まだいけるし!
「鈴中さん!」
部長から真剣な表情で見つめられたウマミイは完全に勘違いした顔で
「はい……」
頬を赤く染めて頷いた。部長は真剣な態度を崩さずに
「さっき来た眼鏡のみかなとライダースーツのれいかは、宗教法人タヌポーズ・エクストラの教祖と信者だ」
ウマミイはまだ期待した顔で頷くと部長は
「そしてさっき画面に映った女は、太平洋の大国ポルメニア王国が造った低性能ポンコツAIだ」
いきなりパソコンの電源が点くと、先ほどの女性が画面にアップになって
「高性能高知能AIですけど!」
部長は本気で怒った顔で
「お前が好き勝手やるたびに、無実のみかなに罪状が増えていってるだろ!」
画面の女性は少しうろたえながらも怒った表情で勢いよく
「まっ、まだ!公然わいせつと、こないだの脱税と!それから去年の市内公園の壁を爆破した器物破損に、改造車での道路交通法違反と、タヌポーズ関連企業の工場爆破での周辺住宅への爆風被害と!あとポルメニアでの入国法違反での拘束と、日本での警察建物への爆破テロ容疑くらいでしょうか!ぜーんぜん!大したことないんですけど!一つだけ執行猶予で他は無罪になったし、裁判があるものも無罪にする予定だからまだいけるし!強い信仰に支えられたみかなちゃんなら余裕で耐えられてると思うんですけど!」
部長は言葉を失って、黙ってパソコンの画面に布をかけ、耳に入れる部分がガムテープでグルグル巻きにされたイヤホンを繋ぎ、物理的に沈黙させると
「……あのバカAIのお陰で俺達の生活はめちゃくちゃだ……全ての罪をなすりつけられ続けているみかなも壊れつつある……」
畳に座り込んで項垂れる。
鈴中は部長の背中に思わず抱きついて
「だっ、大丈夫です。私とルリが守りますから……」
「すいません……ルリさんにも頼んでおいてください」
「そっ、そんな……私達の仲じゃないですかあ……」
ウマミイがよくわからないことを言いながら、どさくさに紛れ、涎を垂らしそうな表情で部長の背中に頬を擦り付けまくっていると
「……えっと鈴中さん……?」
いつの間にか戻ってきていた課長に声をかけられる。
「あっ……」
慌てながらもウマミイはどうしても部長の背中を離れられない。
部長も力無く項垂れながら
「……あいつが余計なことをしなければ、俺も平和に……」
ブツブツと呟いている。
課長は全て察した表情で
「鈴中さん、前も言ったと思うけど、部長はモテるよ?いいの?」
ウマミイは必死に頷いて、ピトッと顔も、部長の背中につけた。課長は大きくため息を吐いて
「これは女同士で、今日は飲まないとダメだね」
と言った。




