ちんもく
両親と共に、部屋へと向かう。このコテージは、普通の家みたいだった。ソファにテーブル…ダイニングテーブルに対面式のキッチン。キッチンには、冷蔵庫に電子レンジ…トースター、炊飯器と…。冷暖房完備。寝室は別。料金は格安と聞いた。
「普通の家と変わらないんだね。」
「静かでいいですね…。」 「だから、来てみたんだ。」 「そうなんだ。」
明里は、キッチンでお茶を入れて両親と俺とつきさんの居る、炬燵へと持ってきてくれた。礼を言う…。両親と顔を合わせる様、向かい合わせに座る…。父さんのあの頬にテープで貼り付いていた管は、鼻に…。目立つ…。それでも…
「父さん、母さん、こちら、伊原つきさんです。……結婚を前提にお付き合いさせてもらっています。」
両親に伝えた…。…彼女が出来た事も隠していた。話したら面倒になる…って…。だけど、つきさんは違った…。ちゃんと両親に紹介したかった…。
「つきさん。朔夜をよろしくお願いします…。」
父さんが頭を下げた。
「朔夜を支えてあげて下さい。よろしくお願いします。」
母さんもつきさんに頭を下げた。
「…私の方こそ、よろしくお願い致します…。」
つきさんは、頭を下げた。両親と少しだけ、話して、顔合わせは終わった…。コテージから帰る途中、俺はつきさんに尋ねた。
「つきさん、父さんの鼻から出ていた、あの管は……」
「…お父様の鼻から出ていたチューブは、外にぶら下がってる、バックと繋がっていて、そこに、胆汁?だったかな…?溜まるようになってるんだ…。じゃなきゃ、外に排泄されず、ビリルビン値が上がり、体内に蓄積されて、黄疸がでる…。」「…黄疸?」 明里が不安そうに呟いた。
「…白目や肌が黄色くなるんだ。」
俺は、何も言えなかった。すると、つきさんが……
「朔夜さんのお父様、朔夜さんそっくりだね。でもお母様にも似てるね……。」
「「え?!」」 明里と同時に声を出した俺。
「同じだったよ?目が。後は、横顔が似ている。お母様が振り向いた時に気付いたよ。」 優しく、話すつきさん。「目は確かに、言われるなぁ…。横顔は、初めて言われましたよ。」
「親子だもの。似るよ。」
つきさんは、急カーブを慎重に運転していた。




