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LAW ORIGIN —— 見えざる法のはじまり ——  作者: おまる
第3章:結斗編 ─ LAW REMAINS ─
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【第1話】 崩れた日常

※この物語は、薫編以前――

世界が、まだ静かに歪み始めた頃の話です。

挿絵(By みてみん)



僕の名前は光条結斗。

父の記憶は、ほとんどない。

小さな頃に、離婚したらしい。


母はいつも、何も言わない。

困っていても、苦しくても、

笑って「大丈夫よ」と言う人だった。


本当は、

言いたいことだって、あったはずなのに。


それでも、母がいてくれた。

二人で笑って、二人で食べて、

どこにでもある普通の家庭――


……のはずだった。


──そう、“あのときまでは”。


森川:

「ユイト!お前また学年トップかよ!

最後までトップ維持できるとか、どうなってんだお前の頭は!」


結斗は、隣で肩を並べている森川を見て苦笑した。


結斗:

「まぁ……ほとんどの時間を勉強に使ったからね。

努力しなくてもトップになれる天才だったら良かったんだけど。」


森川:

「いや、十分天才だって。ユイトがいなかったら補習地獄間違いなしだったし。

頭いいし、生徒会長だし、顔までいいし……

ただ、"真面目すぎ"ってのが弱点だな。」


結斗:

「お前を助けたら、巡り巡って良いことが返ってくるかもしれないだろ?

ほら、テスト終わったしメシ行こうぜ。」


森川:

「お前……真面目撤回するわ。

よし、いつものロウバーガーだな!」


結斗:

「僕は新メニューのジャッジメントビーフセットで!」


森川:

「攻めるねぇ! おれは無垢なるフィッシュセットいっとく!」



──食後。


トレーを片付け、

椅子に深くもたれた森川が、満足そうに息を吐く。


森川:

「食べた食べたぁ~。世は満足じゃー。

……なぁユイト、卒業したらどうすんの?」


結斗:

「もちろん就職するよ。

人を助けられる仕事がしたいと思ってて。

この街の法律相談所も、考えてる。


……うちは片親だからさ、早くお母さんに楽させてあげたいんだ。」


森川は一瞬、言葉を失ったあと、

照れ隠しのように笑った。


森川:

「……やっぱ真面目の撤回の撤回。

ほんと尊敬するって。

おれなんて“最悪実家の居酒屋継げばいっか~”とか言ってるレベルだぜ?」


結斗:

「それもいいと思うよ。

お前の居酒屋、絶対人気出るって。」


森川:

「ほい来た! 常連客一名確保~!」


結斗はスッとメガネを押し上げ、

小さく息を吐いた。


結斗:

「……はいはい。お通しは禁止ね。」


二人は顔を見合わせ、

思わず、笑みをこぼした。



──帰り道。


夕焼けに染まる歩道を並んで歩く。


森川:

「じゃあ、またな!……あっ、明日数学教えてほしい!」


結斗:

「またか……いいよ。但し、しっかり覚えること!

じゃあな、気をつけて帰れよ!」


一人になった帰り道。

結斗はカバンの紐を握り直す。


(僕は何としても、しっかりとした仕事につく必要がある。

これ以上、お母さんに無理をさせるわけにはいかない。


落ち着いたら、今までのお礼も兼ねて……二人で旅行するのも、いいな。


だから……頑張らないと。)



結斗:

「ただいまぁー。」


(あれ?買い物かな)


「……ただい……」


胸の奥が、ざわりと揺れた。


結斗:

「お、お母さんっ?!」


部屋の奥で、母は床に座り込んでいた。

服は乱れ、腕には赤黒い痕。

息をするたび、苦しそうに肩が上下する。


母:

「うっ……結斗……

外に行って……なさい……」


母の言葉を聞き終える前に、結斗は駆け寄っていた。


結斗:

「なにがあったんだよ……!

今、救急車を――」


男:

「あん? 誰と喋って……」


鈍い声が、背後から落ちてきた。


「おう、お前か。

呑気に学生なんてやってないで

さっさと働けよ。」


結斗:

「お前は誰なんだよ!

人の家に上がり込んで!」


男は鼻で軽く笑った。


男:

「さすがに覚えてないか……。

じゃ、またお金借りにくるからよ。

頼むぜぇ、お二人さん!」


男は返事も待たず、

そのまま玄関のほうへ歩いていった。


母:

「……結斗……ごめんね。

守れなかった……。」


母は震える手で、

散らばった封筒と財布を抱き寄せていた。


結斗:

「あの人は……誰なんだよ!」


母は、すぐには答えなかった。


母:

「できれば、一生会わせたくなかった……

もう、隠せないわね。


結斗の……あなたの父親だった人よ。


今はふらふらと仕事もせずに遊び回って、

お金がなくなったら……うちに来るの。」


結斗:

「警察にッ……」


母:

「いいのッ!

あとはお母さんが何とかするから。

結斗は……自分の事だけを考えてなさい。

──いいわね?」


結斗:

「ッ……。」


僕は何もできない自分を、悔やんだ。

母は、今までもずっとこうして一人で我慢を……。


(……。


法律なら、何かできるかもしれない。)


結斗は唇を噛みしめた。


(調べてみるか。

自分にも、できることを探さないと。)


結斗は母の様子を見守りながら、

法律について調べ続けた。


高校を卒業し、

在学中から進めていた就職の準備をもとに、

リストアップした法律事務所を、

一軒、また一軒と回った。


一軒目、二軒目は待遇は良さそうだった。

けれど、どこか心に引っかからない。



──そして、三件目。


ビルの前で、

ほうきを持った男性が地面を掃いていた。


その男は、顔を上げると、

屈託のない笑顔で声をかけてきた。


──続く──

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