考察
今、梨鈴はどこで何をしているのだろう。
あの半人半蟹の梨鈴が梨鈴なんだろうか。
それともあれは梨鈴の皮を被った怪物で本当の梨鈴はどこか別の所にいるんだろうか。
私は湯船に口まで沈めながら思考を巡らせた。
仮にあれが梨鈴自身なんだとしたらどうだろう。
梨鈴の中で魑魅魍魎が跳梁跋扈で百鬼夜行のパーリナイを決め込んでいるのか。
一緒に心霊スポットや墓地に行った記憶は無いから、私と一緒では無い時に何かの怒りに触れたのだろうか。
そうだとして蟹というのはどういうことだ。
何か霊的なものだとして、それが取り憑いていたとして、あれほどまでの具体的な身体的変かを伴うというのはどうにも考え難い。
なにしろ超常的な現象に巻き込まれていることには変わりないので、どの選択肢も否定はできないが、この線は薄いだろう。
それなら、その蟹星人とやらが本当に宇宙のどこかにいて、地球人の梨鈴の身体に寄生しているのか。
宇宙人が梨鈴の身体に寄生して、その実態が徐々に表出してきている。
今日私が梨鈴から聞いた話は置いておいて、実際にこれまで見てきた光景とは辻褄が合うようにも思う。
ただその場合、今から行動を起こして梨鈴を助けられるんだろうか。
仮に寄生されているのだとすれば、梨鈴は既に思考を乗っ取られている。
いきなり蟹星人の出自を語りだしたのがその証左だ。
時すでに遅しであったとして、友達を助けたい気持ちに変わりはないが、状況としては絶望的かもしれない。
落ち着け、寄生されたと決まったわけではない。
あれが梨鈴じゃないということもある。
蟹星人が地球に来た時に梨鈴に化けて、本物の梨鈴をどこかに隠してしまった。
隠している、というのは希望的観測が過ぎるかもしれない。
梨鈴を殺して、その皮を被っているということも考えられる。
地球に縁も所縁も無い蟹星人が、手ごろな隠し場所等用意できるものだろうか。
梨鈴の屍を被っているのなら、それは広い意味で寄生と変わらないのかもしれない。
「よし。」
私は自らの頬を張った。
寄生されていると考えて行動を始めよう。
明日、梨鈴は学校に来るだろうか。
また、梨鈴と笑いあえるといいな──




