鍵付き
仕事が終わり、つきさんを迎えに行く。つきさんのアパートの駐車場。俺の車の後部座席のドアを開けた。
「朔夜さん、荷物後ろに置くね。」 「はい。」
後部座席に荷物を置いた。ドア閉め、つきさんが助手席に乗る。
「お待たせ。」
「はい。何処に行きますか?」
「案内する。」 「はい♪」
つきさんが道案内してくれた。…つきさんのアパートから車で20分位。
「ここ。」
「……!?」
駐車場に車を停めた。…つきさんに案内された場所。
「行こう?」 「え?あ…はい。」
ここ…確か、料亭?!
小さな木の引き戸を開けた、つきさん。そこを通った。つきさんについて行く。建物の引き戸を開けたつきさん。玄関に入ると、中から着物を着た女の人が出てきた。
「あ、伊原様、いらっしゃいませ。」
「こんばんは。女将さん。」
「どうぞ。ご案内致します。」
「ありがとうございます。」
つきさん、ブーツを脱いで、下駄箱に入れた。鍵付きの下駄箱。俺も靴を脱いで下駄箱へしまう。鍵をかけた。鍵には紐付きのキーホルダーが付いていた。スニーカー?
「このキーホルダー、可愛い♪」
「つきさんのは?」
「ハイヒール」
「では…こちらへ…」
女将さんがつきさんと俺を案内してくれた。個室で暖簾してある。暖簾をくぐると、そこは、畳の和室でテーブル席…。席に着くと、女将さんが
「今お手ふきをお持ちしますね。」
「ありがとうございます。」
…女将さんが個室を出た後に、つきさんに聞いた。すると
「ここはね、和食屋さん。1品料理から、懐石、お鮨もあるよ。」
つきさんは
「…いつか、朔夜さんと来たかった。でも、中々…ね。」
「…なんです?」
「店構えがね料亭みたいで、気軽には…。でも…」
「でも?」
「女将さん、建物が仰々しいだけ。気軽にどうぞって。」
「失礼します。」
女将さんがお手ふきとお茶を持ってきた。
「お品書きは、そちらに御座いますので、決まりましたら、こちらのボタンを押してお知らせ下さい。」
本当だ。今風の店だった…。




