初めてのプレゼント
モニターが消えると課長は少し焦った様子で風呂から上がっていき、ウマミイは気持ちいいのかそれから三十分程浸かったままだった。そしてふと
「湯冷めしちゃう」
と呟いて浴槽から出ると、タオルで身体の水分を拭き取り、そして絞ってから脱衣場へと入る。
畳まれていた新品の下着とパーカーとストレッチジーンズの上にメモ用紙ご置かれ
「これ着てください。ビールかけた迷惑料で全部あげます ナカマ」
と書かれていた。
タオルを落としたウマミイは思わず駆け寄るとしゃがみ込み
「ほわああああ……ひゃひーん!」
奇声を上げながらメモ用紙と服と下着に頬ずりして
「プレゼント……部長様からの初めてのプレゼント……」
しばらくそのまま頬ずりをし続けた。小さなテーブルに置かれたウマミイのスマホからルリの声で
「風邪引くから早く着なさい」
ウマミイは驚いた表情になると
「……わっ……私が着たら新品じゃなくなる……」
「……そのまま保存したいのね?」
「うっ、うん!家に飾る!このメモも額縁に入れるから!」
異常な事を言い出したウマミイにルリは大きく息を吐くと
「わかったわ。でも着ないと全裸よ?あなたの服は洗濯されているし」
「……でも着たくないの」
しばらく沈黙が続くとルリの声が
「……そこの下着入れにちえみさんのシミーズとショーツがあるから借りなさい。一番下のものは使ってないわ」
全く躊躇無く取り出して着始めたウマミイにルリは呆れた声で
「何の断りもないと、窃盗だけど?」
ウマミイがスマホの方を向いて固まると
「いま課長さんのスマホに連絡を入れたら、どうぞって。隣の部屋に服もあるからそれを着てって。今屋敷の蔵にいて忙しいそうよ」
ウマミイは安堵した表情になった。
十分後
課長のシャツとスカートを履いたウマミイが、ルリが呼んだバイク配達員に玄関前で、紙袋に入れた服と下着とメモを渡し、自宅へと配送を頼んでいた。
「大事なものなのでお願いします!」
念を押すウマミイに配達員は爽やかに応えてバイクは山道を降りていった。
ウマミイはその後ろ姿を祈りながら見送った後、屋敷内へと戻り、すっかり綺麗になっていた誰もいない居間で一人何かを考え出した。
ポケットのスマホからルリが
「帰る?」
「うん……プレゼントが心配だし……」
「そうね。一旦帰りましょうか」
ルリがそう言った直後だった。縁側の先の広い庭の端から
「かいり!それを止めてくれ!」
「ボス!無理だって!」
「たぬうー!」
「教祖様危ないです!」
「いたっ!腰に当たったっす!」
「ワンッ!」
皆の叫び声の後、ヒップホップっぽいルーズなビートが流れ
「ゴンマヘッ!デッデデデッデデ!ゴンマヘッ!」
低い機械音声で何者かが歌いながら縁側からウマミイの身体に飛び乗って来た。
「ゴンマヘッ!ヘッヘッ!ゴンマヘッ!ライドオン!イエイ!ゴンマヘッ!」
というの謎の声を聞きながら頭を打ったウマミイの意識は薄れていく。




