表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAW ORIGIN —— 見えざる法のはじまり ——  作者: おまる
第2章:ラル編 ─ LAW MAKER ─
19/31

【第5話】 調和分配の法 ― 届く平等 ―

まだ法が整っていないこの世界では、

今日も法学校で授業が行われていた。


黒板の前で、講師が古い資料を広げる。


「かつて“均地配分”という法がありました。

すべての人に土地を平等に分け与える――理想の制度。


しかし……結果は失敗でした。」


ラルはペンを止め、小さく首を傾げた。


「……どうして、失敗したんですか?」


講師は、ほんの少し寂しそうに笑った。


「人が、同じではなかったからです。


でも、だからこそ。

今の私たちは再建のために、この法を“もう一度”試そうとしています。


来月から、“調和分配法”として運用が始まります。」


(……昔は失敗しても、

今の人たちなら……違う形にできるのかも。)


ラルの胸の内に、小さな光がぽつりと灯った。



数か月後。


街では、新しい法の試験運用が始まっていた。


“誰にでも平等な面積の土地を分け与える”――

理想のはずだった。


けれど現実は、少し違った。


「日が当たらない土地じゃ作物が育たない!」

「遠すぎて毎日通えないよ!」

「こっちは石ばっかりだ!」


不満と諦めが街中でぶつかり合う。


ラルはその様子を見つめ、

ノートを胸に抱きしめた。


「……やっぱり昔の法だし。

失敗したって記録があるくらいだから……

そう簡単にはいかない、よね。」


ユラは髪を耳にかけながら、穏やかに微笑んだ。


「ええ。昔は一方的に決められて……

意見を言える場所もなかったもの。


不満だけが溜まっていったのよ。」


ラルは頷きながら、視線を人々に向けた。


「でもね、今の人たちは……

ちゃんと“理由”を考えて怒ってる。」


ユラはその言葉に少しだけ目を細めた。


「……そうね。

昔の失敗は、今のための材料になる……

本当に。」



数日後。


学校では、法の見直し会議が開かれていた。


教師、生徒、町の代表が集まり、

真剣な声が飛び交う。


「距離や家族の状況も考えるべきだ。」

「一年に一度は、意見を出し合える場をつくろう。」

「配分者は交代制にしよう。不正を防ぐためにも。」


ラルは窓際で静かに息を吸った。


(……人が、自分の頭で考えて、直そうとしてる。

これが“生きる法”なんだ……。)



翌日。


街の掲示板には、改訂された文面が貼られていた。


《調和分配の法 改訂版》


・配分は距離・家族・環境を考慮すること。

・年に一度「交声(こうせい/声を交わす)」の集会を開くこと。

・管理者は交代制とし、不正が発覚すれば

権限を永久に失うものとする。


ラルはその紙を見つめ、

こっそりと息を吐いた。


(……これで、しばらくは大丈夫そう。)


ラルはペンを構え、

少しだけ悪戯っぽく笑った。


「……念のためっと♪」


そう言いながら、最後の一文を追記した。


附則:もし、この法が迷ったら――初心に帰る♡


──カンッ。


淡い紫の光が紙面に広がり、

ノートがほんのり嬉しそうに光を吐き出した。



翌朝。


街には、少しずつ笑顔が戻っていた。


老夫婦 「これなら毎日通えるわね」

子ども 「ぼくの畑、日が当たるようになった!」


ユラはラルの横に並び、

そっと髪を耳にかけた。


「……空気が変わったわね。」


ラルはノートを胸に抱き、

ふんわりと微笑んだ。


「……うん。でも、これで終わりじゃない。

たぶん、どこかでまた迷っちゃうと思う。」


ユラは柔らかく目を細めた。


「それでいいのよ。

完璧な法なんて、誰にも描けない。


でも――ラルなら迷っても、

ちゃんと“見つけられる”わ。」


その言葉にラルは照れたように笑い、

空を見上げた。


「……へへ……なんか嬉しいかも♡」


風が頬を撫で、

紫の光が空へふわりと溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