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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第二章 第一節 タジェル祭

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タジェル祭・開催

 タジェル祭の集合場所は港から離れた浜辺だ。


 見物人含めて数百人が集まっているというのにまだ幾分かの余裕があるあたり、かなりの広さがある。


 タジェル祭。

 いくら祭といえど死者が出ることもあるような行事だ。


 少し殺気立ってピリピリしている。

 今目の前にある光景を見るまで、ライトたちはそう思っていた。


「今回はまた多いらしいな」


「どっちが多く倒せるか勝負するか?」


「お、それ面白そうじゃねぇか。それ俺も混ざるわ」


「さぁ! 今回は何体のタジェルが出てくるか! 賭けろ賭けろ!」


「数じゃなくても群れの数でも賭けられるぞ! さぁ、見てるやつもここを勝負どころとしようぜ!」


 ライトたちの予想に反し、戦う者たちからは軽口が、見物人からは賭けの話が上がっている。


 かなり和気藹々とした、少なくとも命の危険がある戦闘が始まる前とは思えない様子にミーツェ以外の三人は言葉を失った。


「なぁ、ミーツェ殿。これは毎回か?」


 ライト、ウィンリィよりも先に我に帰ったデフェットが質問した。


 弓の弦の調子を確認しながらミーツェは今までのことを思い出しているのか、耳をピクピクと動かし答える。


「ええ、毎回ですね。

 参加する者は基本的に変わりませんので、最初は戸惑いますが最初だけですよ」


 デフェットは視線を集まった者たちへと戻し、改めて観察する。


 たしかに、数名は少し戸惑いながら辺りを見回しているが、そちらの方が少数で少し目立っていた。


「やぁ、君たちもやはり来たか」


 あまりにも慣れない空気に戸惑っているとパブロットが現れ、彼らにそう声をかけた。


 そこでライトとウィンリィの意識がどこかに飛んでいるのに気がつくと首を傾げ、すぐにミーツェに問いかける。


「っと、ん? 彼らは大丈夫かい?」


「この空気に戸惑っているようで」


「ああ、そうか」


 タジェル祭では戦闘始まるまでは和やかな雰囲気だ。

 それは戦闘に慣れていない者たちが死の恐怖を感じないようにするために生まれた、自分の心を守るための強がり。


 もちろんライトやウィンリィもそういう経験がないわけではない、だがここまで緊張感を感じさせないのも珍しい。


 ゆえに、それを見たことや感じてこもがない彼らの目には特別異様に映っていた。


 そこで意識を現実に戻したライトはパブロットに気がついた。


「って、あ、ワイハントさん」


「久しぶりだねライト君。君も参加する、ようだね」


「はい。買ったクラウ・ソラスもあまり使えていませんし」


「なるほど、試し切りということか……」


「あの、ワイハントさんは?」


 なぜ商人である彼がここにいるのか、それは純粋な疑問だった。


 賭けをするわけでも、それを煽るわけでもなく、かといって武器を持っていないことから戦闘にも参加しないのだろう。


 しかし、ただ見物するために彼がここにいるとは立場的にあまり考えられない。


 パブロットは「ああ」とライトのそんな疑問を察したのか、答えた。


「ワイハント商会もスポンサーをしていてね。

 武器の供給、食料の確保をしているんだよ。

 あとは、もしもの時のために避難誘導用の人員と場所の確保もね」


「……結構準備してるんだな」


 ウィンリィも意識を戻せたらしく、パブロットへと言葉を飛ばす。


「ああ、もちろんだとも。

 祭りとはいえ戦闘があるし、死者も出てる。十全に対策を練っておくさ」


 ライトたちがそんな会話をしているときだった。


 周りの空気が変わった。


 それにすぐさま反応した彼らは武器を取り出したところで、海を見ていた男性が声をあげる。


「タジェルの群れが来るぞ!第一、二グループは準備しろ!」


 タジェルの迎撃は三グループに分かれて行う。

 その三グループで来た迎撃、援護、休憩と補給をする。


 ちなみにライトたちは第一グループに入っていた。


「では、私はそろそろ後ろに下がるよ。頑張ってくれ」


「はい。また」


