飲み会
結局、宇宙飛行士の話はうやむやになり、正気に戻ったウマミイは、すき焼きパーティーの準備を皆と共に整えることになった。
居間の大きなちゃぶ台に鍋とコンロとビールや日本酒が準備され、十七時頃からパーティーは開始された。
派手に騒ぐヤマダとみかなを横目に、隅でウマミイがもそもそと白菜などを食べていると、御椀にドカッと焼けたすき焼き肉が入れられ、卵がかけられた。
入れた課長がニコッと笑い
「若者は食べないとね」
自らも肉を頬張る。
「……何か、リア充みたいで良いですね」
課長は吹き出しそうになり
「こんなのうちでは普通だよ。あ!タロウ!みかなちゃんに飲まして脱がそうとしない!」
課長はヤマダに注意をするとウマミイに向き直り
「AIさんから聞いたけど、部長の宇宙飛行士の件頼まれたんだって?」
ウマミイが黙って頷くと
「うちのAIさんはちょっとおかしいけど、悪い人格ではないよ。私やタロウはAIさんがいなかったら一般企業に勤めてはいなかっただろうし」
ビールを開けて飲み始めた。
「……よくわかんないですけど、今のところ、私は楽しいです」
「飲む?」
課長の言葉にウマミイは頷いて、ビールをジョッキに注いで貰い、乾杯した後、3分の1ほど飲んだ。
「あ、顔真っ赤だ。ごめん、苦手だった?」
課長にウマミイは呆けた表情で
「酔ってないれすー……」
そして据わった目つきになると
「私だってこんな人生送ってるはずじゃなくてえ……ほんとは高卒で地元で好きな人と結婚してえ……子沢山でえ……旦那を愛して、愛されてえ……ういー」
酔っぱらって語り出した。課長はウンウンと頷くと
「人生なかなかうまくいかないもんだ」
「恋愛ってなんなんれすかー!」
課長は少し飲んで食べた後
「……タイミングっていう人もいるし、妥協って言う人もいるし色々だね」
「つまり今こそ部長様に告白するタイミング!部長様!すっ……むぐぐぐ」
課長はウマミイの口を抑えながら
「酔った席の勢いはダメだって!」
「むぐぐぐ……」
ウマミイはそのまま意識が落ちてしまった。
ウマミイは夢を見ていた。
大学時代に掃除のおばちゃんのカツヨさんと女友達であり同期生でもあるポルメニア人姉妹のナーニャさんとセイさんと四人で飲み会をした時の夢だった。
「あたしも昔はねえ……」
くだを巻くカツヨさんの話を聞いたセイさんがふと
「ミイはどんな会社に就職したいんだ?」
そう尋ね、ウマミイは酔って赤くなった頬でニヘラと笑いながら
「給料よくてー好きな人がいてー同僚も上司も皆優しい会社ー」
ナーニャさんとカツヨさんが笑いながら
「そんな会社私が紹介して欲しいわ!」
「ミイちゃん都合良すぎるよー」
「でもーこの国の何処かにはあるでしょ」
セイさんが微笑んで
「考えとく」
「考えとくってなんれすかー」
ウマミイはそう言って幸せそうにビールにまた口をつけた。




