丸い鉄板
寒雀で忘年会の打ち合わせをした後に、伊原さんが連れて来てくれたお店…。店内には、お客さんが居たけど、凄く静か。聞こえるのは、クラシックのBGMと微かなに響く、食事をする音。テーブルには、一輪挿しに飾られた花。トルコキキョウ…。他のテーブルにも…。窓から見える景色は、道路が見えて、車の往来しているのが見えた。雪がふわふわと降ってきた…。食事が来るまでの間…伊原さんはスマホを見ていた。
真剣な目…。
「…OKかな。」
そう呟いた。少しだけ操作してから、スマホを鞄に入れた。加藤主任が伊原さんに尋ねた。
「…掲載したんですか?」 「うん。」
掲載…?…あ、そうか伊原さん、前に物語書いて掲載しているとか…話してたっけ。
「伊原さん、物語って何を書いてるんですか?」
「…秘密♪」
……。
「お待たせ致しました。スープパスタのお客様。」
先程の静かな女性が、私のランチを運んで来てくれた。スープパスタ…。…いい香り。…トマトベースのスープに魚介類が沢山入ったパスタだった。サラダも美味しそう。次は、伊原さんと雷斗さんのビーフシチュー、その後に加藤主任のビーフカレーが届いた。早速頂く事に。…凄く美味しい♪トマトスープに魚介類の旨み…。
「サイコロステーキも良いけど、ここのビーフシチューも好き♪…この味、家では食べられない…♪」
雷斗さんもビーフシチューのお肉を1口…。
「美味い♪…この肉、凄く柔らかい♪」
加藤主任はビーフカレー。
「マジ美味い♪」
静かに食事を進める。伊原さんが、パンをちぎって、口に運ぶ。なんか、伊原さんの食べ方って凄く上品に見える…。食事を終えた後、デザートとコーヒーを運んで来てくれた女性が、伊原さんに声をかけた。
「つきちゃん、お久しぶり。最近来なかったから、心配していました。」
「お久しぶりです。しずかさん。…転職して、ようやく落ち着いたので…今日は、友人と共に伺わせて頂きました。」
「そうでしたか。…以前いらした時より、顔色が良くなられて…元気を取り戻して良かったです。…小さな頃からこのお店に来てくれて…。…貴女が5歳の時に来て、初めて食べたのは、サイコロステーキでしたね。」
「…そうですね。…懐かしです。」
…なんか伊原さん別人見たい…。
「つきちゃんもお兄さんのひなた君も、ここの丸い、鉄板に入ったサイコロステーキを、ここでしか食べられないと知って…」
しずかさんは、くすくすと笑った。
「知ってどうしたんです?」
加藤主任が伊原さんに尋ねた。
「…ショックで泣いた…。」
…伊原さんが懐かしそうに、話してくれた。




