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第1話 | 現実と幻夢 (げんじつとげんむ) 1/3

夢を持つことは、いつからこんなにも息苦しいものになったのだろう。


家族の期待。

社会の枠組み。

「幸せになりたい」と願う心すら、誰かの笑いものになる。


これは、自分の夢を封印し、心の奥底にしまい込んだ一人の少年の物語。

だが、消えたはずの夢は、ある日ふと、筆の先から滲み出す。


その一歩が、物語の始まりとなる。

                     バクペン


  20年前――

「おお、また読んでるよ。あれは何?モニカの仲間たち、400号?」

「ねえママ!見て!モニカってすごく強いんだよ!ロケットを宇宙に飛ばせるんだって!」

「はいはい。」

「きっと立派な弁護士になるよ」――父が母に言った。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 成長するにつれて、大人たちはいつも同じことを聞いてくる。


「ねえ君、大きくなったら何になりたい?」

「幸せ!」

「えっ?」


 幼い頃からそれが分かっていた自分は、恵まれていたのだと思う。

 家族を見ていて、キャリアの成功が必ずしも幸せな人生を意味するわけではないと気づいたからだ。

 母は、小さな町で評判の高い民事裁判官だった。

 外ではみんなが母を知っていて、その成功を褒め称えていた。

 だが家に帰ると、母は毎晩、自室で一人泣いていた。

 父が私たちを置いて去ったことで、特に母と兄は深く傷ついていた。

 私は、彼らの挫折、悲しみ、苦しみ、怒りを見て、幼いながらも「こんなふうに感じ続けても仕方がない」と思った。


「おはようママ!朝ごはん作ってるの?」


 母は涙を拭ってから、微笑んで答えた。


「うん!おはよう、タツ――じゃなくて、ナツ!」


 母は私と兄の名前をよく間違えた。

 最初に呼ぶときに正しく呼んでもらったことは一度もなかった。

 でも気にしてはいなかった。私は後に生まれたから、母が兄の名前に慣れていたのは当然だと思っていた。

 面白いことに、母は兄の名前も毎回最初に言い間違えていた。

 さらに、もっと年上の兄が一人いて、その名前だけは絶対に間違えなかった。


 私は、いわゆる「末っ子」、家族のしっぽだったらしい。

 後に学校で習ったことだが、両親が40代で私を産んだことで、遺伝的な疾患を持って生まれる確率は3.3%ほどあったそうだ。

 無事に生まれたことをありがたく思っている。

 私は両親のことが大好きだった(父には会ったことがないが)。

 いろんなことがあっても、自分は「幸せな子供」だったと思っている。

 自分の世界は、きっと幸せになれる。ジブリ映画を観て育ったんだから!

