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2話 捕獲完了っ!

「律儀に待っていたのか。先に動いてもよかったのに」


 ドアが開きアクティスが入ってくる。

 頭がぶつかりそうだ。


「いやぁ、せっかくの作戦を台無しにするわけにはいかねぇからな。よし、そんでどうする?」


「一応街の警備をしている兵士に声をかけまくった。ここにも何人か配備されているのだろ?」


 アクティスの問いにえぇとバーグさんが答える。

 俺が外を見てみると確かに逃げ場を塞ぐように十人ほどの兵士がいる。

 バーの飲み場にも兵士服を着た男が何人か酔っ払っている。

 え、あれが配備されてるの? 戦力外通告してもいいよね。

 あいつらには頼れない。ていうか仕事で来てるの? それとも仕事終わり?

 紛らわしい。


「アクティスさん。少し説明をしてくれませんか? 老いぼれには些か事情が分からなくて……」


 急に腰を折って、そこに手をやり、目を細める。

 見た目はまるでおじいちゃんだが、顔はダンディだ。


「おいぼれって、まだ四十ちょっとでしょう? まぁ、簡単にいいますとあそこで酒飲んでるのがスリエンスの兵士ってことですね」


「なんと……」


「物資の補給か何かだと思っていたんだが、まさかただ女に飢えていただけだ何て……スリエンスの兵士には女はいないのか?」


 アクティスがあきれたように肩をすくめている。


「いないんじゃね? 俺達の国にだって、魔法部隊以外にはほとんどいないじゃん」


 イエニも魔法部隊の所属だ。魔法は女のほうが扱うのがうまいから自動的に比率が女が高くなる。

 魔法部隊の人たちは俺達一般兵と組んで行動することが多い。

 魔法が強いといっても遠距離の話だからね。


「アクティスくん、作戦の説明を」


 俺が言うと、バーグさんから疑問の眼差しを喰らう。

 おじいちゃん姿勢からは戻っている。俺よりも頭一つ分大きいから見下されているように感じてしまう。

 ……もしかして俺が作戦立ててないのばれちゃってる?


「作戦は簡単だ。三人を取り押さえる。情報を引き出すために殺さないほうがいいらし――」 


「作戦名、暴れまくるぜひゃっほーい! 作戦。決行だっ!」


 俺が後を引き継ぎ、胸を張って宣言する。

 アクティスが微笑んでくれたのでどうやら中々に作戦名がいかしていたようだ。


「――相変わらず君は人が話している最中に被せるのが好きだな、グレムくん」


 あ、笑みが引きつってらっしゃる。

 俺はなるべくそっちを見ないために、武器のチェックをする。

 背中につけておいた銃。魔石が填まっていることを確認してから戻す。

 単発式で一発ずつしか撃てないのが難点で殺傷力も低いけどこういった場合は活躍する。

 頭に一発ぶつければ気絶させるぐらいの痛みになるはずだ。

 逆にそれ以外だと効果は薄い。銃が剣に劣っている最大の点だ。


「あまり、店に被害を出さないでくださいね……?」


 バーグさんがあきらめきった愛想笑いを浮かべているので俺も笑い返す。


「任せろって、派手にやるさ」


「いや、あのだから派手にしないでくださいよ」


 階段を下りた先に広間があり、あちこちにソファが備えられている。

 そこかしこで男が女に癪をしてもらって酒を飲んでいる。

 どれもきわどい格好だ。全く目にいい。

 とと、目的を忘れる所だった。

 俺達のターゲットは窓側に近い場所にいる。

 もしかしたら何かあったら窓を破って逃げようって魂胆があるのかもしれない。

 だけど残念、うちのアクティスは優秀だから既に窓の外にも兵士がいる。


「3、2、1、で行こうぜ。いいか?」


 俺の提案は三人にあっさり承諾される。

 席を探す客を装いながらちらと男達を見るが、うん全然警戒心がない。

 俺達のことなんて全く目に映ってないで酒ばっかだ。

 ちょうど酒を注いでいた可愛い女の子が注文でも取りに行ったのか、離れたのを確認してから、


「よし、行くぞっ!」


「掛け声は!?」


 イエニが叫ぶ。あ、忘れてた。

 俺が銃を手に持って、男たちに発砲。

 こう見えても俺、銃の腕前は凄いんだ。

 二回に一回は当たるっ!

