表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蟹星人の怪  作者: am650
3/5

呼吸

──悪夢のような時間が過ぎ、家に帰った私は洗面所の鏡で自分の顔をぼんやり眺めていた。


今日は訳のわからないことが多すぎた。

梨鈴(りり)は意味不明な告白をした後はいつもの調子で、取り残された私はその勢いに振り回されていた。

解散を切り出すこともできずに、ただ梨鈴にリードをつけられた犬のように、ただ梨鈴の塩素で若干色の抜けたポニーテールと右手のハサミをぼんやり見つめながら歩いていた。


鏡の前で自分の右手を見る。

お腹の辺りを見る。

もう一度右手を見る。


私の手は、ハサミじゃない。

梨鈴じゃどうしちゃったんだろう。

ぼんやりと右手の手相を視線でなぞる。


「はぁ、今日は疲れたな……」


フラフラとした足取りで私はお風呂に入った。

湯船の中で私は梨鈴の話を思い出す。

蟹星人の故郷は水の惑星だと言っていた。

一面が水に覆われているというのはどんな景色なんだろう。

簡単に想像できるようで、海の真ん中なんかに行ったことはないから中々想像できない。


私はお湯の中に顔を沈めた。

今日起きたことを忘れてしまいたかった。


(梨鈴は海の中でも呼吸ができるのかな……)


(海の中で呼吸……)


(水の中で呼吸!?)


私は違和感を覚えた。

私たちは海に近い街に住んでいるから、毎年夏休みになると海水浴に出かけるけれど、梨鈴は泳ぎが得意なわけではない。

なんなら、昨年皆で海水浴に行った時なんて梨鈴が溺れかけて大変だった。


私はお湯から勢いよく顔をあげ、大きく頭を振って水を払った。


「今日会った梨鈴は……誰!?」


蟹星人がいるとかいないとか、そんなことはわからない。

ただ、今日会った梨鈴は私のしっている梨鈴ではなかった。


「ほんとの梨鈴はどこにいるの!?」


心に一筋の灯がともった。

希望と呼ぶにはあまりにも何もわからない状況だが、友達がどこかで助けを求めているかもしれない。

それだけで十分だった。

もしやすると、梨鈴が蟹星人だということに理解が追いつかなくて、心の防衛本能がわかりやすい、漫画みたいな結論を用意しただけなのかもしれない。

しかし、そんなことはこの際どうでもよかった。


「梨鈴を助けなきゃ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