 学校も悪くなかった。引っ越しが多かったけれど、それが逆に、新しい友達を作る術を教えてくれた。

 ただし、それが後に高校最後の年に裏目に出ることになる。

 でも、「いい結婚さえできれば、仕事なんて関係ない」と本気で思っていた。

 長い目で見れば、人生はきっとうまくいくと信じていた。

 本当に、そう思っていた。


 しかし、少年が大人へと変わっていく中で、物事は少しずつ変わっていく。


「大きくなったら何になりたい?」

「幸せに!幸せな人生を送りたい。結婚して、子供が欲しい!」

「えー?なんか女の子っぽいな」


 確かにそうだった。


 一人のときは、よく恋愛アニメを見ていたし、父親という存在もいなかったから。


 でも――


 一番つらいのは、それが全部社会のせいとは言い切れないってわかってることだ。


 自分の中にもあるんだ。もっと成し遂げたい、もっと自分を追い込みたいっていう気持ちが。

 ただ「落ち着く」だけじゃ物足りなくなる。


「ママ!僕、大人になったらやりたいことがある!」

「えっ、そうなの?なに?」

「作家になりたい!」


 あの時の母の顔――あんな表情は初めて見た。


 母が泣く姿は何度も見たことがある。でも、それとは違っていた。


「えっ、どうしたのママ?」

 母の目には涙が浮かんでいた。でも、それは痛みから来るものではなかった。

「私、どこで育て方を間違えたの!?なんでうちの子たちはみんな、プータローになりたがるのよ!?」

「あなたはやっと、まともに考えて、ちゃんとした大学に行くと思ってたのに!立派な弁護士になれるって…成績だって良かったのに…!」

「ママ?わ、わかってないよ、ぼ、僕は――」

「なんで私だけこんな目に…不公平だわ…」

「上のお兄ちゃんの大学費用も払ったのに、あの子は学位を全く活かしてない!毎日、何もしてないじゃない!」

「次のお兄ちゃんには卒業間近で学費を払ったのに、中退だなんて…最後の年だったのに!せめて卒業だけでもしてくれれば…!」

「そして今度は、あなたまで…!ごめんなさい、もう耐えられる自信がない…」


 それは――


 失望だった。


 あの日、中学生だった自分は、夢のことをもう誰にも話さなくなった。

 親友だった母にも。

 命を預けられると思っていた友達にも。


 だって、自分の母親ですらあんな反応をするのなら、他の人たちはどうなる?


こんにちは、みんなさん!ホックステープラー先生です。

人生で初めて、自分の書いたものを「公開」しています。

ずっとずっと、書いたものは秘密にしてきました。でも今日、それをやっと解放します。

だから…これは僕にとって、とても大きな瞬間です!


しかも、もちろんやるなら全く違う言語で、普段使わない全く違うサイトで、全く違うスタイル(ライトノベル)で、全く違う読者に向けて、地球の裏側から!

そう、実は僕、ブラジル人なんです!ドンッ!


読者の前に自分をさらけ出すのはこれが初めて。

初めて読者の前に姿を現します――そして君に決めた、日本の皆さん!!!

えっ、ビガチュウじゃないの?ごめんごめん!


アニメとマンガは、僕が7〜8歳の頃からの情熱です。

最初にネットで見つけた『ワンピース』のエピソードにハマって…でももちろん、それより前にテレビで『ドラゴンボール』を見てたし、『聖闘士星矢』のDVDもたくさん持ってました!

それに、ドラゴンボールZの格闘ゲームも大好きだった!

嘘つかないで、君も一度はかめはめ波を撃とうとしたことあるでしょ?


「どうやってネットでワンピース見つけたの?」って?

…はい、僕は海賊アニメを、海賊版で見ました。

尾田先生、ごめんなさい!子供だったんです!

今はちゃんと大きなマンガコレクションあります!逮捕しないでください!

……あれ?なんで自分の子供時代の罪を暴露してるの!?バカなの僕?!


…とにかく。

尾田先生は、ブラジルのマウリシオ・デ・ソウザ先生に読書中毒にされた後、初めて「素晴らしい物語」を見せてくれた存在でした。

今でもその感動に恋しています。


ご存知かもしれませんが、実は日本国外で最も多くの日本人コミュニティがあるのはブラジルなんです。

僕の町には、日本からの移民や日系人がたくさんいました。

日本人の友達も多かったし、日本生まれの両親を持つ日系ブラジル人の彼女もいました!

……嫉妬してます?ふふふ、冗談です冗談!

嫉妬しないでくださいね。きっとあなたにも素敵なパートナーが現れます!

え?読者にウソはつくな?うるさい!夢は見てもいいじゃないか!


冗談はさておき――

この物語は、僕自身の気持ちにとても近いテーマなんです。

昔から不思議でした。「なぜ、“書くこと”についてのアニメや映画、物語がこんなにも少ないんだろう?」って。


スポーツなら全部作品になってるし、あらゆる職業をテーマにしたメディアもある。

人間のあらゆる感情も、美しく描かれてきた。

アニメに至っては、炭酸飲料の缶が美少女に変身する話まであるのに!


でも、「作家になりたい」という気持ちを真正面から描いた作品って、詩人の一部を除けば、ほとんど見たことがないんです。

作家がインタビューで話すことはあっても、それだけじゃ足りない。


そして、ブラジルという国にいた僕は、こう言われ続けてきました。

「日本語もできないのに?」

「ブラジルに“作家”なんて職業ないよ!働けよ!」


……それでも言いました。「僕、バンプのマンガ編集者にもなりたい!」って。

他人の作品を後押しして、その人の最高の形を一緒に作る。それも僕の夢のひとつです!


だから――

それこそが、この『バクペン』という物語に込めた想いです。

「書くこと」の壁を乗り越えるための物語。

そして、君にもきっと、それができると僕は信じています。


――「なにライバルを応援してんの!?バカか!?」

ゴホンゴホン…新しい先生がナツに追いつけるように願っててくださいね!


それでは、楽しんで読んでください!!!

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