旅行だめかもしれない
磨りガラスの引き戸になっている入口上に、真っ黒なモニターが設置されているのをウマミイは横目に、課長から身体を洗われていく。
「ごめんね。酔っぱらいたちが悪乗りしてて」
「いやーいいですよお」
ウマミイはまだ半分寝ているような表情で気持ちよさげに洗われていき、そして、銭湯のような広い浴槽に課長と入って行く。
しばらく課長と黙って浸かると
「なんかねー明日から休みでしょ?鈴中さん何する?」
「……久しぶりに地元に帰ろうかなと」
「うわーいいなーどこ出身?」
「◯◯県の櫻塚町ってとこです」
「そうなんだー私なんて、生まれた時からこの街でさー」
ウマミイが黙っていると課長が
「ついて行っていい?」
ジッとウマミイを見つめてきた。
「……んー」
ウマミイはしばらく迷い続け
「……ぜひ」
「やった!2人旅だね。飛行機?」
「高いけど速いし飛行機にしますか」
「そうしよう!」
嬉しそうな課長をウマミイが微笑みながら眺めていると、湯気が次第に人型になっていく。ウマミイがボーッとそれを眺めていると慌てて課長がかき消して、また湯気が人型になっていき、かき消してというのを繰り返していると課長が立ち上がり
「ゆうかちゃん!何か話があるの?」
辺りを見回した。
しばらくして返答が無かったので課長がまたお湯に浸かると
「この家に住んでる幽霊が居てね」
そう説明しかけた時、入口上のモニターが点き、先ほどレナと名乗った女性の全身が映ると
「えっと……かいりちゃん、ゆうかちゃんが一緒に旅行について行きたいそうです」
課長は一瞬固まると
「どうやって?ってかAIさん、今ゆうかちゃんと話せるの?」
レナは自信満々の表情で顔アップになると
「ふっふっふ……密かに裏の蔵に、タヌポーズの別会社で開発していた最強霊媒ロボを持ち込んだのよ!いま最終調整しているわ!」
よくわからないことを言ってきて課長が脱力しながら湯船に座り込むと
「鈴中さん、ごめん……旅行だめかもしれない……」
早くも諦めた声で言ってきた。ウマミイは、よくわかっていないぼんやりとした表情でそれを聞いている。




