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プロローグ
線香花火の音が、静かに、けれど確かに、夜の奥で鳴っている。ぱち、ぱちと、まるで心の奥底を叩くような、小さな爆ぜる音。その中心に、ひとつの光があり、周囲を五人の影が囲んでいる。
記憶は花火のようだ。
彩るのは、ほんの一瞬の出来事。
その一瞬のきらめきの外側には、闇が必ず潜んでいる。
まばゆい光の裏には、消えない影がある。
花火の音が少しずつ大きくなり、中心の光が、ゆっくりと消えていく。
──闇は、人を飲む。
たとえ、失いたくない時間であっても。
たとえ、守りたかった場所であっても。
大事にしていたものさえも。
別れの言葉すらないまま、一瞬で、すべてが消えていく。
誰かの嘘も。
自分の嘘さえも。
わからなくなってしまった。
それでも、私たちは、嘘を吐き続けた。
いつか、自分がわかるように。
いつか、それが本当になるようにと。
最後に、大きな爆ぜる音が響いて、わずかに光が戻る。そしてすぐに、それも消えていった。
──私たちは、
嘘吐きだ。