47.
その後レインとは今後のことを少し話してから別れた。
彼女お気に入りのハーブティーの茶葉も分けて貰った。
侍女アイリがティーセットを片付けに行った為完全に一人になる。
窓の外では小鳥が可憐に鳴いていた。
それに気づける程に気持ちは落ち着いている。
全部レインのお陰だった。
「……味方にしておいて良かった」
深々と溜息を吐きながら言う。心からの気持ちだった。
当然カーヴェルやアイリたちにも感謝している。
けれどレインは協力者として別格の存在だった。
医療知識がありこちらのメンタルケアをしてくれるというのが心強い。
しかしだからこそ思う。
原作でエリカに堕胎薬を飲ませようとした彼女の行動はおかしいと。
レインは自分の精神面に問題があるのを自覚していて今回のハーブティーのようにセルフケアもしているのだから尚更。
「それに彼女ならもっと上手くやると思うのよね」
オルソン伯爵家のメイドから軽やかに情報を聞き出すぐらい話術に長けているのだから。
疑うということを知らない原作のエリカ相手なら幾らでもケビンとの関係なんて聞き出せただろう。
当時の二人が夫婦とは言え堕胎薬なんて必要無いレベルの清い付き合いなことぐらいすぐわかる筈だ。
「誰かが意図して暴走させたとしか思えないわ」
原作の最終回でしれっとレインを妊娠させていた第二王子クリス。
彼が関与しているのではと疑っているが現状それを口に出せない。
相手が第二王子で不敬扱いされるのも問題だが何より理由を説明出来ないからだ。
事件がそもそも起こって無いし、私と第二王子には現状直接的な関りは無い。
そしてクリスは女好きで軽薄な所もあるが色々気の付く好青年として原作では描写されていた。
なので恐らくこの世界でもそういうイメージの人物として存在している可能性が高い。
今のところクリス王子は実は腹黒でレインの精神を壊そうと画策してますよと私が言っても誰も信じないだろう。
私自身だって本当にそうなのか確信が持てないのだから。
乱暴に言うなら彼を疑う理由は最終回で唐突にレインと結婚していたから程度でしか無いのだ。
(レインがあまり幸せそうに見えなかったというのは主観でしか無いし……)
ドレス姿の彼女は美しかったがその微笑みは虚ろに思えた。
でもその笑みが空虚だと言うのも私の思い込みに過ぎないかもしれない。
先程とは別の理由で気が重くなる。
堕胎薬をエリカに飲ませようとしたのがレインの一時的な気の迷いなら良い。
それなら今回は同じことは起こらないだろう。
私は絶対ケビンなんて愛さないし向こうもきっと同じだ。
仲の良い夫婦になることは無いのでレインも嫉妬に狂ったりしない。
ただ問題は第三者がレインを陥れようとしている場合だ。
「……相手が誰だろうと彼女を、破滅させたりしない」
レインが自分の意志で男装を辞めドレスを纏って第二王子と結婚して幸せになるのなら祝福する。
けれどそうでない場合は阻止したい。
相手が第二王子だろうとだ。
彼女はこの家に必要な優秀な医師で、レオとロンに必要なまともな大人の親戚だ。
そして幸せになって欲しい一人の女性でもある。
私は自分だけでなくレインの周辺にも気を配ろうと改めて誓った。




