し訳ありません。フラーバに関してはよく言われている程度の知識しかありません」


「ん? それってあまり言われてない話を知ってるところもあるのか?」


「ふふっ、ウィンリィ様は興味がおありでしょうか? よろしければ今夜お話ししますが……?」


 どことなく黒い笑みを浮かべ、あくまでも優しく提案するミーツェ。

 その表情や声音から本能的に何かを感じ取ったウィンリィは苦笑いと冷や汗を浮かべた。


「い、いや、悪いけど遠慮しとく……なんか知らない方がいいような気がするし」


 まるでその反応を楽しむかのようにふっと表情を緩めたミーツェは咳払いをしてから説明を始めた。


「皆様はこの東側が一度魔王たちの侵攻を許しかけたのはご存知かと思います。

 フラーバはその際に作られた簡易要塞の1つです」


「へぇ〜、ってことは今でもその名残があったり?」


「ええ。城壁や一部は解体されましたが、地下施設や堀などはそのままです。

 ご興味がありましたら有料ですが見学もできますよ」


 感心すると同時に興味で目を輝かせるライト。

 その次に、彼に続く形でデフェットは持っていた疑問を彼女にぶつける。


「では、魔術都、とはなんだ? そのままならば、魔術の都だが……?」


「ええ、その認識で合っていますよ。

 まぁ、都というよりは学舎に近いですが……。

 それを中心に都として発展して今になってますから間違いではないでしょう」


「元要塞で、魔術の都……」


 話し終えたミーツェの言葉をまとめて確認するようにライトがポツリと呟いた。

 そんな彼の顔を見たウィンリィが頬杖をつきながら、からかうような口調で問いかける。


「お前、そこに行きたいだろ?」


 それを一瞬も否定することもなく、すぐさまライトは頷いた。


「ああ、行きたいな。魔術都フラーバ。見たことないものがありそうだ」


「だと思った。まぁ、私も断る理由はない。面白そうだしな」


「ふむ、金も十分に貯まっている。気候としてもそろそろ暖かくなってくる頃。

 今ならば旅を再開するのも良い時期だろう」


 ライトの提案に2つ返事でウィンリィとデフェットが頷く。

 しかし、ミーツェだけは少し眉をひそめた。


「ここを離れてもよいのでしょうか? 派閥関係はまだ片付いてはいませんが……」


 彼女の心配はもっともだ。

 自分たちも関わっていることだというのに不謹慎と言われても仕方のないこと。


 ライトはそう思っていたのだが、残りの2人は違った。


「そっちはあの騎士様がどうにかするだろ?

 目的地さえ伝えておけば何かあっても接触はできるだろうし」


「ウィン殿に賛成だ。

 そもそも我々ではどうやっても足を引っ張るだけにしかならん。ならば全て押し付……あー、任せてしまえばいい」


 無責任というよりも割り切っていると言えばいいのだろうか。

 完全に、とはいかないまでもその力だけは「本物である」と2人は思い、任せようと考えているのだ。


「ライトはその辺どう思ってる? お前、頭から抜け落ちてたろ?」


「うん、少しね。

 でも、それを聞いた今でも旅をまたしたいって気持ちの方が正直なところ強い」


 それがライトの本音であるのには間違いない。

 デフェットは彼の言葉を聞くとミーツェへと視線を向けた。


「賛成3と反対1だな。ミーツェ殿、他に何かあるか?」


 3人に押し切られたミーツェは仕方ないと言うように息を吐き、コクリと頷いた。


 彼女が見せたその肯定の印にライトたちが「じゃあ」と口を開きかけたところでミーツェが「待った」と手を出して止めた。


「ですが、皆様にこのことはお伝えし、その際にきちんとしたお土産もお渡しして下さい。これは絶対です」


「うん。わかった。ありがとうミーツェ」


 話が落ち着いたところで食事も丁度全て食べ終えたウィンリィがパンッと手を叩き、確認するように口を開く。


「じゃ、明日明後日で準備とか挨拶回りするってことでいいな?」


 彼女の言葉に各々が期待を胸を躍らせながら言葉を返す。


 そうしてその日の夜は過ぎていった。


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