 パブロットはそれに手を振って答えると歩き去った。


 その背中がある程度小さくなったところでウィンリィが砂浜に剣を突き刺し、雰囲気を変えるように口を開く。


「よーし、なら、最初に決めてた通りに、いいな?」


「ああ、基本は四人。分かれる時は俺とウィン、デフェットとミーツェで、だろ?」


「そうだ。ここでの戦い方もだいたいわかってるな?」


「うむ。戦いにくい場所だが、感覚は掴んでいる」


 タジェル祭に参加すると決めたところでどのように戦うかも決めている。


 特に、砂浜での戦い方を知らないライトとデフェットはあらかじめ何度か訓練したことで戦う感覚をある程度掴んでいた。


 彼らができる準備は万全にしている。


「何かあれば誰でもいいので人を呼んでください。必ず助けが入ります」


 ミーツェが念のための注意を言ったタイミングで、誰が見てもわかるほどの白波ではない白が現れた。


 よく見ればイカの頭のようなものが無数に並んでいる。

 ところどころからはそれの甲殻なのだろう灰色の石のようなものも見えていた。


「よし、行こう!」


「ああ」


「うむ」


「了解」


 ライトの言葉にウィンリィ、デフェット、ミーツェの三人が武器を構えながらそれぞれ返事を返した。


 タジェル祭が今、始まった。


◇◇◇


 タジェルは二本の触手に貝のような甲殻を持ち、それを使って攻撃する。


 そのため、攻撃は正面からでははなく、後方か横から、と推奨されている。


 ミーツェが矢筒から矢を取り出し、放つ。

 それはタジェルに命中。


 痛みを感じるらしく身じろいだそれへと三人が走り向かう。


 真正面から接近するライトへとタジェルが二本の触手を振るった。

 一本はかわし、一本はクラウで切り落とした。


 その隙に左からウィンリィ、右からデフェットが近づき、それぞれ剣を突き刺す。

 青い血を吹きながら息絶えたタジェルから別の個体へと意識を向けた。


 次に、彼らに向かってきた個体の触手をウィンリィが受け止め、弾くと後ろに飛んだ。


 着地した瞬間の隙を埋めるようにデフェットが接近、レイピアを突き刺し動きを止める。


 下がったデフェットの追撃をかけるように、ライトがクラウ・ソラスでクロス字に切り裂く。


 ライトが離れたところでミーツェが放った三本の矢がトドメを刺した。


(よし、戦える)


 砂に足を取られて普通の場所よりも戦いにくいのはやはり変わらない。


 しかし、それを考慮して動けば八割程度の力は使える。


 ライトが確かな感触を得ていると隣にいてウィンリィが声をかけた。


「ライト! 合わせろ!」


「わかった」


「では、私が前に出よう。トドメは二人に任せる」


「デフェット。援護します」


「頼む!」


 ミーツェに返事をすると同時にデフェットがタジェルへと向かう。

 走る彼女を追い越すように矢が二本飛ぶ。


 どちらもタジェルの体を捉え、わずかに動きを止めた。


 そこを付くようにデフェットは砂浜を這うように前進、レイピアで甲殻付き触手を一本穿ち落とした。


 そんな彼女に続くようにライトとウィンリィがそれぞれ追撃の一閃。


 青い血で砂浜を汚しながら倒れたタジェルにクラウを突き刺し、完全に息の根を止めるとライトは辺りを見回した。


「すごいな」


「ああ、全員よく動いている。連携もな」


 ウィンリィが剣についた血を払い飛ばし、同じように辺りへと視線を巡らせ呟いた。


 一部はこの場で初めて会った者たちで組まれたチームもあるが、それを考慮してもかなりの連携が取れている。


 初対面の相手とでも連携が組める辺り、戦闘慣れしていなくともタジェルに関してはよく知っている者が多いのだろう。


「ライト様」


「ん?どうしたの?」


「第一波の大半が討伐されました。

 我々は残骸を回収しながら後退して補給を行います」


「もうそんなに倒してたか」


「はい。まだまだ先は長いですが、一時休憩といたしましょう」


 ミーツェの言葉に彼らは頷いた。


 それぞれタジェルの死骸を回収しながら後退。


 次は第二グループが前衛、第三グループがその援護に当たる。


 ミーツェの言う通り、まだまだ先は長いだろう。


 ライトは息を吐き、下がり始めた者たちに続くように海岸から離れた。

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