パニック
大学時代の友人、秋田 英と、職場の部下、豊川夏樹君とホテルディナーに来ている。英の”姉”が経営するビジネスホテルで、俺と豊川君は、まさかの事態に遭遇していた。英の”姉”と言う女性とその”友人”に、英から、”サプライズ・ドリンク”をスタッフが運んだ時だ。俺は、その”席”に座っていた2人に目が釘付け…いや、凝視している。英の”姉”の友人がまさかの、俺が勤務している、職場の”介護福祉士科”の2人。1人は根岸 蛍さん。もう1人は…”藤原 海…さん”…。英の”姉”が席を立ち、スタッフと何か話しをしている。その様子に、英も席を立ち、歩み寄って行く。しばらくして、英が俺たちの席へと戻り……
「”姉さん”が、宜しければ、ご一緒しませんか?」
と……。
俺より先に、豊川君が「”ぜひ”!!」 と答えた。俺は…「…マジか…。」……と半信半疑…いや…なんだ?この展開…?…。スタッフの1人が、「ご案内致します。」 と俺らを個室へと案内する。個室は、10人くらいが入れる、少し広めの部屋に、壁には小さめの照明が両隣りに、3箇所。真ん中の照明はアンティークタイプ。窓からは、ライトアップされた庭園が見えている…。
席に着いた俺らの後に、3人の女性達が入ってきた。最初は、英の”姉”、次に、藤原さん、根岸さんの順だった。
「うみちゃん、窓側ね。私真ん中に、座るから。」
”藤原さ”…いや、彼女は一瞬、俺を見て、嫌そうに見えたが、観念した?ように席に着いた。
「…俺の”目の前”に……。」
おれは、彼女の服装にも驚いていた。いつもは、ユニフォーム姿の彼女が…髪をショートにした彼女。爽やかな感じ。…濃い青い色のワンピースに、化粧をして…ダメだ…。直視出来ない…。と
「”まき”ちゃん、どうして…?」
彼女が、真ん中の席の、英の姉、”まきちゃん”と
呼んでいる。「”秋田 まき”さん」 英の姉の名前だ。
まきさんが、彼女に話してた事が、このホテルの経営者としての、”風格”が顕になる。彼女も驚いていた。”驚く”というより、”尊敬”?しているように見える。その後、英が、俺たちの事を、紹介してくれた。
「姉の”まき”です。…」
俺は、英の説明を、はんぱ聞きしている。”彼女”が…俺の前で…食事している…。…所作が…キレイ。食事を摂っている”彼女”…と 「”幸せ”」…と呟いた声が聞こえた。その声に俺は、思わず…
「美味しいですか?…藤原さん…。」
と声をかけてしまった…。「あ…ヤバ…」 と思ったが彼女は、顔を上げて俺を見た。はにかむ顔。
「はい。美味しいです。旬のお魚なので、嬉しいです…。」
俺は、彼女の好みを瞬時に見分けた。
「刺身より、魚が好きなんですね…。」
俺は彼女に質問攻め…。好きな食べ物、嫌いな食べ物…。彼女は、少し困っていたようだが、俺は構わずに聞いた。
「嫌いな食べ物は…セロリにゴーヤ…後、ピーマンとにんじん…」
俺は「”ピーマンとにんじん”…?」…子供たちを思い出し、思わず、吹き出した。
「…ッ…子どもがいる…」
彼女は、ムッとした顔をして、何か言い返そうと声にした時だ。
「「えぇぇー!!?」」
俺の耳に突き刺さる声に、彼女と顔を見合わせた。「何だ!?」「な、なに?」
この後、俺は更に、凝視する事になる…。




