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生徒会政争  作者:
18/29

四月の支持率

 ゴールデンウィークが明けた五月。

 中央校舎には一枚の紙が張り出された。

 そこに書かれていたのはグラフ。四月下旬時点での暫定生徒会の支持率だ。




 俺たちは七番仮室に集まっていた。

 顔を付き合わせて見ているのは、一枚の紙。それを見つめる役員の顔はどこか浮かない。


「……あれだけ頑張ったのにね」


 皆を代弁するように、脇坂が呟く。


No.01伊勢…………26.2%


No.03大江…………25.9%


No.06伊達…………03.6%


No.07木下…………10.8%


No.09松平…………07.1%


No.10島津…………10.4%


No.12龍造寺…………10.6%


無効票…………05.4%


 あれだけの大立ち回りを披露しても、結果は芳しくなかった。確かに一番の伊勢、三番の大江には敵わないだろうと思っていたが、これだけ違うとは……。


「やりきれないのは、傍観組とも大差がないと言うことだな」


 そう言うのは加藤兄、海斗。

 十番の島津、十二番の龍造寺と僅差。


「地力の違いというか……ここに来て改めて、僕たちは不利なんだって気づかされたよな……」


 片桐は唖然としている。今回、交渉で頑張っていただけに、納得いかないのだろう。


「な~に言ってんだ! 一年生主体の暫定生徒会が、ここまでやってのけたんだぜ?大したモンじゃねぇか!」


 一閃。

 会長は、その空気を断ち切るかのように言った。そして、ニッと笑って続けた。


「オマエらだって分かってんだろ?……まだまだこれからだ、ってさ」


 空気が変わった。木下の一声が空気を変えた。


「それじゃ、今後について話していくぞ」


 仕切り出す。会長に流れを変えてもらったんだ。ここからは俺の仕事だ。


「俺は、今月中にどこかと相対したいと思っている」


 石田くんの放った一言に、室内がピリッとした雰囲気に包まれる。

「何かあるか?」

「じゃあ、僕が一つ……」


 石田くんに応じたのは片桐くんだ。


「攻めるとしたら、どこを攻めるんだ?」


 片桐は続けた。


「……正直言って、スキが無いと思うんだ。僕たちより支持率が低い、伊達にしたってサバイバルゲーム部を引き連れているんだろ?……僕たちとの相性は最悪だ」

「……伊達の参謀も侮れないらしいよ」


 同調したのは、各暫定生徒会を調べていた平野。その後ろ楯に確信を得たのか、さらに片桐は続けた。


「かといって、未知の松平に勝負を挑むのも……リスクがあるんじゃないか?」

「……なるほど」


 片桐の言い分はもっともだ。


「と言っても、動かないわけにはいかないだろ?」

「あのさ?」


 と、加藤妹、清奈が恐る恐るといった感じで手を挙げた。


「みんな、ナチュラルに南校舎の二組を候補から外してるけど……何で?」


 あー……っと、皆が下を向いた。てか、こいつホントに何も分かっていなかったのか。


「……そこからか」

「え!?ゴメンゴメン!……というか分かってないのって私だけ?」


 シーン、とそんな効果音が聞こえるくらいの静寂。


「そ、そんなこと無いよ!私だって……ゴメン。分かってた」

「フォローするなら最後までやってよ!?」


 脇坂のだめ押しによって、清奈は半ば泣きそうだ。


「どっちかに絞れるのを待ってんだろ?」


 話が逸れそうな所を、糟屋が戻す。


 南校舎にいる島津と龍造寺の両組はこの結果を受けて、恐らく本格的に勝負し合うだろう。

 ならば、それを待てば良い。


「……ただ、向こうの動向は予想できないわよね」


 大谷が言う「向こう」はただ一人の女子生徒を指しているのだろう。






 鍋島奈央。副会長と会計と書記、三つの腕章を持つ女子。

 彼女は心理戦が得意なようだ。調べ尽くした情報を使い、相手を揺さぶる。

 そして、彼も……。

 この前の対面時、過去を持ち出され、揺さぶられた。

 私が「あのこと」を早く告げていれば……。


「大谷?」


 彼に話しかけられ、慌てて思考を止めた。






「で、結局どうするんだ?」


 福島が聞く。

 ……お前、さっきまで寝てたよな? 何を偉そうに……!


「やれやれ!」


 と、声が響く。声の方へ振り向くと、会長が椅子の上に立っていた。


「オマエら全然ダメだな~?……やっぱこの会長サマがいないことには始まらねぇか?」

「よし!もう少しちゃんと話し合うか」

「待って待って?ごめんなさい。話を聞いて?」


 チョコン、と椅子から降りて座る。


「で、何ですか?」


 大谷が冷たく問う。怖ぇよ……。


「んっんん!」


 咳払いをした後、会長は高らかに言った。


「ボランティアだよ……!」


 静寂。そして……。


「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」


 会長以外の役員全ての息が、ピッタリと合った。



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