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依頼

俺が本部から異動して、1ヶ月が経とうとしている。俺は、”離婚”に向けて準備をしながら、相変わらず、受講生に講習をしている。”カタカタ”とパソコンを打つ音…。書類の模擬制作…。身体の不自由な方には、アクセシビリティを使用した、パソコンの使い方など…。ゆっくりと業務をこなしていた。異動して、初めての休みの日、俺は、弁護士をやっている友人、秋田 英に連絡を取った。

「…正式に依頼したい…。」

英は、「”…分かった。来週の、土曜日か日曜日、君の休みに合わせて、会おう”。」 と電話で来週の日曜日に会う約束をした。日曜日の朝…。英から、メールが届く。「”すみません。急用が出来て、事務所に居ないから、”ここ”に来てください。」 俺は、英のメールの場所にいく。俺の住む、アパートから、車で10分の所にある、古い喫茶店。「…ここか?…。」

俺は、”喫茶店”の駐車場に車を停めた。見た目、大分古い建物…。だが、ドアに”OPEN”の吊り看板が出ていた。俺は車から降りて、店へと向かう。

「”カラカラ”…」 ドアを開けると、少しかん高いような、乾いた音のようなドアベルが、店内に響いた。その音に気が付いた、店主らしき人が、「いっしゃいませ…。そちらの方の、待ち合わせの方ですか?」 店主の手の先に、視線を向けると、先に来ていた英は、手を挙げた。俺は、「そうです。」

と一言、店主に告げ、英の居る席へと歩み寄る。

「おはよう。悪かったね。急に場所を変更して。…マスター、コーヒーを。…雷斗君は?」

「俺も同じで。」

マスターは、「畏まりました。豆を挽きますので、少しお時間を頂きます。」

そう言って、カウンター内へと戻って行った。

「…いい店だな…。よく来るのか?…」

俺は、英に尋ねた。

「時々来るんだ。ここのコーヒーは、絶品でね…。さてと…本当に、”今回”は…正式な依頼でいいのかな?…”離婚”の。」

俺は英の顔を見て、静かに首を縦に振り、「正式に依頼します。…。」 と英に一言告げた。英は、何を感じているのか、解らない目で俺を見ている。そして…口を開いた。

「しばらく、会わない間に、随分痩せたね。顔色も悪い。…何があった?」

俺は、英にこの”1年”近い出来事を全て、洗いざらい話した。

「……本部に異動した後な…下の子が…琉斗が死んだ。」

「え……!!?」

英は、言葉を失っていた。

「それで、夫婦仲が険悪になって、妻は酒に溺れて…しかも、俺じゃなくて、”他”の…男に縋った。その男が…俺の”兄貴”なんだよ。」

英は、絶句している…。そりゃそうだ。”こんな事”…いくら、”友人”で、”弁護士”でも…

「……大変…だったね……。」

そう、労うような…慰めのような声で、話す英。

「…お待たせいたしました…。」

コーヒーが届いた。俺は、コーヒーを口に運んだ。「…このコーヒー…うまい…。」英もコーヒーを口に運んで、1口飲んだ。コーヒーのカップをテーブルに置き、俺を見た。

「…離婚に必要な書類の準備もあるから、時間が、かかります。準備が出来たら連絡します…。」

俺は、「英に全て、任せる。」 とだけ言って、またコーヒーを口にした。









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