 そして、残念外してしまった。

 魔石弾は窓を破って味方の兵士へと直撃。

 悪いと俺は片手をあげてごめんねのポーズ。


 男達は突然飛んできた魔石弾になんだ?と首をきょろきょろしながらもさすが兵士らしくすぐに戦闘態勢を整えている。


「腕は相変わらずだなっ!」


「鈍ってないぜ!」


「上達もしてないがな!」


 アクティスが近くの男へと豪腕な腕から放たれた拳を男の腹部へと入れる。

 みしっと音が響き、殴られた男は派手に吹き飛ぶ。

 俺はチャージが終わった銃で二発目を放つ。

 今度は真っ直ぐに飛び、男の顔面に当たる。男はそのまま倒れる。

 最後に残った男は兵士らしからぬ逃げようとするのをイエニが魔法で捕らえる。


「動くと燃やすわよ?」


 イエニが持ってきたのは火魔石だったらしく放たれた魔法は火の渦だ。

 渦が男を中心に回り続けていて一見男が使った技のようにも見えなくない。

 魔法を使ったイエニは髪を掻き揚げて、どす黒い笑みを浮かべる。

 あ、怖い。


 イエニは火の魔法が得意だ。性格どおりだ。


「あーあ、火のせいで店の床が燃えちまってるよ。弁償どんまい」


 肩に手をおくと、イエニも手をかけてくる。

 だが、身長さはあるからイエニは必然的に背伸びをしている。

 イエニは胸の小ささは気にしてるけど、身長は大して気にしてないよな。


 女にとって胸って大事なのか?


「あんたが割ったガラスもよ。ガラスって高いわよ」


「いや、あれは敵さんが俺の魔力弾避けたからで俺、悪くなくね?」


「思いっきり明後日の方向に飛んでってたわよ。むしろあんたのせいで取り逃がす所だったんだから。でもそんなおちゃめな場所も可愛いわよ」


「嬉しくねぇ」


 ここ最近イエニの調子がおかしい。

 なんでだろう? 一ヶ月ぶりくらいに会ったからかな。

 そりゃ懐かしいけどここまでおかしくならないよね。

 考えても分からん。

 アクティスが連れて来た兵士に命令を飛ばしている。

 あいついつの間に人に命令できるほどに偉くなったんだろう? 


 この前、アクティスが水飲んでるときにこっそり泥入れてやったのばれてないかな?

 アクティスがこれ以上有名になって、その時に俺の事を死刑にしたりしないよな。

 ああ、あん時の俺なんであんなことを。

 色々とアクティスに対して懺悔したいことがある。


「三人とも気絶させて身包み剥いだら車の鍵が出てきたぞ」


 三人とも? あ、ほんとだ。魔法で動きを封じられていた男も気絶している。

 みんなパンツ一丁だ。


「あぁ、店が……」


 バーグさんが階段を下りてきた。

 やべ、目を合わせるな俺。


「大丈夫ですよ。国の方から弁償代は払いますよ。全部グレムの給料から引かれてですけど」


「えぇ!? なんで、俺が!?」


「このパーティーのリーダーだろ? チームの責任はリーダーがとる。常識だろ?」


「ここで、リーダー扱い!? あ、ちょっと嬉しいかも」


 俺は恥ずかしさで頭をかく。やっぱりリーダー扱いしてもらえるのは嬉しい。


「というわけでリーダー、弁償任せたぞ」


「って騙されると思ってんのか!? いやだよ! そのせいで先月はパンの耳で一ヶ月乗り切る羽目になったんだからな!」


 先月は寂しかった。建物一つうっかり爆弾で壊しちゃった。

 あれは俺のせいじゃない。爆発ボタンがついたリモコンを机の上に放り出していたアクティスが悪い。

 ボタンを見たら押したくなるだろうが!

 イエニがもじもじと控えめに手をあげる。

 助け舟か? よし、任せた。

 指名するように指を向ける。


「あ、なら、あたしが代わりに出そうか? 将来結婚したら問題ないし」


 嬉しい申し出だ……って。


「結婚の段階で問題あるから!」


「何が問題あるのよ!」


 逆切れ気味なイエニに俺は後ずさる。

 そういえば、何か問題があるのだろうか。

 女に大切なのは、性格とか、胸……とか?


「胸がない……?」


「殺してやるっ!」


 火の弾が飛んできて俺の顔面に当たる。

 熱調節をしたのかやけどするほど熱くないけどぶん殴られた気分だ。


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