ルリ様
スマホの画面に写った女性は続けて
「ウマミイ、就職活動をほぼしなかったあなたが、ギリギリで親しいゼミの教授にどこでもいいのでお願いしますと頼み込んで、その人脈で何とか入れた会社でしょう?」
ウマミイは口を真横に結んで頷くとしばらく黙った後
「そうだけど……ここ地方だし、慣れてない街で……」
ボソリと呟き、また女性が
「あなたの出身校である東京の名門私立床川記念大学関連企業の床川ホールディングス傘下で、最も勢いのある直系企業よ?名家床川の御曹司が社長でもある。この地方都市も犯罪率は高くない。初任給は東京並みで、主要食料品の物価は東京の3分の2、とても良い就職先だと思うわ」
「うう……そうだけど……」
項垂れていたウマミイはいきなり思いついた表情で顔を上げ、両目を輝かせると
「ルリ!その格好と口調だと私はアドバイスを素直に聞けないの」
「どんな格好と口調が良いの?」
「えっとねえ」
ウマミイはルリに長々と服装と髪型の注文をつけ出した。
5分後
鼻ピアスにリーゼント、丸型サングラスとピチッとした黒ラバーのボンデージスーツを身に纏い、鞭を持ったルリが
「おいウマミイ、わかってんのか?就職は人生の転機なんだよ!体力温存して寝る!そう言うエブリデイのパワーを大事にすることが、ビジネスでサクセスする事に繋がるんだよ!」
スマホから「ビシッ」と鞭を叩いた音が響き渡り、ウマミイは涎を垂らしそうな表情で
「ルリさまあ……わかりましたあ……」
スタンドで立てたスマホに向けて土下座する。さらにルリは
「早く風呂に入って寝る!馬臭えんだよ!駄馬が!」
鞭を叩きながら暴言を吐き、嬉しそうにそれを聞いたウマミイは頬を真っ赤に染めて快感でブルブル震えると
「はあい……仰せのままにい」
そう言って股を押さえながら小走りで寝室を出ていった。ルリは軽くため息を吐くと、スマホのモニターは消える。
翌朝
女性用のスーツを慣れない感じで着込み、髪型をツインテールにしたウマミイが壁掛け時計をチラチラ見て時間を気にしながら、室内をグルグル回り
「ああ……緊張する……ソリューション企画部……どんな部なのか、貰った資料を読んでも分からなかったし……そうだ!ルリ様!教えてください!」
ポケットから出したスマホに話しかける。
すぐに音声だけで
「ミイさん、通常モードでお答えします」
ウマミイは少し残念な表情で
「はい、お願いします……」
「床川ホールディングス傘下である、株式会社ポラリスアンドウツロブネコーポレートのソリューション企画部は、昨年、太平洋の大国ポルメニア王国による宇宙開拓事業という予算千億円規模の超大型案件を単独受注成功し、元の企画課より企画部へと急遽昇格されました。現在、床川ホールディングス傘下企業の中でも非常に注目されているようです」
「はうっ!」
思わずウマミイはのけぞって倒れそうになる。
「つっ……つまりルリ様……ソリューション企画部は、会社期待の超エリート集団ということですか……天才秀才だらけの……」
「公開情報を確認する限り、その様な事実はありませんでしたが、その可能性が非常に高いと思われます」
「おっ、お腹痛くなってきた……教授もなんで私如きをそんな所に……」
ウマミイはトイレへと駆け込んで行った。




