表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生徒会政争  作者:
7/29

交渉~vs暫定生徒会十一番~

 暫定生徒会にはそれぞれ仮生徒会室というものが与えられる。

 俺たち、No.07の場所は西校舎である。


 そもそも、ここ天正高校は五つの校舎に別れている。


 職員室や本生徒会室など、主要な教室が集まる中央校舎。

 その中央校舎から東西南北へと伸びる渡り廊下。その先に四つの校舎がある。


 各校舎の特徴と言えば、北校舎はグラウンドに最も近く、南校舎は体育館と繋がっており、東校舎は部室が数多く並び、西校舎は昇降口に近い、といったところだろうか。

 校舎選びは生徒会政争を左右するらしい。

 もっとも俺たちは何となくで決めてしまったのだが……。






「それじゃあ、改めて……片桐優馬(かたぎり ゆうま)です。この前の放送を聞いて、この人のもとで働きたいと思い……」

「はい、ストーップ!」


 片桐の喋りをもう一人の男子が止める。


「な、何すんだよ!?」

「だって長いし。……あと三人もいるんだぜ?」

「うぅ……」


 片桐は弁が立つタイプか。俺と同じ交渉要員かな。

 ……押しに弱い所がアレだが。


「はい、つーことで、糟屋健(かすや たける)でーす! よろしくー」


 糟屋。

 大谷が分析していた通り、体格が良く、そして気が回るヤツらしい。

 でも、何か軽いんだよなぁ……。


「わきゅ、脇坂安菜(わきさか あんな)です! えーっと……頑張ります!」


 ……ドジッ娘?

 でも、明るい。士気を上げるにはもってこいの人材だな。


「……平野紗香(ひらの さやか)


 ……こっちは無口?

 だけど、ここに来たってことは相応の何かがあるのだろう。

 さっきは面白そうなメンツ、とか思っちゃったけど……。


「思ったよりも大変そうだな……」

「でも、実際にやってみないと分からないわよ?」


 大谷の言う実践の機会は思っていたよりも早くやって来た。






「失礼します!」


 庶務が揃ってから数日後、その生徒は現れた。組章から察するに、二年。先輩だ。彼はジロジロと辺りを見渡した後に、スポーツの大会のように宣誓した。



「暫定生徒会十一番会長、鈴木浩市(すずき こういち)。生徒会対立制度に則り、暫定生徒会七番に生徒会政争を申し込む!」


 その言葉に室内がざわつく。

 そりゃそうだろう。

 会長以外は全員一年。生徒会政争など未知の領域、右も左もわからない。

 けれど……。


「……さぁ! 暫定生徒会十一番さん、話し合いましょうか。生徒会を勝ち取るために……!」


 こんなトコで負けてられない。交渉モードに切り替えて、俺は先輩と相対した。


 鈴木が席に座る。それを見て、俺も席に座った。見た感じ、彼は交渉で解決する気はない。おそらくは自分たちの得意分野での対決を望むのだろう。さて、どうしたものか……?


「それでは、まずは私たち七番からの提案です。……降服し、暫定生徒会を解散してください」


 先制パンチをぶちこむとするか。






「思い切ったわね……」


 交渉は彼に任せて、残った私たちは遠くから見守ることにした。


「ねぇ、交渉ってあんな感じで良いの?」

「……あれじゃ、話なんてまとまらないじゃない」


 安菜さんが尋ねてくる。

 それに乗じて、清奈さんもツッコむ。

 と言っても私も詳しいわけではないのだけれど……。


「多分……向こうはハナから成立させる気はないのね、この交渉」

「おい、大谷。どう言うことだ?」

「……何で会長がナチュラルに質問してきてるんですか?」


 仮にも会長でしょうが。


「あちらはどこかの部活と提携しているわけ。交渉で解決なんてしないつもり。最終的に平和的対決に持っていきたいのよ」

「なるほどねぇ。その時に自分達に有利な対決方法に持っていくつもりなのか」


 頷く糟屋くん。

 気が付くと、私の周りには人だかりができていた。

 ……片桐くんと紗香さんは少し距離を取ったままだが。


「だから、その前に交渉の主導権を握りたい。今のはそういう布石なのよ」






「どうでしょうか?十一番会長?」


 今の先制に相手は明らかに動揺している。やはり交渉は苦手なようだ。


「そんなこと……受け入れるわけないだろ!」

「ですよね」


 さらりと受け流す。

 流石にこれで解決できたら苦労はしないよな……。


「……俺たちはもう話し合うことは何も無い。平和的対決によって早々に決着をつけたいのだが……」


 鈴木が答える。先ほどから、何度も人差し指と中指をクネクネと動かしている。

 ……何だ、あの手の動き。動揺か?


「まぁ、そう焦らずに。……ところで、平和的対決の内容に希望はありますか?」


 笑いながら答える。

 ……良いぞ。完璧に俺のペースだ。


「……サッカーだ」


 サッカーか。となると、あちらの庶務の大半はサッカー部かな。

 ……ってサッカーはアウトだろ。

 何しろ人数が足りない。

 その中に俺みたいな文系と女子が含まれているんだから余計アウト。

 勝てる気がしない。

 ここは断っ……いや、待て。


「サッカー!良いですねぇ?」


 ここはハッキリと宣言する。


「では、人数のルールを少し調整して、サッカーで行きましょうか?」


 周りにいた役員の驚く顔と鈴木の悔しがる顔が最高に気持ちよかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