絶対に許さない
「鈴中さん、俺、最近運転し始めた元ペーパードライバーで……」
「部長様……素敵です」
ウマミイは全く見ていないが、背後からは高速で走ってくるラブドールの素体が徐々に迫っていた。部長が意を決した表情で
「……鈴中さん、シートベルトしてるよね?」
「はい……」
「ちょっとこれから、急ブレーキ踏むけど、いい?多分あのポンコツは避けきれずに、この車の後ろにぶつかると思うけど……」
「お好きなように……」
ウマミイはもう完全に心酔した表情で部長を見ている。部長はチラッとウマミイのシートベルトを確認すると
「行くぞ!スリー!ツー!ワンッ!」
思いっきりブレーキを踏み込んだ。
急停止した軽自動車は少し前方に滑って無事停まり、背後から高速で走って来たラブドールは衝突を回避しようとして横の対向車線に逸れ、走って来た大型トラックのタイヤに巻き込まれ、瞬時にバラバラになった。部長は慌てて軽自動車を発進させる。
無事にウマミイの住むマンションの前にたどり着き、荷物を持ったウマミイが降りると部長は
「あのポンコツが迷惑かけた事故現場見てくる……」
疲れ果てた表情でそう言うと帰って行った。ウマミイはずっと、去って行く軽自動車を名残惜しそうに見送る。
ウマミイは自室に戻ると、部長から貰ったメモを大切そうにビニール袋に入れ、そして新品の服一式を広げると、ハンガーにかけて嬉しそうに眺め始めた。そしてネットの通販サイトで額縁を注文する。
「ああ、幸せだなあ……大好きな人との思い出が増えていく……」
エアコンを入れ、上着を脱ぎ、冷蔵庫から出した軽食を食べながらテレビを観ていると、男性アナウンサーが深刻な表情で
「……またタヌポーズ・エクストラが事件を起こしました。本日午後、市道で起きた衝突事故について警察が調べた所に寄りますと、トラックに衝突した物体の所有は、タヌポーズ・エクストラの……」
ウマミイは特に何も考えずにチャンネルを変えてバラエティを流しながら、パソコンを立ち上げ、そのまま風呂へと行った。
ウマミイは風呂から出てくると、バスタオルを巻いた身体のまま、パソコンに向き合い、AI画像サイトを立ち上げる。そして
「……星空のドライブ、王子様、ツインテールでお姫様な私、追ってくるマネキンサイボーグ、夜空で煌めくユニコーン」
などと恥ずかしげもなく言いながら
カチャカチャカチャッターン!カチャッターン!
キーボードに小気味良く打ち込み「決まった……」という感じの満足げな顔をした。
ウマミイは頬を染め、股に手を伸ばし画像が出てくるのを待つ。そして出てきた画像に驚愕して固まった。そこには、不気味な髑髏マークの上に「絶対に許さない!絶対にだ!」と派手な字体で真っ赤な大文字で書かれていた。




