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10話 のっとった

 荷物運びを終えた俺達は疲れた体を解しながら、階段を登る。

 船着場の仕事はもういいようだ。


「そんで、どんくらい進んでるの? 破壊活動は?」


 振り返り二人に指をつきつける。

 俺は結構頑張ってると思う。

 二個も爆弾をしかけたのだから。

 この二人、俺の目がないからって仕事サボってないよな。

 アクティスが「人に指を向けるな」と注意しながら肩を竦める。


「完璧だ。船のほとんどすべてに爆弾をしかけてきた。それもそう簡単には気づけないようにな。それでも早くに爆破するに越したことはないけどな」

 

 んな、俺よりも進行してるじゃん!

 くっそぅ、負けた。

 こうなったらだんまりを決めよう。


「そっか、んじゃさっさとずらかろうぜ。ここに長居してもやりにくくなるだけだしよ」


 アクティスはくすくすと笑う。


「相変わらず、お人よしだな」


「うっせえ、人間全部失っても優しさは持っておかないと駄目なんだぜ?」


 前に暇つぶしに手に取った本に書いてあった気がする。

 読み切る事はなかったけどな。

 俺はこの言葉にいたく感動して実行に移せるように心がけているのだ。


「へぇ、いい事いうな」


 アクティスが素直に褒めてくれるもんだから調子に乗ってしまいそうだ。

 落ち着け。下手なことを言うと、あなどられる。


「まぁな。ちょっと見直したか?」


 それでも嬉しいのだからちょっとくらい胸張ってもいいよな。


「どうせ、本の受け売りだろ?」


「まぁね」


 って、暴露しちまったぁぁー!

 やばい、せっかく俺決まってたのにこれで水の泡だ!

 訂正しないと。


「……ごめん、今の取り消し」


「ばっちり耳に残ったぞ」


「さっきの言葉は俺の人生の経験って奴さ。どうだ、かっくいいだろ」


 よし、結構いい感じに修正できたと思う。

 われながら自分の才能が怖いぜ。

 今度物書きでも目指してみようか。


「そういえば、キャノンの方はどうなんだ? 爆弾は仕掛けられたのか?」


 おっと無視された。

 だけどまあ、これ以上触れられてもボロがでそうだからいっか。

 明らかにアクティスたちよりも少ないけど、数じゃないよね。

 ようはどれだけ破壊力がある所に設置できたかだよね。


「まあな、マジックキャノンはこれで大破さ」


「そうなるといいな」


 おい、信じてないのかよ。

 俺がぶうぶつ文句を言うがアクティスはどこ吹く風だ。


 マジックキャノンの区画を超えて、建物に入る。

 そのまま特に誰にも言われることなく、歩いていく。人が少ない。

 お昼の時間だからみんなご飯でも食べてるのかな。


 そして、最後の分かれ道にやってくる。

 真っ直ぐ向かうと、出口――駐車場へ。

 右に曲がると……制御室に行くことができるようだ。


「再度確認だ」


 アクティスが後ろに振り返る。

 帰りは俺が先頭じゃなく、アクティスに任せている。

 俺地図あんま覚えてないから文句はない。

 アクティス、イエニ、俺の順番だから正面から見たらイエニは完全に姿が隠れているはずだ。


「これからおれ達は制御室に向かう。やることは、分かっているよな?」


 俺とイエニが頷く。

 俺達はこれから制御室を乗っ取り、車が通るための門を開ける。

 後はスピード勝負で車で正面突破。脱出と同時に爆破で俺の給料アップという流れだ。

 目の前まで迫ってきたよ、昇格!


 未来を想像してついつい笑みがこぼれそうだ。


「全員、準備はいいな?」


 アクティスが武器を構える。俺も背中を触り、確認する。

 イエニも魔石をセットしている。


「イエニ、剣貸してくれ」


「ん、いいわよ」


 イエニから剣を受け取り、腰につける。

 どうせ人がいないのだから見つかっても問題なし。


 分かれ道を左に折れ、制御室へと駆ける。

 突き当たりにいくと、ドアがある。ドアの上には制御室と書かれたプレートがついている。


 アクティスがドアノブを捻る。

 鍵はかかっていないようだ。


 ゆっくりと開きその巨体をぶつけない様に頭をさげて入っていくアクティス。

 見せ付けやがって、ちぇっ。

 舌打ちしながら俺も続く。


 薄暗い。明かりはガラスの画面から送り出される物だけだ。

 画面はいくつかあり、そのほとんどが基地の外を移している。

 確か、これに似てる機械があったよな……テレビだっけな?


