なぜ?
豊川君が、俺たちにした相談は”夢を諦めきれず、転職して、”夢”を実現させたい”。と言う相談だった。あらかた豊川君の話しを聞いた、英と英の姉、まきさんが同時に 「なんとなく、”うみちゃんと似ている”…。」 と話す。俺は、藤原…彼女が、”24の時はどうしていた”、事を話していない事に、気付いた。彼女が静かに口を開く。
「私、高校を…」 彼女の経歴は、意外だった。高校出てすぐ、就職し、働いたその金で、短大に行っていたと。そして、”栄養士”の資格を取り、”病院”で働き、経験を積んでから、”管理栄養士”の資格を取ったとか…。豊川君に話した彼女の経歴…。俺には、彼女が”苦労人”のイメージがなかった。普通に大学を出て、就職し、結婚…。そんな”勝手なイメージ”しか無かったからだ。「…”誰も止めない”と思うよ?反対…」 彼女の話しを耳にしながら、自然と言葉をかける。
「藤原さんは、”夢”だったんですか?…栄養士。」
彼女は、首を”横”に振って、俺を見つめて
「私、パティシエになりたかったんです。でも諦めたの。」
”諦めた”その理由は、解らなかったが…デザートが運ばれてきたのを見て、俺は、違和感を感じた。その”違和感”。それは、彼女のデザートだけ、違ったからだ。”スイカとぶどう”。俺たちは、”メロンとぶどう”…何でだ?…疑問に思っていると、
「うみちゃん、もしかしてアレルギー?ラテックス系?」
根岸さんが尋ねた。彼女は、「うん…そう。」 と答えると、豊川君にしっかりとした目と声で
「やって見たら?…”本気なら”」
彼女は、それ以上、何も言わず、デザートのスイカを、嬉しそうに口に運んでいた。
俺は、「”やって見たら?…本気なら”」……彼女の言葉に…少し違和感を覚えた。
楽しい時間は、あっという間に終わった。終わり間際、俺は皆に、「またやろうよ!」 と声をかけた。そして、皆で連絡先を交換した。最初、彼女は渋っていたけど、「”滅多な事では連絡しない”」
との条件で、交換してくれた。その後、俺は英に「”相談したいことがある”」 と伝えて、ホテルを後にした。帰りの車…運転中でも、彼女の
「”やって見たら?…本気なら”。」なぜ…彼女は?
その言葉に”疑問”に思う事があった。
俺は、後で英に連絡を取り、近くまた会うことにした。




