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LAW ORIGIN —— 見えざる法のはじまり ——  作者: おまる
第3章:結斗編 ─ LAW REMAINS ─
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【第2話】 理想と現実

男性:

「今日面接の……光条くんかな?

よく来てくれたね。

さあ、入って入って。」


ドアの蝶番が、きぃ、と小さく鳴った。


結斗:

「はい、そうです。

よろしくおねがいします。」


男性:

「では、そちらにかけて。

緊張しなくてもいいからね。

うちは小さな相談所だし、私自身が固っ苦しいのが好きじゃなくてね。」


結斗は椅子を引き、

静かに腰を下ろした。


男性:

「改めまして、

私がこの田中法律相談所の所長、田中です。

今日は来てくれてありがとうね。」


結斗:

「あ……

先程は所長とも知らず、失礼いたしました。

光条結斗と申します。

よろしくお願いいたします。」


田中所長:

「まあまあ。

気にしなくてもいいよ。

どこにでもいるただのおじさんだからね。」


少しだけ肩を揺らし、

照れたように笑った。


では、早速だけど……

その若さで法律に興味があるのかい?」


結斗:

「はい。

学生のとき、生徒会長をしていまして、

正しいルールがあれば、

みんなが無理なく動けて、

ちゃんと守られるんだと実感しました。


そこに、魅力と興味を持ちました。」


田中所長:

「なるほど。

ルールを守らせるのは大変だっただろ?

いいことばかりじゃなかったはず。


それでも君はやり切った。

凄いことだよ。」


机の上の書類を、指で揃える。


「ただ、ここで働くうえで、

先に知っておいて欲しいことがある。


人は、理想と現実という壁に必ずぶち当たる。

君がそこへどう向き合えるかで、

人生は大きく変わる。


君に……

覚悟はあるかい?」


結斗:

「……はい。

学校のルールとは違うことは理解してます。

僕にできる範囲だけでも正しいことをし、

守れるものを守りたいと思っています。」


田中所長:

……立派な、答えだね。

何かあったかは深くは聞かない。


……でも君を見てると、

なんだか昔の自分を見てるようでね。

他人事には思えないな。


その整った顔なんて特に、ね。


田中所長は、ふっと力を抜いたように笑った。


「よし、決めた。


明日、予定ある?

なければ、早速来てみる?」


結斗:

「え?

雇ってもらえるんでしょうか?

まだそんなに話して……。」


田中所長:

「あー、いいよいいよ。

面接なんて真面目にしたところで、

人間の10%も理解できないもんなんだよ。


大切なのはフィーリング。

私は君のように本気で人の為に動ける人間は好きなんだよ。


……って言ってもLOVEじゃないからな。」


結斗:

「え? あ……はい。」


事務員:

「所長、またくだらないこと言ってるんですか。

若い子に変な冗談ばっかり言わないでくださいよ、もう。


光条くん、適当に流してくれていいからね。」


事務所に、

ふっと笑いが戻った。


田中所長:

「──それで、どうする?」


結斗:

「はい。

是非、働かせてください。」



──帰り道。


靴底が、

アスファルトを叩く。


結斗:

(なんだろう……

他の法律事務所とは空気感が全然違ったな。


ここなら……

守る力を得れるかもしれない。)



結斗:

「ただいまっ!

お母さん!就職、決まったよ!」


母:

「そう!良かったわね!


でも……ごめんね。

家の事で心配かけちゃって……。」


結斗:

「全然気にしてないよ。

今まで十分に助けてもらったし、

これからは僕も力になるから!


今日行った法律相談所の所長さんが、

すごく人柄がよくって、

何か……うまくやっていけそうなんだ。」


母:

「環境は大切だからね。

お金の事は気にしなくていいから、

あまり無理のないようにお願いね。」


結斗:

「うん、わかってるよ。

それじゃあ、明日の準備があるから。」


(まずは法律のことをもっと学ぼう。

そして同じような案件がないか、

他に守れる方法はないかを探していこう……。)



──初出社の日。


事務所のシャッターが上がる音。

コピー機の起動音が、

低く響いた。


事務員の女性に、

掃除からはじまり、

電話対応、簡単な書類の整理について教わった。


事務員:

「光条くん、ばっちりね。

社会人としての基本部分とはいえ、

初日から効率的に器用にこなせる人は珍しいわ。


その調子で、

まずは所内の空気やルールを覚えていってね。」


結斗:

「ありがとうございます。

まだ至らない点も多いので、

もっと改善できるよう頑張ります。」


事務員:

「さすが優等生ね。

今の自分に満足せず突き進む姿、素敵だと思うわ。

その調子で引き続きお願いね。」



それから、

基本的な仕事をこなし、

一週間ほどたった。


──そんな、ある日。


コピー機の「ウィーン」という音を背に、

結斗は黙々と書類を仕分けていた。


田中所長:

「──はい。

お気持ちはわかりますが、

現在の法の限界がありまして──

いえ、そういう訳では──」


──ガチャ。

受話器を静かに置く。


所長は、やるせない顔で、

綺麗にファイリングされた案件を見つめていた。


普段、笑顔が多い所長が、

このときだけは、辛そうだった。


事務員:

「……所長。」


コピー機の音だけが、

淡々と鳴り続ける。


僕は、何も言えなかった。

でも、何があったのかは、

だいたい理解できた。


結斗:

(……これが、やっぱり現実なのか。)



──続く──

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