 映像をチェックして不法侵入者がいないかどうかを調べているようだ。 

 幸い内部の映像はない。

 そのことに今さらながらほっとする。

 あったら、俺ら不審すぎてすぐばれるからね。


 中にいるのは三人。

 それぞれ席に座っていて、足を組んだり、ボタンがいくつもある機械の前で肘をつけたりとくつろいでいる。

 画面が放つ光以外はやはりない。少々暗闇により視界が悪い。


 そのうち慣れるだろう。

 ドアが開いたことにより、光が差し込み三人ともがこちらに気づく。


「ん? なんだ? 何かあったのか?」


 一番近い男が椅子を回転させてこちらに向く。

 へぇ、回転するのか。

 俺はドアを後ろ手で閉めて、ドアノブについている鍵を回す。


「いや、まあ、ちょっと用があってですね……」


 アクティスが頭を掻きながら話しかけてきた男へと歩いていく。

 俺はいつでも動き出せるようにとイエニから借りた剣のあたりを触る。

 あからさまなのは怪しいから、さりげなくだ。


「用か? どうした?」


 男は警戒などまるでしていない。

 仲間だからな、表面上は。


「死んでくれ!」


 アクティスが開口と同時に剣を抜き放つ。

 居合いだ。アクティスは大振りの一撃でその兵士の首を跳ね飛ばす。

 あまりいいものじゃない。俺は顔をしかめるが、このぐらいで動きを鈍らせるほど落ちぶれちゃいない。

 宙をまうと同時に足に力を込める。

 

 接近し真ん中に座っている兵士に剣を突き刺す。

 しかし敵も鍛えられているだけある。咄嗟に対応して急所を庇われてしまう。

 兵士服は結構頑丈だ。アクティスのようにはいかない。

 空いている拳で殴りつけ、剣を男から抜く。


 態勢を崩した男へとたたきつけようとするが、横側が光る。

 反射的に体をそらすと目の前を何かが通過していく

 あ、あぶねぇ。

 飛んできたのは魔石による銃弾。

 目で見切れる速度だ。視界に納まっていたから何とか避けれたけど、あれ喰らってたら俺の出番終了してたかも。


 男に目を向ける。持っているのは小さい銃。片手に収まるもので、あまり威力はないように思えた。

 ていうか、あれ本当に使えるのかよ。

 あんな小さいの隠し持たれたら危険だ。


「おまえら! 何をしているんだ!」


 怒鳴ってくる、銃を持った男。

 何を、って現状見て分からない?

 アクティスは全く取り合わず突っこむ。


 俺も剣を仕舞い、銃を取り出して援護に徹する。

 イエニの魔法が炸裂、銃を持った男の足場から火柱がつき上がるが男は分かっていたのかそれを後方に飛ぶことで避ける。

 俺はそいつに向かって銃を連射する。


 分断が目的だ。

 銃を持った男と、俺が傷を負わせた男。

 傷を負った男は明らかに苦痛で動きが鈍い。

 そこにアクティスが剣を振り下ろす。

 頭を叩き割るような一撃を喰らった男はあっさりと崩れる。


「くそっ!」


 銃を持った男が近場にある赤いボタンに手を伸ばす。

 あれを押されたらまずい気がする。

 俺は銃を連射する。白魔石から生み出された何の効果もない白い銃弾が綺麗に男の腕に当たる。

 

 痛みに震えている兵士はそのまま動きを止められる。

 イエニが水と風の混合魔石により使用可能な氷属性の魔法を放ち、動きを止めたのだ。

 氷が男を固めたのだ。

 全身を氷で覆いつくしている。

 中に入っている男は全くといって身動きが取れていない。


 身の毛がよだつような魔法だ。

 氷により指の先までも動きが封じられているのだ。


 イエニは氷を操り、男を氷で串刺しにする。

 血はまったく飛び散ることなく三人目の兵士は死んだ。


 一応、成功かな。

 外に気づかれていないようだし。

 それにしてもスリエンスの銃は使いやすい。

 いや、もしかしたら実は天才だったのかもね、俺。

 三人の鎮圧に成功した。

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