Ⅲ・遭遇 インタビュー
【ひなちゃんマガジン 遭遇 編】
★インタビュアー…荻窪
Ⅲ…「遭遇 / フィールド戦闘曲 (セレテミス大陸)」
荻窪「…それで、俺に代理を?」
ひな「スクィの熱が冷めるまではね。不服かい?」
荻窪「いいえ。と言ったらウソになりますが…。
ないでしょ、拒否権。」
ひな「キミがそう感じるなら、ないだろうね。」
荻窪「やりますよ。神田サブの機嫌取りよりはマシです。」
ひな「苦労人だね。」
荻窪「じゃ、始めますよ。
今回は、chapter3の遭遇という曲について聞いていきます。」
ひな「よろしくお願いします。」
荻窪「この曲は戦闘曲ということですが、どのような前提が?」
ひな「プレイヤーの旅は、セレテミス大陸という場所から始まります。
その大陸のフィールド戦闘曲として作りました。」
荻窪「それを踏まえてどのような意識を?」
ひな「派手過ぎず、同時に戦闘の疾走感を表現するようにしました。
もっと言えば、【戦闘曲でありつつも、意味をもたないこと】を心がけたんです。」
荻窪「意味をもたない、というと、どういうことでしょう。」
ひな「例えば、強大なボス戦や、因縁や繋がり、物語や世界に大きく関わる敵などもいますが。
その場合の戦闘曲には【意味】が必要になりますよね。」
荻窪「その敵が、どのような敵で、なぜ戦っているのか、あるいはどんな環境なのか。
などですかね。」
ひな「その通りです。
しかし、フィールド戦闘曲の場合、そうではないんです。
加えて、この曲は最初の大陸の戦闘曲ですから。
【無機質】でなければありません。」
荻窪「仮に【意味】が存在するとしたら、どのような問題が?」
ひな「プレイヤーに【無駄な思考】をさせることになります。
音楽って、案外【伝達能力】を持っている事象なんです。
流れている曲の【方向性】って、意外と無意識に伝わりやすいんですよ。
極端にいえば、【哀しい】とか【怖い】とか【楽しい】とか、
意外と聴衆には伝わるんですね。」
荻窪「確かに。しかし【無駄な思考】というのは?」
ひな「そうですね。
【そこに意味があるかもしれない】と騙すこと。と言えばいいですかね。
なにより、何度も繰り返されるフィールド戦闘中に
【意味ありげな音楽】が何度も流れてくるのって、結構違和感あると思うんです。」
荻窪「それはなぜでしょう。」
ひな「その戦闘が【なんのための】戦闘なのかが重要だからです。
例えばボスや、その他の重要な敵は【越えるべき壁】【興味の対象】
そしてなによりも【かみ砕くコンテンツ】なんです。
しかし、フィールド戦闘は【こなす物】【道のり】もっと言えば【作業】なんですよ。」
荻窪「言われてみればそうですね。
ゲームをしていて、当たり前ですが【雑魚との戦闘】と【ボスとの戦闘】は感覚がまるで違います。」
ひな「意味のある戦闘、を際立たせるためにも、
そうでない戦闘、を出来るだけ【作業として】の枠に留めてあげることが大切なんです。
そして【音】はその演出に非常に大切な要素です。」
荻窪「では、その【意味のない戦闘曲】はどのように作ったのでしょう?」
ひな「簡単。に思えますよね。」
荻窪「思えます。ボス戦闘曲や意味のある戦闘曲よりも。」
ひな「実は、意味のない曲こそ【作曲で最も難しい】と言えます。
あくまでボクの考えではありますが。」
荻窪「面白くなってきましたね。なぜそう思うのでしょうか。」
ひな「そもそも【音】って、既に意味ありげなんですよ。
楽器ごとにその方向性は違いますけど。
ピアノだったら、どの音鳴らしても【哀愁】が存在しちゃったり。」
荻窪「なるほど。」
ひな「それらを組み合わせて、最終的に【意味のないもの】を作らなければいけないんです。」
荻窪「確かにそう聞くと、難しく思えます。」
ひな「この曲の場合、調は常に一定、
ヴァイオリンストリングスも基本的に同じ動きを繰り返しています。
その上に、金管楽器でメロディが鳴り、変容していきます。
パーカスのスネアも、ほとんど最初から最後まで、同じ譜面です。」
荻窪「後半は少し雰囲気が変わりますよね。」
ひな「変わります。
しかし、前半の一定な感じを引きずった状態で変わっている作りになっています。
一本調子では【意味のない曲】というよりも【手抜き】になっちゃいますから(笑)
なので一応後半はオトシのパートになるんです。」
荻窪「最初に【意味のない曲】であると同時に【疾走感】を。
と言っていましたが、それはどのように?」
ひな「パーカスに委ねています。完全に一任しました。」
荻窪「シンプルですね。」
ひな「その通りです。ゆえに【確実】な方法なんですよ。
テクニックを使うことが【いい作曲】ではないですから。
大事なのは【なにが必要か】です。
この曲は、【戦闘曲】だと分かるように、そして【無機質】でもある音楽でなければいけなかった。
そのための最善策として、【シンプルな構成】が必要だと考えたんです。」
荻窪「しかし、少し気になる点があります。」
ひな「なんでしょう。」
荻窪「後半、ハープが存在しますが、
このハープは左右に移動していますよね。」
ひな「オートパンニングですね。
一定間隔でステレオを移動するんです。」
荻窪「これはどのような意図で?」
ひな「二つ理由があります。
一つ目は、ハープの定位置に困ったからです。
本来のハープの位置は左奥なんですが、
この曲の構成の場合、そこだと音が沈んでしまうんですね。
しかし、ハープの音色は、【意味のない曲】の中に、
【ファンタジーの曲】であるという前提条件を宿してくれるので、
どうしても使いたかったんです。」
荻窪「なるほど。
確かにハープは、【ファンタジー】を感じさせる音色ですね。」
ひな「二つ目は、【テクノ】を意識した。という理由です。
テクノは無機質なジャンルですよね。
平沢進さんは別ですが。」
荻窪「確かに、電子音には生楽器のような【意味】がありませんね。」
ひな「その中でよく使用されるのが、オートパンニングなんです。
テクノを聴くと、左右に移動するリフが割と多いことに気付くんですね。
そしてそのリフの旋律は【同じ音型を繰り返す】場合が多いです。
それを踏まえた上で、【ファンタジー】の色をもつハープを、
【同じ音型】の旋律でオートパンニングさせることで、
【色はファンタジーなテクノ感】を出そうと考えたんです。」
荻窪「なるほど。
テクノが好きなんですね。知ってますけど。」
ひな「作曲の入りはテクノでしたから。
それに【レイディアント】の曲の構成は、意外とテクノの構成で作ってたりします。
ガワはオーケストラだけど、やり口はテクノ。みたいな。
そうでない曲もありますが、ヘルヘンム洞窟や冥都ニヴヘンム、
ボス戦曲の【強敵】は、かなりテクノ的な譜面になってます。
この辺りの深堀は、また別の機会にしましょうか。」
荻窪「そうですね。今回はありがとうございました。
次回は、【chapter4 クロリスハイム高地】について聞いていきます。」
ひな「次回もキミがやる?」
荻窪「スクィの回復を心からお祈りしますよ。」