夢をおう
豊川君が河本主任に、”相談”した件を、豊川君が直接、話してくれた。豊川君の…”相談”…。それは、”今の仕事を辞めて、水族館の飼育員さんになりたい”…。だった。聞けば、豊川君は、小さい頃から、アザラシやアシカなどの水生動物が大好きで、自宅の部屋には、沢山の、水生動物の図鑑や写真、ぬいぐるみで埋め尽くされているらしい。仕事が休みの日は、陽高市から車で3時間くらいの所にある、県立水族館に行くほど…。
「夢が諦められないんです。色々調べたら、”資格”も…。それに…はん…」 そこまで聞いた、まきちゃんと英くんは、唐突に、しかも同時に、こう話した。
「…なんか…どことなく?…”うみちゃんの話しと似てる”。」 と…。
けいちゃん、豊川君と河本主任は、私の方へと顔を向けた。「「藤原さんと?」」 「うみちゃんと?」
3人とも、小首を傾げている。私は、豊川君に、教えた。
「私、高校卒業してすぐに、働いて、そのお金で、この近くの、”短大”に行ってたの。”栄養士”の資格とるために。栄養士の資格を取った後は、病院で”栄養士”として働いて、経験を積んでから、管理栄養士の資格を取ったの。…試験には1回落ちたけど、2回目で取った。…豊川君が”本気”なら、誰も止めない…と思うよ?…反対するのは、ご両親と彼女さん…かな?」
私の話しに、豊川君より先に河本主任が、口を開く。
「藤原さんの”夢”だったんですか?…”栄養士”?」
私は、首を横に振り、河本主任を見て、”私の夢”を話した。 「私は、”パティシエ”になりたかったんですが、でも、諦めたの。」
まきちゃんは”知っている”。私が、なぜパティシエを諦めたか。”デザート”がヒントだった。
運ばれてきた、皆のデザートは、”季節の水菓子”、メロンとぶどう。私のは、スイカとぶどう。
けいちゃんは、すぐに気付いた。
「うみちゃん、もしかして、”アレルギー”?…ラテックス系?」
私は、「うん。そう。」 とけいちゃんに、返し、豊川君に、こう伝えた。
「やって見たら?…”本気”なら。」
そのひと言で、”充分”…伝わったと思う。豊川君の目が、さっきとは、別人のように変わって、光が戻りつつあったから。
それから食事会は、時間を忘れる程、楽しんだ。
「また皆でやろうよ!」
そう言い出しのは、河本主任…。相変わらず、”他人を巻き込むけど、”これだけは”、巻き込まれてもいい”…かな??…