保養所
両親の居た、蔵王温泉の保養所から、戻り、上形市の13号線から、別のルートを通って、陽高市へと向かう。
「お昼、蕎麦屋かパスタ屋にでも行こうか…?」
「私、お蕎麦が食べたいです。」 「俺も」
「分かった。じゃぁ、あそこに行こう。」
つきさんは、しばらく道なりに進む。山道だった。しばらくして、蕎麦屋に着いた。
「ここの蕎麦美味い。」 「あ、ここ…。」
「明里の知ってるの?」 「テレビで見た場所。」
つきさんが連れて来てくれた場所。そこは、桜を見に行った時に立ち寄った蕎麦屋。
「時間帯的にギリギリかな?」「大丈夫ですよ。」
などと話ながら、車から降りた。店に入る。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
靴を脱いで、中に入る。広い座敷。お客さんが、1組だけいた。女性が2人。奥の窓側の席で蕎麦を食べていた。俺らは、窓側のテーブル席に座る。椅子は、丸太。薄い座布団が敷いてあった…。席に着くと、店員がお手拭きと水を持ってきてくれた。
「ご注文が決まりましたら、お声がけ下さい。」
そう言って、1度席を離れた。と…
「すみません。そば湯下さい。」 「畏まりました。」
…お品書きを見る。
「うちはかけそばとゲソ天にする。」
「俺は、たきぬそば。」 「私、月見そば」
そば湯を運んでいた、店員が…
「お決まりですか?」 と声をかけた。
店員に注文。
「かけそばとゲソ天が1つ。たぬきそばが1つ。月見そばが1つ。以上で?…畏まりました。少々お待ち下さい。」
店員が、下がる。あの時はまだ、つきさんと付き合う前に来たんだよな…。
「あの…つきさん。」 明里がつきさんに話しかけた。?のつきさん。
「あの…お母さん達が泊まっている、あのコテージ…保養所ってなんですか?」
つきさんが教えてくれた。
「保養所は、健康保険組合などの、その従業員や組合員が休養出来る施設の事。だけど、一般の人も使う事も出来る…。」と教えてくれた。しばらく、話していると…
「お待たせ致しました。かけそばとたぬきそば、月見そばです。天ぷらは、もう少しお待ち下さい。」
蕎麦が来た。あの時は冷たい蕎麦だったけど、今日は温かいそば…。出汁のいい匂い…。早速蕎麦を食べる事に…。明里が蕎麦を食べた。
「美味しい♪」 「美味しい。」 つきさんは、出汁を1口。その後に一味唐辛子を少しだけ入れた。俺も少しだけ入れた。
「美味い♪」 「美味しい♪」
食べてる途中で、ゲソ天も届いた。それを、つきさんが分けてくれた。熱々のゲソ天。サクッとした衣。イカの旨みが口いっぱいに広がった。
美味い♪黙々と 蕎麦を食べた。食べ終わると…水を飲んだ、つきさん…。その水で、薬を飲んでいた。鎮痛剤…カロナール…。薬を飲み終えると、店の壁に掛けてある、柱時計を見た。時間は、午後2時半…。つきさん、大丈夫かな?




